やり抜く力 天才じゃなくてもトップになれた「ベリベリ」シンプルな理由

「競馬は簡単」調子に乗って大ケガ、先輩への暴挙…トップ騎手1年目の黒歴史

戸﨑圭太

【写真は共同】

地方競馬から日本競馬のトップへ上り詰めた騎手・戸﨑圭太。
大井競馬場で頭角を現し、JRAでも数々のビッグレースで結果を残してきた。
その華やかな実績の裏には、挫折や苦闘、遠回りの日々があった。

書籍『やり抜く力 天才じゃなくてもトップになれた「ベリベリ」シンプルな理由』(戸﨑圭太著)より、一部を抜粋してお届けします。

「競馬は簡単!」とんでもない思い上がりの果てに

 2勝目は約2週間後、4月27日の大井1R、4歳の1400m戦だった。

 騎乗馬は、これがデビュー戦となる香取厩舎のビッググランデで、9頭立ての3番人気。大外枠から好スタートを決めてハナに立ち、最後は7馬身差の大差で逃げ切り勝ちを収めた。

 その前日の4Rでも後方から追い込んだカゴヤコウハク(香取厩舎)で2着するなど、実戦で見せ場をつくれていたこともあり、単純な僕は「なぁんだ、競馬って簡単じゃん!」とばかりに、どんどん調子に乗っていった。

 当然ながら、競馬はそんなに甘くないし簡単でもない。その怖さを知らずにイケイケ騎乗を繰り返した僕は、次の開催で強烈な洗礼を受けることになったのだ。

 5月13日、大井2R。10番人気のキングツインカム(柏木一夫厩舎)に騎乗していた僕は、スタートからガンガン攻めていき、1コーナーで狭いところに突っ込んだ。その瞬間、ほかの馬と接触し、バランスを崩して落馬。デビューからわずか1カ月で、左上腕骨と顔面を骨折する大ケガを負った。

 頬骨が折れたことで、眼球を支える土台がなくなり、風船のようなものを顔に入れて眼球を支える処置を施すことになったのだが、医師からは「患部の状態によっては、それができないかもしれない」と告げられた。さらに、「できないとなれば、騎手を続けられないかもしれない」とも。それを聞いたところで、寝たきりだった僕はわんわん泣くことしかできず、とにかくその処置が成功することを祈るばかりだった。

 先輩ジョッキーたちがお見舞いにきてくれたのだが、想像以上に腫れ上がった僕の顔を見て、ある人からは「これはヤバい。こいつはもうダメだと思った」とあとから聞いて、改めて背筋が凍る思いがしたものだ。

 幸いにも処置は成功し、そこからたっぷり3カ月間の休養。競馬に乗りたくてたまらなかった僕は、骨がくっついていること、痛みがないことを理由に、医師からの正式なゴーサインを待たず、さらには腕のリハビリをまるでしないまま、8月23日に復帰した。

 あの落馬から25年以上が経つが、リハビリをすっ飛ばした代償は大きく、今も左腕は中途半端な位置までしか上がらないままだ。

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