“台湾の至宝”ソフトバンク徐若煕がNPBデビュー2戦で証明したもの 指揮官の心変わりと重なったシルエット

田尻耕太郎

2試合で好投し先発を自らの手でつかみ取る

台湾代表との交流試合で快投し、ヒーローインタビューに立った 【写真は共同】

 ソフトバンクは徐若煕が現状でもNPBで通用する力があると認めたうえで、「それでも今がピークとは思っていない。我々ソフトバンクホークスの最新のテクノロジー、科学に基づいた指導の下、もっともっとスケールの大きな投手に育てられると思っている」(城島健司CBO)と考えている。

 シーズン中もトレーニング特化期間を設けたり、コンディションに注視してリフレッシュ期間を設定したりしながら、まずはNPBでの1年目を送らせる構えだ。そのため、小久保監督も当初は開幕ローテ入りについて慎重な構えだった。

 その潮目が変わったのは2月下旬だ。ソフトバンクが台湾に遠征し、台北ドームで中信兄弟、台湾代表と2試合の交流試合を戦った。その台湾代表戦に徐若煕はソフトバンクの一員として先発。自己最速タイ158キロをマークして3回1安打無失点と快投を見せた。

 小久保監督が言う。

「あれを見て考えが変わりました。もともとはWBCに出て疲労もあるだろうから強化期間に充てようという話にも球団や首脳陣の中でなっていたのですが、徐若煕本人はWBC出場に向けて完全に仕上げていて、さらにNPB公式戦にも早く投げたくて仕方ないのに、わざわざ強化のための時間を設けるのかという議論になった中で、まずは(先発で)2回投げさせようということになったのです」

 そして実際に2度先発で登板した。好投を続けたことで次週の先発は、自らの手でつかみ取った。

かつてのエースと重なったシルエット

攝津正を彷彿とさせる徐若煕。制球力は大きな武器となりそうだ 【写真は共同】

 また、小久保監督は感心しながら、徐若煕についてこのように評した。

「普段は全然喋らない。無口な選手だなと思います」

 おとなしい印象だという。

「だけど、試合の日だけは別人の顔つきになりますね。常に自分が投げたいという気持ちがとても強いなと感じました」

 筆者もその言葉に思わず頷いた。徐若煕を近くで取材するようになってまだ数カ月だが、少しずつ彼のことを理解し始めた。ホークスを前身のダイエー時代から25年間取材してきた中で、徐若煕に最も似たタイプだと感じるのが、2010年代前半にエースとして活躍した攝津正だ。球速や持っている球種は違うが、初めて徐若煕のピッチングを見た時も「攝津投手に似ているな」と感じた。上げた左足を下ろして投げに行く際の形を三塁側から眺めていると、一瞬だけシルエットが重なって見えるのである。

 それはフォームのバランスの良さと言い換えることもできる。攝津投手は精密機械のようなコントロールの良さを誇った。徐若煕も昨季のCPBLでは投球回114で四球14しか与えていなかった。この制球力もNPBで戦っていくうえで大きな武器となるだろう。

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著者プロフィール

1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月に独立後も、ホークスを中心に九州・福岡を拠点に現場取材を続ける。『Number』(文藝春秋)『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、ニュースレター『田尻耕太郎の鷹バン!』(the Letter)を運営。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、プロゴルファーらが参加する「鴻江合宿」の運営サポートもライフワークにしている。

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