やり抜く力 天才じゃなくてもトップになれた「ベリベリ」シンプルな理由

週4ラーメン生活で全身じんましん…戸崎圭太、外国人騎手の技術に魅了され“迷走”した日々

戸﨑圭太

【写真は共同】

地方競馬から日本競馬のトップへ上り詰めた騎手・戸﨑圭太。
大井競馬場で頭角を現し、JRAでも数々のビッグレースで結果を残してきた。
その華やかな実績の裏には、挫折や苦闘、遠回りの日々があった。

書籍『やり抜く力 天才じゃなくてもトップになれた「ベリベリ」シンプルな理由』(戸﨑圭太著)より、一部を抜粋してお届けします。

体調不良を機にグルテンフリー生活に

 2017年。あれは桜花賞と皐月賞に向けたトライアルレースが始まった頃だったと思う。僕は突然の体調不良に襲われた。顔以外の全身に蕁麻疹が出たのである。

 アレルギーをもっているわけではないから、当然そんな症状は初めて。とにかくかゆくて、ダートのレースで勝負服の上から砂が当たっただけで皮膚が過剰反応を示し、ブワーッと症状が出てしまうほどだった。

 このままでは競馬に集中できないばかりか、日常生活もままならない。すぐに病院へいき、処方された薬を飲んだところ、スーッと症状が治まったので、「薬で治まるならいいや」と軽く考え、しばらくは薬を飲みながら過ごしていた。

 ある日、トレーナーにその話をしたところ、「それじゃあ治らないですよ」と力を込めていわれ、トレーナーとともに別のクリニックへいくことに。そこで医師にいわれたのは、まず「薬はよくないから飲まなくていい」ということ。そして、「食生活が原因で腸が弱っているから、体質改善をしなければならない。そのためにまずは小麦を抜きなさい」ということだった。

 腸壁は網目状になっていて、腸が弱まるとその網目が広がるため、そこからウイルスが入り、さまざまな症状が出るのだとか。医師いわく「腸だけは強くしておかなければダメ」。僕にとっては青天の霹靂だったが、のちにこの医師との出会いに感謝することになる。

 食生活については思い当たる節が多すぎたし、前年のリーディング争いの疲れもあって、免疫力が落ちていた可能性もあるなと思い、わが身を振り返る良いきっかけになった。症状は蕁麻疹だけとはいえ、薬を飲むなといわれてしまった以上、仕事にも確実に支障をきたす。となれば、ここは覚悟を決めるしかない。小麦を摂らない食生活――そう、完全なるグルテンフリー生活に舵を切ったのだ。

 薬をやめたことで蕁麻疹がぶり返し、しばらくはかゆみに悩まされたが、脱・小麦生活が1カ月を過ぎた頃から徐々に治まり始め、グルテンフリーの効果を身をもって実感。大変だったし、苦しい思いもしたけれど、ジョッキーを続けたい一心で頑張れたし、ここでもがむしゃら気質が生きたと思う。

 先ほど、思い当たる節が多すぎると書いた僕のそれまでの食生活だが、驚くなかれ、週4でラーメンは当たり前。もともとラーメンは大好きで、美浦トレセンの帰りには絶対といっていいほど寄る店があったぐらいだ。

 ハマっていたといっても一時のことではなく、JRAに移籍してからずっとだったから、その時点で丸4年。朝ラーを含め、規則正しく週4ラーメン生活を送り、最低でも週に一度は焼肉を食べるという、自由すぎる食生活を謳歌していた。

 この話をすると、みんな一様に「ジョッキーの食生活とは思えない……」と唖然とする。僕も「ですよねぇ」と笑うしかないのだが、幸か不幸か減量とは無縁だったから、それまで食に意識を向けることなどなく、好きなものを好きなときに食べていた。その結果、身体から「いいかげんにしろよ!」と一喝されたというオチだ。

 2017年といえば僕は37歳。夕食は妻が体にいい食事を用意してくれていたが、30代も後半に差しかかり、長年の生活習慣による負の蓄積に体が追いつかなくなったのだろう。

 ところで、ラーメン=悪だといいたいわけではない。もともと好物だったし、週に4回×4年間だから、単に僕は食べ過ぎただけ。何事も、過ぎたるは及ばざるがごとし、である。

2年間の脱・小麦生活で叶えた体質改善

 グルテンフリーを徹底し始めた僕は、麺、パン、揚げ物はいっさい食べず、小麦粉が入っているものもある醤油などの調味料から飲み物まで、完全にグルテンフリーのものを揃えた。それらを全部もって移動するため、当時の荷物はすごい量に。いっしょに移動する熊野さんにも、大変な思いをさせてしまった。あ、でもグルテンフリーを徹底している僕の前で、ラーメンやうどんをおいしそうに食べていた熊野さんの姿を僕は忘れません(笑)。

 ちなみに、調整ルームの食堂で働くスタッフさんにも、本来なら揚げ物のメニューをソテーにしてもらうなど、当時はかなり協力してもらった。元・週4ラーメン野郎の僕がいうのもなんだが、やはりジョッキーはアスリート。そういったリクエストを受け付けてくれるのは本当にありがたかった。

 当初、医師からは「とりあえず3カ月は続けて」といわれた完全グルテンフリー生活だが、僕は結局丸2年、一度も小麦の誘惑に負けることなく、きっちりとやり切った。

 先述したように、1~2カ月で症状は治まったが、そこは小心者の性。3カ月でやめて、また症状が出てしまったらと思うと怖くて、なかなかやめる気にはなれなかったのだ。そんな僕の食生活を支えてくれた妻には、心から感謝している。

 僕の体質にはグルテンフリーが合ったのか、それ以降、蕁麻疹は一度も出ていないし、何より夏バテしなくなった。丸2年、僕のグルテンフリーに家族のみんなにも付き合わせてしまったのだが、アレルギー体質だった長男の体調も改善され、僕も含めてメリットしかなかったと思う。ただし、人によって絶対に合う合わないがあるので、オススメするつもりで書いたわけではない。僕にとっては、ジョッキーという仕事を続けていく上で、この体質改善は非常に大きかったのだ。

 ちなみに今は、ストレスを溜めないことを優先しているので、グルテンフリーも徹底したものではなくなった。頻度はかなり減ったが、ラーメンもたまにご褒美のような感覚で食べている。やっぱりおいしいねぇ。

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