長崎ヴェルカが作りつつある日本バスケの新基準 創設5季目で現在B1首位

大島和人

首位・長崎は4月19日の茨城戦で17点差からの逆転勝利を挙げた 【(C)B.LEAGUE】

 B1は各チームが60試合中55試合を消化し、チャンピオンシップ(CS)に進出する8チームの顔ぶれが見えてきた。長崎ヴェルカは4月12日、全26チームの中でもっとも早くCS出場を確定させている。

 4月19日の茨城ロボッツ戦は、相手が65%という驚異的な確率で3ポイント(3P)シュートを決めるなか、最大17点のビハインドとなる厳しい展開だった。しかし第4クォーターに追いつき、オーバータイム(延長戦)で突き放して109-103で制した。18日(90◯69)に続く連勝でシリーズを終えている。

 長崎は現在43勝12敗と西地区、B1全体の首位。2021-22シーズンのB3参入から5シーズン目、B1昇格3シーズン目の新興クラブが、日本バスケの頂点に急接近している。

シーズン終盤に直面した壁

 長崎は今季の前半戦を27勝3敗という圧倒的な勝率で終えた。一方で4月に入り、やや負けが増えている。8日の三遠ネオフェニックス戦(97●103)、11日のレバンガ北海道戦(80●82)は連敗し、15日の広島ドラゴンフライズ戦(82●83)も落とした。

 そんなチームにとって、19日の逆転勝利は一つ壁を乗り越えた展開だった。モーディ・マオールヘッドコーチ(HC)はこう語っている。

「今は自分たちのメンタルのところで、新たなチャレンジをしています。私たちはプレーオフ(=チャンピオンシップ)が決まっている状況のプレーにまだ慣れていません。プレーオフがすぐそこにある中で、しっかり一つずつプレーすることは難しいし、だからこそチャレンジングになります」

 馬場雄大もこう口にしていた。

「茨城さんが僕たちにアジャストしてきて、すごく苦しい戦いでしたが、(長崎は)途中で守り方も変えたりして、すごくいい内容になりました。広島さんに負けたとき、他のチームを相手に試合を落としたときの状態で今の試合を迎えていたら、多分負けていたと思います。だけどこの数週間、自分たちの中で良くなかったことを見つめ直して、ミーティングもして、そこが結果に表れました」

 レギュラーシーズンの途中経過を見れば長崎は「ベストチーム」と言い得る試合をしてきた。とはいえCSを過去に何度も戦ったメンバーが残る宇都宮ブレックス、千葉ジェッツ、琉球ゴールデンキングスのような経験値はまだない。彼らはまさに今、現在進行形で「ポストシーズンをどう迎えるか、そしてどう戦うか」というチャレンジを始めたところだ。

「ヴェルカ・スタイル」とは?

伊藤拓摩GMは創設からチームを牽引してきた 【撮影:大島和人】

 ヴェルカの立ち上げを主導したキーマンが、伊藤拓摩・代表取締役社長兼GMだ。彼は高校、大学とアメリカで教育を受け、2016年9月のBリーグ開幕時はアルバルク東京のHCを任されていた。2019-20シーズンはテキサス・レジェンズのアシスタントコーチをしていたが、2020年夏に長崎へ招かれてゼロからチームを立ち上げた。

 念のため説明するとヴェルカとJリーグのV・ファーレン長崎は、ともに通販大手のジャパネットホールディングスがオーナーだ。彼らは2024年秋にアリーナ、スタジアム、ホテル、商業施設、オフィスなどが集結した「長崎スタジアムシティ」も開業させている。この二つのプロクラブは街の魅力を上げる、価値を高める役割も担っている。

 だからこそ彼らは当初から「楽しめる」スタイルにこだわってきた。今季はハードでアグレッシブ、スピーディーな「ヴェルカ・スタイル」が鮮やかに花開いている。

 ヴェルカの強みは明快だ。1試合あたりの平均得点(91.4得点)、3Pシュートの成功率(37.1%)もB1最高。守備の指標を見ると1試合平均のスティール(9.6個)がやはりB1最多だ。逆にリバウンドは彼らの弱みなのだが、走り勝てる、決め切れるところが強みになっている。

 ヴェルカの試合はとにかくペースが早く、攻守とも盛り上がる場面が多い。プロバスケが5年前まで無かった土地で、この競技にそれほど馴染みのないお客でもきっと魅了されるプレーだ。

 編成を見るとオールラウンドな選手が揃っている。馬場雄大は196センチとそれなりに大柄だが、170センチ台のガードとマッチアップできる機動力を持ち、おそらくBリーグのベストディフェンダーだ。速攻からのドライブ、3Pシュートも大きな強みで、プレーメイクの能力もある。

 ジャレル・ブラントリーはパワーフォワード(PF)だが、やはりスピードやドライブが強みで、アタックの先頭に立ってウイングのようなプレーをする。この二人は昨季もこのチームでプレーしていた。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、バレーボール、五輪種目と幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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