連覇マキロイから見える「マインドセット」の重要性とは 佐藤信人のマスターズ最終日レビュー

塩畑大輔

ライバル失速のアーメンコーナーで急加速

 一方で、マキロイはローズがつまずいた11、12、13番の「アーメンコーナー」で、完全に優位に立ちました。

 3日目には池に入れてしまった11番で、3パットもありえるところをしっかり2パットのパーでしのいだのが大きかった。

 それが直後の12番、あのスーパーショットにつながったのかなと。

12番パー3、マキロイはパトロンの視線を受けながらショットを放つ 【Photo by Logan Whitton/Augusta National/Getty Images】

 1打リードの首位だったら、グリーン中央に安全に打って、10メートルを2パットでパーセーブ、というのが歴史的にみてもセオリー。

 なのに、ティーアップの位置が左いっぱいで「あれ?ピンを狙うんだ」と驚きました。

 このショットのことを、マキロイは優勝会見で語っています。かつてトム・ワトソンから『12番攻略法』にのっとった一打だった、と。

 マスターズ初出場時に一緒に練習ラウンドをした際、風向きがクルクルと変わることで有名なこのホールについて『本来吹くべき方向からの風を感じるまで打たずに待てばいい』と教わったとのことです。そして、想定している向きの風が吹いてきたらすぐ打つ。

 実際、ティーイングエリアに立った時点では、風が今までと違う右から吹いていたそうです。本来吹くべき「左からの向かい風」を待って、それを感じた瞬間に9番アイアンですぐ打った、ということでした。

 だからあれだけ迷いのないショットが打てたのか、と腹落ちしました。加えて、直前11番のパーセーブでいろいろ考えなくて済む状況にあったことも大きかったんじゃないか、とも思います。

ピンチをピンチと感じさせないほどの落ち着き

 振り返ってみると、そのあとも危ない場面はけっこうありました。

 15番パー5の3打目も、少しでもスピンバックしてしまっていたら池に落ちてしまうところで、ひやっとさせました。

 16番パー3もグリーン奥に大きく外してしまって、17番パー4もパーオンできず。

 極めつけは18番パー4。ドライバーを隣の10番ホール近くまで、大きく右に曲げてしまいました。

 曲げすぎたことでかえって前方が開けて、うまくリカバリーできましたが…。

 こうして文字にしてみても、とても安心してみていられる展開ではなかったわけですよね。

18番パー4、マキロイはティーショットを右の林深くに打ち込む 【Photo by Joel Marklund/Augusta National/Getty Images】

 なのに、マキロイが優勝しそうな雰囲気、というのは変わらなかった。

 それはやっぱり、本人が落ち着いてプレーをしていたから、なんだと思います。

 去年はまったく違いました。終盤は打った瞬間に「ゴー!」とか「ダウン!」とか叫び続けていた。

 今年はそういう感じもなく、淡々と1打1打、優勝に向けて着実な歩みを進めている印象でした。

 それは単に見ている側の感じ方だけに留まらず、プレーにも影響するものかなと。

 去年のマキロイだったら、15番以降のピンチがことごとくボギーに終わっていてもおかしくなかった気がします。

マスターズらしい展開。松山に見た「世界クラス」の証

 開幕前は、今年は初出場組に有力選手が多いので、サプライズ優勝の可能性もあるんじゃないかと期待していました。

 ですが、終わってみれば世界ランク上位が順位表の上位を占める、とてもマスターズらしい展開になりました。

 最終日のスコッティ・シェフラーはさすがの強さでした。

 一見ロングヒッター向けのセッティングの中でも、ラッセル・ヘンリーのような選手も技術で上位に入ってきた。

 コリン・モリカワも腰痛を抱えながら、終盤のバーディーラッシュは圧巻でした。

バーディーラッシュで一時はトップ10圏内にも入っていた松山。最終的に12位に入った 【Photo by Jared C. Tilton / Getty Images】

 松山英樹プロもさすがでした。3日目が残念でしたが、最終日のプレーぶりは感動すら覚えました。

 ボギーをたたいてしまったところも含めて、すべて攻め切った結果かなと。

 本気で世界の頂点を目指して、オーガスタのような難コースでも攻めの姿勢を貫く。

 あらためて、海外メジャーの上位にいるべくしていられる選手だと感じました。

リベンジならずとも…続く海外メジャーのストーリー

 個人的には、ローズには勝ってほしいと見ていました。17歳のアマチュアとして、全英オープンで4位に入ったときから見ているので。

 欧米どちらでもツアーの年間王者になって、海外メジャーも勝って、五輪の金メダルまで獲得した。

 はたから見ると、すべてを成し遂げた選手のように思えます。

 そうした選手たちは、新しい刺激を求めてこぞってLIVゴルフに移籍しました。

 特に欧州出身の選手はそう。ウエストウッド、ポールター、ケイシー、ステンソン。カイマーもそうですね。

通算10アンダー3位で大会を終えたローズ 【Photo by Augusta National/Augusta National/Getty Images】

 でも、ローズは移籍しなかった。40歳過ぎても、メジャーで勝つこと、ライダーカップで勝つことにこだわり続けている。

 そうした気持ち、姿勢が報われてほしいなと。私は試合で一緒に回ったことがあって、彼の人柄のよさにも触れているので、より強くそう思います。

 残念ながらマスターズを勝つことはできなかったけど、今年の海外メジャーには他にも彼に期待したい大会があります。

 7月の全英オープンは、ロイヤル・バークデールで開催されます。ローズが17歳で4位になった際の開催コースです。

オーガスタのパトロンたちは終始ローズに声援を送り続けた 【Photo by Maddie Meyer/Getty Images】

 原点ともいえるコースで勝ったら、とてもいいストーリーになる。

 そういった見方、楽しみ方ができるのも、大会にもコースにも歴史がある海外メジャーならではなのかなと思います。

 ストーリー、歴史という意味では、マキロイは来年、誰もやったことのない3連覇をかけてマスターズに臨むことになります。

 そこも楽しみですね。少し気が早いかもしれませんが。

マキロイは誰もやったことのない3連覇をかけてマスターズに臨むことになる 【Photo by David Cannon / Getty Images】

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著者プロフィール

1977年4月2日茨城県笠間市生まれ。2002年に新卒で日刊スポーツ新聞社に入社。サッカーの浦和レッズや日本代表、男子ゴルフ、埼玉西武ライオンズなどの担当記者を務める。2017年にLINE NEWSに移籍し、トップページの編成やオリジナルコンテンツ企画を担当。note、グノシーをへて、2024年7月からU-NEXTに所属。

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