わずか36分の試運転で大一番に挑む久保建英 国王杯決勝で「より良い感触」は戻っているか?
多くのメディが「完全復帰」と持ち上げたが
2025-26シーズンのファイナルは4月18日の21時(現地時間、以下同)、セビリアのラ・カルトゥハスタジアムでキックオフを迎える。
この試合の3日後、4月21日からは“フェリア・デ・アブリル”、いわゆるセビリアの春祭りが開催される。毎年、聖週間(イースター)が終わった2週間後から6日間にわたって行われるこのイベントは、バレンシアの火祭り、パンプローナの牛追い祭りと並ぶスペイン三大祭の1つだ。
連日、闘牛が行われ、あちこちでフラメンコやセビジャーナス(民族舞踊)などのショウが催され、街を練り歩く人々は伝統的な民族衣装に身を包み、歌って踊る。絵に描いたようなスペインが目の前に広がるその空気感は独特だ。そうしてお祭りムードにデコレーションされたセビリアの街が、今回の国王杯決勝の舞台となる。
春祭りの起源は1846年まで遡る。提言をしたのは、当時アンダルシアに移住して長かった2人の起業家、カタルーニャ出身のナルシソ・ボナプラタと、バスク出身のホセ・マリア・デ・イバラだ。ちなみにイバラは、のちにセビリア市長に就任する人物だが、180年もの年月を経て、自身の故郷であるバスクのサッカーチーム(=ソシエダ)が、国王杯を戦うために900キロ以上も離れたセビリアの地までやって来る日が訪れるとは、想像もしなかっただろう。もしかしたら、空の上で腰を抜かしているかもしれない。
さて、1902年を起源とするスペイン最古のサッカー大会、今回で122回目を迎える国王杯の決勝を前に、1月18日以来、長く負傷で離脱していた久保が戻ってきた。個人のインスタグラムにも「Bueltan naiz」(帰ってきたよ)とバスク語で書き込み、ソシエダへの愛情を滲ませている。
ソシエダ番のベテラン記者で、私の長年の友人であるミケル・レカルテは、このタイミングで帰ってきた久保について、「見てな! 国王杯決勝で久保が大車輪の活躍を見せてくれるぜ!」と興奮気味に話してくれたが、自身が筆をとるサン・セバスティアンの地元紙『ノティシアス・デ・ギプスコア』では、あくまでも冷静な論調を展開していた。
4月11日のラ・リーガ第31節、アラベスとのホームゲームの54分からピッチに立ち、いきなりアシストをマークした久保について、「完全復帰」と持ち上げたメディアは少なくなかった。実際、わずか36分間の出場にもかかわらずマッチMVPにも選ばれたのだから、その評価が間違っているわけではない。
しかしながらレカルテ記者は、「復帰は素晴らしい朗報。オーリ・オスカルソンにインテリジェントなアシストパスを頭で送り、一度は3-2と勝ち越しとなるゴールもお膳立てしている。しかし、長期離脱していた影響が目についたのも事実だ。アディショナルタイムに喫した同点ゴールも、久保のボールロストがきっかけだった」と評している。
スタメンかジョーカー起用かの最終決定は?
要するに、良いリスタートは切ったが、まだ本調子ではない、ということだ。それは久保自身も理解しているのだろう。試合後にスペイン語でメディアに応対した彼は、こんなコメントを残している。
「来週はハードに練習をする。明日から“より良い感触”を得られるように頑張りたい」
この「より良い感触を手にする」というのは、スペインでよく用いられる言い回しだが、とりわけ故障明けというのは、選手本人にしかその微妙な「感触」は分からないものだ。違和感というほどでもないが、わずかにいつもとは違う感覚が残っているため、そのギャップを埋める必要があるのだ。
そして、マタラッツォ監督が言うように、久保は自身のリズムを見つける、つまり試合勘を取り戻すことも求められている。そのための最良の方法は試合を重ねることだが、国王杯決勝までは実戦機会がなく、残された時間もわずか1週間しかない。だからこそ久保はアラベス戦後に、「来週はハードに練習する」と話していたのだ。
通常であれば、故障明けで36分間の試運転しかしていない選手を、次の試合でスタメンフル出場させるというのは考えにくい。徐々に試合勘を取り戻させて、怪我の再発のリスクを回避するのがセオリーだ。
しかし、今回の久保の場合は、よりによってその次戦が、タイトルの懸かった国王杯決勝なのだ。久保が途中出場でも試合の流れを変えられる選手であるのは明白な事実だが、今週の練習でどこまで仕上げられるかによって、スタメンかジョーカー起用かの最終決定が下されることになりそうだ。
せめてあと1週間早く復帰できていれば、とつい思ってしまうが、大事なファイナルに間に合ったのだから、それだけでも良しとすべきなのだろう。
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