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三笘を取り囲んだイングランド撃破の余韻 北ロンドン・名門2チームの憂鬱

森昌利

三笘はバーンリー戦で後半35分から出場。プレー時間は短かったが、追加点となるゴールを演出するなど存在感を見せた 【Photo by Stu Forster/Getty Images】

 4月11日(現地時間、以下同)のプレミアリーグでブライトンがバーンリーを2-0で下し、今季初の3連勝を飾った。代表戦での疲労を考慮されたのか。ベンチスタートとなった三笘薫は試合終盤に出場。2点目のゴールに直接関与するなど、好調を維持していることを印象付けた。一方、同日にボーンマスと対戦した首位アーセナルは1月25日以来となる敗北。2位マンチェスター・シティとの直接対決を前に、両チームの勝ち点差は6に縮まった(アーセナルが1試合多く消化)。

試合終盤に投入されて勝利を決定づけるゴールを呼び込んだ

「いろいろ言われましたし、良くないことも言われましたけど(笑)。でも親善試合なので、そこは関係ないですね」

 4月11日、季節外れの寒風吹きすさぶバーンリーでのアウェー戦の後、聖地ウェンブリー・スタジアムで行われたイングランド代表との親善試合で両軍唯一となったゴールを見事に決めた三笘薫に「チームメイトからこの試合のことで何か言われたか?」と尋ねると、そんなコメントが返ってきた。

 ブライトンのロスターには、先日プレミアリーグの最多出場記録を更新した40歳のジェームズ・ミルナーを筆頭に、主将ルイス・ダンク、今季はゴールを量産して35歳での代表復帰の可能性も報じられたダニー・ウェルベック、兄貴分的なキャラクターを買われてトーマス・トゥヘル監督が代表に招集したGKジェイソン・スティール、故障前は右サイドの主軸だったソリー・マーチ、そして若手のジャック・ヒンシェルウッドら、多くのイングランド人が名を連ねている。

 ひょっとしたら、今夏のワールドカップ(W杯)のグループリーグ初戦で対戦するオランダ代表のヤン・ポール・ファン・ヘッケ、バルト・フェルブルッヘン、ヨエル・フェルトマンらからも、「俺たちが相手のときは勘弁してくれ」というような言葉を浴びせられたかもしれない。

 このバーンリー戦、三笘はベンチスタートで、途中出場したとはいえ投入されたのは終盤の後半35分。しかしそれでもピッチに入って9分後に、バーンリー陣ペナルティエリア内でボールに対して強い執着を見せ、相手DF陣との奪い合いを制して味方にボールをつなぎ、勝利を決定づけるマッツ・ヴィーファーのこの日2つ目のゴールを呼び込んだ。

 三笘のアシストだと思ったが、日本代表MFが出したボールにヤシン・アヤリがほんの少しだけ触っていて、W杯で日本と同組になったスウェーデン代表MFにアシストがついた。

 けれども三笘は「ゴールにつながったので良かった」と話し、アヤリの棚ぼたアシストについては全く意に介さなかった。

イングランド戦のときのコンディションを維持している

ウェンブリーで素晴らしいゴールを決めた三笘は、そのときの状態を維持している 【Photo by Kaz Photography/Getty Images】

 もちろん2-0で完勝したこともあったが、試合後の三笘の表情は柔らかく、アディショナルタイムを含めてもわずか17分間のプレーに終わっても、機嫌がよく見えた。

 冒頭に紹介した「良くないことも言われました」という発言も冗談まじりで、囲んでいた我々記者団の笑いを誘った。そして2点目を演出したプレーが象徴するように、先発を外れてもコンディションはよく見えた。

 その点については本人も「代表戦の後、問題なくやれてるんで、同じぐらいかなと思います」と話して、中盤で自らボールを奪い返し、そこから左サイドを走る中村敬斗に見事なパスを送ると、そのまま前進してゴールを決めた3月31日のイングランド戦のときのコンディションを維持していると明かした。

 つまり、試合後に敵将のトゥヘルが「うちが6対3で有利な状況だった。プレミアリーグで証明しているように、三笘がハイレベルの選手であることは疑いようがない」と話した、あの鮮烈なゴールを決めたときのコンディションを保っているということだ。

 三笘は「今日の先発で前節も勝っています」と話して、ベンチに置かれたことを説明したが、ファビアン・ヒュルツェラー監督は怪我明けで代表戦2試合に出場した三笘の負担を軽減したかったのだと思う。

 しかも相手は降格圏にどっぷりとはまり込んでとはいえ、フィジカルなフットボールを展開するバーンリー。そしてアウェー戦だ。無理をさせたくなかったという見方でいいだろう。

 代表戦の話に戻ると、イングランド代表の方は、2015年以降のチーム全得点の32%に絡んでいる大黒柱のハリー・ケインが不在。そしてプレミアリーグと欧州チャンピオンズリーグの2冠がかかったアーセナルの主軸2人、ブカヨ・サカとデクラン・ライスが“クラブ側が強く温存を要求した”としか思えない形で、日本戦を前に代表キャンプを去った。もしも本番のW杯で対戦するとしたら、イングランドの上がり目はとてつもなく大きいと思う。

 とはいえこれは大金星だ。試合直前の記者室で「日本人選手の名前の発音が正しいかどうか聞いてくれないか」と筆者に頼んできて、このゲームの実況を担当したBBCアナウンサーのジョン・マレー氏は、試合終了のホイッスルが鳴り響くと、「これはまさに日本の歴史的勝利! イングランドA代表を破った初のアジアのチームとなり、トゥヘル監督にホームで初めて土をつけました!」と絶叫した。

 イングランドにとってはいくつもの言い訳が立つ親善試合であったが、それでもウェンブリーで負けるのは耐え難い屈辱だ。しかも後半は巨漢DFハリー・マグワイアを最前線に置いて、恥も外聞もなく強烈なパワープレーを仕掛けた。

 日本から同点弾を奪うのに必死だった。しかしそれでも日本は、試合後に英国人記者が口々に称えたように、高い規律で組織立った守備を維持してイングランドの猛攻に耐えた。今回のアウェーでのクリーンシートは大絶賛に値する。

 あれから2週間が過ぎてあらためて、「日本代表のユニホームを着てウェンブリー・スタジアムで戦ったことに関して何を感じた?」と尋ねられると、三笘は「うーん、なかなかないことだと思います。ここから先、たぶんないかなと思うので、そのなかで1つ代表として勝てたのは大きな記録として残ると思います」と語って勝利の余韻を噛み締めたが、「だけど、(W杯の)本番じゃないので。これからが大事ですし、それはみんな分かってると思うけど、ここからのコンディションが大事です」と続けて、シーズン佳境のクラブに戻って気持ちを新たにしていた。

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2025-26で25シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル30年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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