代表戦初解説は第2の故郷グラスゴーで 中村俊輔氏が語る英遠征の「可能性」
この時期だからこそ。特別な「雰囲気」
今回、初めて解説をするのは、やはり第2の故郷であるグラスゴー開催だからだろうか。そう問われると、中村は意外にも、小さく首を振った。
もちろん、ここに来られたのはうれしい。
ただ、それが一番の理由ではない。
「一番はやっぱり、この時期の代表の現場にしかない雰囲気を、肌で感じられるということです」
6月にはW杯が控えている。
中村が現地を訪れる、スコットランド戦と中2日で行われるイングランド戦との2連戦は、本大会出場メンバーが発表される直前、最後の実戦機会にあたる。
メンバー滑り込みへ懸命のアピールをはかったことも、不動の主力として迎えたこともある。選手としては、さまざまな角度からこの時期のチームを見つめることができてきた。
普段とはまったく違う日本代表の雰囲気。そこにもう一度触れられたら…。そんな渇望が中村を動かした。
指導者に転身した今、また違う視点からこの時期のチームをみられることは、間違いなく貴重な学びになる。そんな確信がある。
「しかも、チームの中でもなく、東京のスタジオでもない、絶妙な距離感で。遠すぎて見えにくいわけでもなく、かといって俯瞰が難しいほど近いわけでもない、ちょうどいい距離。そういう機会は、おそらくなかなかないなと」
解説の実績と、指導者のキャリアと
そんな解説の仕事のあり方にも、指導者としてのスキルを高めることにつながるものを感じている。
「現役選手の時は、自分が感じたものをプレーに反映さえできればよかったところもあった。指導者はそれを言語化して、かつ試合の流れや練習の流れを途切れさせないように、端的にスパッと伝えられないといけない」
解説もしかり。
特に今回は、W杯直前のチームの雰囲気から、間違いなく多くのものがみてとれるだろう。それをいかにわかりやすく、試合視聴の流れを崩さないように伝えられるか。
「今回、U-NEXTでサッカーをみてくださる方たちのために全力を尽くすことは、自分の指導者としてのスキルアップにもつながるのではないかと」
解説者としての実績と、指導者としてのキャリア。
考え方次第で両立はできる。そう考えている。
「可能性」を読み解き、伝えるために
生来、謙虚で抑制的な性格ということもある。
中村はことあるごとに、そう繰り返す。
一方で、変わらないものもあると思っている。
W杯を目前にしたこの時期だけにある、代表の「重み」。それは今も昔も変わらない。
「初選出の塩貝(健人)選手などは、いきなりの活躍を期待できる実力を持ち合わせていると思う。W杯メンバー入りに向けたアピールもできるかもしれない。ただ、どんな結果に終わったとしても、この時期だからこそ味わえる雰囲気、代表の『重み』を知ることは、必ず今後につながる。本当に貴重な経験です」
「特に代表の常連ではない選手は、ここに来るとクラブと違う役回りを求められることもある。大変なこともあるかもしれないけど、その姿をヨーロッパの各クラブのスカウトにみてもらえるというのは、とてもいい機会になると思うんです」
このポジションもできるのか。なんだ、守備もできるじゃないか。
それなら話が変わってくる。
うちのクラブでもこういう役回りが期待できるかもーー。
普段と違う役回りが、かえってビッグクラブのスカウトたちの想像力をかき立てる。そうやって成立するポジティブな移籍も多々あると、中村は強調する。
「いずれにしても、この時期にこの場所でやるからこそ得られる経験、生まれる可能性は、本当にたくさんある。多くの選手にとって、この2試合が前向きな転機になったらいいと思うし、そこに立ち会えることは自分にとっても本当にありがたいことだと思っています」
見届ける。読み解く。わかりやすく伝える。
そんなことを胸のうちで繰り返しながら、中村が第2の故郷のピッチサイドに再び立つ。