MLBだけじゃない!日本人投手はなぜ海外移籍が続くのか? 今度は独立MVP右腕が台湾へ

中島大輔

榊原元稀はBCリーグ群馬で昨季の最多勝、MVPに輝いた右腕 【写真:群馬ダイヤモンドペガサス】

「ずば抜けた能力を持つという投手ではない」

 ソフトバンクに徐若熙(シュー・ルオシー)、西武に林安可(リン・アンコー)が台湾プロ野球(CPBL)からNPBに加入した2026年シーズン。逆に台湾へ渡った日本人選手がいる。昨季のBCリーグで最多勝、最多奪三振、シーズンMVP、ベストナインを獲得した右腕投手・榊原元稀だ。

「去年BCリーグ選抜の一員としてフォールリーグで韓国に行かせてもらってから、海外でやりたいという欲が出てきました。楽天モンキーズからオファーをもらった時はうれしかったです」

 阪神の森下翔太やオリックスの曽谷龍平らと同学年の榊原は大阪観光大学時代の2022年にプロ志望届を出したが、NPB球団から指名されず、独立リーグの群馬ダイヤモンドペガサスへ。BCリーグで先発投手として3年続けてコンスタントに登板し、2025年には17試合で10勝3敗、防御率2.18、73奪三振と際立つ活躍を見せた。

「ずば抜けた能力を持つという投手ではないけど、逆に言えばそれが武器です。モンキーズにはそうした点も評価されました」

 移籍の裏側を明かすのは群馬球団で会長付特別補佐を務め、ミルウォーキー・ブルーワーズの国際スカウトとしても活動する色川冬馬氏だ。

 実際、榊原のストレートは最速146km/h、アベレージでは139〜145km/hと特段速いわけではない。ツーシーム(平均129〜136km/h)、カットボール(平均129〜136km/h)、スローカーブ(平均87〜95km/h)、チェンジアップ(平均119〜125km/h)と豊富な持ち球と組み合わせ、コンビネーションで打ち取っていく。色川氏が続ける。

「榊原はシーズン通して故障もなく、先発ローテーションをちゃんと回れて、どの球種でもちゃんとストライクを取れる。モンキーズは先発でイニングをしっかり投げられる投手を求めていて、そこにフィットしました」

相次ぐ独立L→台湾移籍

 CPBLの特徴として、ストレートに強い打者が多い。対して榊原は力勝負で押すタイプではなく、投球術で打ち取るタイプだ。需要と供給がマッチし、開幕直前の3月中旬に契約がまとまった。

「まずは二軍の先発ローテーションでちゃんと回り、一軍入りをアピールしてほしい」

 楽天がオファーしたのは、育成外国人選手としての契約だった。CPBLで一軍登録できる外国人選手枠は各球団4人だが、育成外国人選手はその制限を受けず、故障者が出た場合などに備えてアピールしていける。

 契約条件は「NPBの育成選手程度」だが、金銭的には日本の独立リーグより恵まれている。人気拡大中のCPBLでステップアップを目指せるのは、大きなモチベーションになるだろう。

 昨季は富邦ガーディアンズが元くふうハヤテ(現ハヤテ)の二宮衣沙貴、元茨城アストロプラネッツの根岸涼を育成外国人として獲得したが、CPBLではなぜこうした契約が増えてきたのか。色川氏が見解を語る。

「2023年に台鋼ホークスが当時二軍球団としてスタートし、小野寺賢人がテスト外国人として入団。翌年一軍で投げたのが最初の成功体験です。次に富邦が二宮、根岸を獲得しましたが、そこそこ投げました。これくらいの契約内容で、日本の独立リーグのトップ選手が来てくれると気づいたんだと思います。鈴木駿輔は2024年からCPBLでプレーしていましたし、少しずつそういう流れになり始めていると感じます」

各国で求められる日本人投手のある能力

 今季、韓国プロ野球(KBO)には「アジアクォーター制度」ができ、NPBでも実績のある武田翔太(元ソフトバンク)や金久保優斗(元ヤクルト)、独立からは杉本幸基(元徳島)らが移籍した。櫻井周斗(元DeNA)らCPBLに新天地を求める日本人選手も増えているが、色川氏は好ましい流れだと見ている。

「日本の独立リーグでシーズンを通して活躍できれば、『台湾や韓国でもこれくらいできるだろう』と見てもらえるようになってきました。CPBLの二軍でパフォーマンスを発揮できれば、台湾の一軍、KBO、NPBのドラフトと選択肢が広がります。CPBLでプレーした実績があれば、台湾の社会人野球でプレーする可能性も出てくるし、中南米のウインターリーグも目指せます。これまでなかったような野球選手のキャリア形成のあり方を広く知ってもらえるという意味でも、榊原のチャレンジがどうつながっていくかが楽しみです」

 先に名前を挙げた日本人選手たちは全員ピッチャーだ。日本人投手は高いゲームメイク能力を備え、外国人投手がチームの主力となっている韓国や台湾、さらにメキシコなどでも評価されている。榊原はまさにそのタイプだ。

「僕のピッチングに派手さはないので、見ている人はインパクトを感じないかもしれません。でも試合が終わってみたら、『あ、今日あいつ、6回1失点に抑えたな』という感じのタイプなので、首脳陣がどんどん使ってくれたらありがたいですね」

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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