苦境の西武で台湾の大砲は「1日1安打」  打球速度はトップレベル、首脳陣の期待は…

中島大輔

NPBトップレベルの打球速度

43人の新外国人選手が加入した中、大きな注目を集める林(中央) 【写真は共同】

 2026年のNPBには育成も含めて43人の新外国人選手が加入した中、とりわけ大きな注目を集める1人が台湾人の林安可(リン アンコー/西武)だ。

 近年、レベルアップが進む台湾プロ野球(CPBL)で入団2年目の2020年に32本塁打、99打点で二冠に輝くと、2025年には同トップのOPS1.000を記録。同年シーズンオフにポスティングシステムを申請し、現地報道によると西武が2年総額推定400万ドル(約6億2400万円)で契約した。

 林の打棒が日本でよく知れ渡ったのは、2024年11月のプレミア12の日本戦で東京ドームのライトスタンドに突き刺した本塁打だ。それから1年4カ月後の今年3月、ワールドベースボールクラシック(WBC)では15打数1安打に終わったが、はたしてNPBで活躍することはできるだろうか。

「WBCと比べたら、状態は徐々に上がってきたと思います。WBCとは違うピッチャーと対戦するので対策をして、自分のスイングも調整しました」

 184cm、90kgの左打者は試合前にそう話した3月31日、オリックスを迎えた本拠地開幕戦で持ち味を見せつけた。3対3で迎えた8回裏無死2、3塁の場面で、ライト線に鋭いライナーで2点タイムリー。チームに勝利を呼び込んだ。

 この一打は打球速度181.1km/h。2026年WBCの日本代表で言えば、これ以上速い打球を記録したのは大谷翔平(ドジャース)しかいない。NPBではトップクラスとされる打球速度だ。

1人だけ打球音が違う打撃練習

 チームが今季開幕9試合終了時点で8試合に先発出場し、32打数8安打、本塁打0、打点3、打率.250、OPS.689。甘いボールを捉えて1試合1安打のペースで打っているが、本領発揮とは言えないだろう。

 それでも、打者としてのポテンシャルは十分にうかがえる。そう証言するのが、仁志敏久野手チーフ兼打撃コーチだ。

「打撃練習の時、1人だけ打球音が違うし、初速も全然違います」

 試合前の「打周り」と言われる打撃練習の2巡目で、林はアレクサンダー・カナリオ、石井一成、西川愛也と同じ組で回る(※石井と西川は4月5日登録抹消)。ヒットメーカーの西川、今季FAで加入してチームトップクラスの打球速度を誇る石井、昨季のMLBで大谷を上回る平均スイングスピード=76マイル(約122.3km/h)を記録したカナリオと比べると、林の打力がよくわかる。それが仁志コーチの言う打球音だ。

 木製バットが硬球を捉える「カン!」という音はピストルの発射音にたとえられるが、林の打球音は周囲より強くて、重い。ドミニカ共和国出身のカナリオもバットの芯で捉えた打球音は強いが、ミスショットも少なくない。

 対して林は打ち損じがほぼなく、広角に鋭いライナーを「カン!」という重低音で飛ばしていくのだ。仁志コーチが語る。

「練習を見ていても、スピン量の少ない、ライナーとか強い打球が彼の特徴です。あまりホームラン、ホームランという感じではないかなと。それより、間を抜けていくような強い打球ですね」

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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