Bリーグ初ドラフトの指名選手たちは今 「壁」に直面する最下位・秋田の二人

大島和人

岩屋頼はドラフト全体5位で秋田入りした注目選手 【(C)B.LEAGUE】

 Bリーグは来季(2026-27シーズン)からは降格のない「Bプレミア」「Bワン」「Bネクスト」に再編される。来季の所属カテゴリーも成績と関係なく既に確定していて、今季のB1とB2には降格がない。そんなレギュレーションに救われているクラブが、秋田ノーザンハピネッツだ。

 秋田は4月8日の横浜ビー・コルセアーズ戦(74●92)を終えて、現在8勝42敗。東西両地区の26チームの中で、もっとも低い勝率だ。昨年12月25日には前田顕蔵・前ヘッドコーチ(HC)が退任し、ミック・ダウナーコーチが指揮を引き継いでいる。しかしその後も4勝20敗と戦績は上向いていない。

 しかも横浜BC戦は赤穂雷太が負傷、アリ・メザーがコンディション不良で欠場していた。シューターの田口成浩も昨年11月からインジュアリーリストに登録されている状態で、外国籍選手を含めて負傷者が相次いだ不運も低迷の背景にある。

秋田はドラフトで唯一の複数指名

 秋田は1月29日のBリーグドラフトで2人を指名した。それが1巡目(全体5位)指名の岩屋頼と、3巡目(全体9位)の堀田尚秀だ。二人は早稲田大学出身で、2025年の第97回関東大学バスケットボールリーグ制覇に貢献したガードだ。岩屋はハンドラーとしてプレーメイクも担うタイプで、堀田は「ピュアシューター」という違いはあるが、どちらも3ポイントシュートの高い成功率を持ち味にしている。

 今回のドラフトは26チームが合計11名しか指名をしなかった。設定された年俸額が高く、保有権も短く設定されているため、即戦力以外は獲得しづらい事情があった。したがって人材豊富なクラブほど指名を回避する傾向もあったのだが、秋田だけは「複数指名」を敢行した。

 今季の秋田はここまでフィールドゴール成功率がB1最低、3ポイントシュート成功率はB1の25位(下から2番目)と「決定力」の低さに苦しんでいる。オフェンス力、シュート力の高い岩屋と堀田の指名はロジカルで、早い時期から戦力となることも期待されていたはずだ。かくして、二人の若者が都の西北から東北に移った。

 岩屋はここまで10試合の出場で、3月28日の京都ハンナリーズ戦は19分16秒の出場で14得点を決める活躍だった。堀田は8試合に出場し、合流直後の千葉ジェッツ戦(3月11日)、仙台89ERS戦(3月14日)と15分台のプレータイムを得ている。直近のアルバルク東京戦(4月5日)も14分6秒の出場で10本の3ポイントシュートを放ち、10得点を稼いだ。

 ただ彼らがチームに適応している、救世主になっているとは言い難い。8日の横浜BC戦は岩屋が4分2秒、堀田は4分5秒とそもそも「出番」をあまり与えられなかった。秋田は栗原翼、元田大陽、中山拓哉とガード陣に屈強で守備に長けたタイプが揃っている。岩屋、堀田のオフェンス力が高いといっても、まず守備の「スタンダード」を満たす必要がある。

DFに課題を残す2人

ダウナーHCは率直に岩屋、堀田の課題を語っていた 【(C)B.LEAGUE】

 横浜BCにいいところなく敗れた8日の試合後、ダウナーHCはこう語っている。穏やかな口調ではあったが、約された言葉はかなり強かった。

「正直に言うと、フラストレーション溜まりすぎて、皆さんの前で言葉にできないぐらいの憤りを感じています。選手たちが攻守ともにゲームプランを遂行できない試合でした」

 ルーキー二人の出場時間が短くなった理由は、こう説明していた。

「岩屋選手も堀田選手も前半(第1クォーター)にチャンスを与えましたが、ディフェンス(DF)のところで大きなミスがあり、それで出場時間が伸びませんでした。自分たちもプロとして、ファンのために勝たないといけません。リードされていたら、点差をどうにかして縮めたい。その中で彼らを使う時間がなく、最後のガベージタイム(試合が実質的に決まった時間帯)になって(再び)彼らを出すことになりました」

 岩屋と堀田は、一言でいうとプロの壁に苦しんでいる。秋田は既にチャンピオンシップ出場の可能性がなく、今季は降格もない。だからといって「目先の結果を度外視して若手を起用する」ことがチーム、起用された選手のためになるとは限らない。基準をしっかり伝え、悔しさを持たせることも、時には有用なアプローチだ。

 ダウナーHCは続けた。

「若い選手の育成はしていきたいですけど、プロとして勝ちたいですし、一つ一つしっかり勝ちに向かってやりたい。彼らがしっかりDFをしてくれるかがまず優先で、そこが見えれば出場時間も伸びていくと思います。まずDFを理解し、判断とスキルを向上させてほしい」

本人が語る課題の中身

堀田尚秀は左手から放たれるシュートが武器 【(C)B.LEAGUE】

 岩屋はこう述べる。

「オフェンスの部分で自分の良さを出して、チームとしてのスコアを伸ばすところは貢献できた部分もありました。DFではちょっとエラーが起きたりして、そこでやられていた印象をコーチに与えてしまったと思います。強度の部分はできているシーンも(あると)僕的には感じていて、どちらかというと今はスカウトの部分で言われているのかなと思います」

 バスケットボールに限らないが、守備は「個の強度」「判断」の両面がある。バスケットボールなら「出て守るか、引いて守るか」「マークを捨ててヘルプに行くか、そのままマークを続けるか」といった判断が試合の中で起こる。相手に応じたゲームプランがあり、「チームルール」も用意される。そのルール、役割をきっちり果たすことはプロとしての最低ラインと言っていい。

 堀田は自身の課題をこう述べる。

「DFはプロに入る前から言われていた課題ではあったんですけど、オンボールのピックの抜け方というか、チェイスの部分で剥がされすぎているので、そこが課題かなと思います」

 ピック&ロールはハンドラーがスクリーンを使いながら、守備側に「ジレンマ」を強いるオフェンスだ。岩屋や堀田のようなガードなら守備では「スクリーンに引っかからず、マークを空ける時間を短くする対応」が必要だ。もっとも、それを最初から難なく遂行できる新人はなかなかいない。他のチームの若手ガードもそうだが、どんなにオフェンス力が高くても「相手のスクリーンに引っかかる」「弾き飛ばされる」ようだと厳しい。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、バレーボール、五輪種目と幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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