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故障明けの三笘がリバプール相手に躍動 英国開催の代表戦で本領発揮の予感

森昌利

三笘はリバプール戦の後半31分から出場。対峙する相手を得意のドリブルで翻弄するなど、故障明けながらキレのあるプレーを見せた 【写真:REX/アフロ】

 左足首の怪我で前節のサンダーランド戦を欠場した三笘薫が、3月21日(現地時間、以下同)のリバプール戦で元気な姿を見せた。ベンチスタートだったが、ブライトンが2-1とリードしていた試合終盤に投入されると、切れ味鋭いドリブルを披露。チームの逃げ切りに貢献し、英国でスコットランド、イングランドと対戦する代表戦に弾みをつけた。一方、いいところなく敗れたリバプールはこれで今季10敗目。昨季のプレミアリーグ王者は依然として立ち直れないでいる。

三笘は“君じゃ僕の相手にならない”という感じで

 確かに、リバプールのイングランド代表カーティス・ジョーンズはDFではない。しかしながら、リバプールの準レギュラーとして攻守にわたり質の高いプレーを披露し、その貴重なユーティリティー性とともに、スクワッド・プレーヤーとしてチームに欠かせない存在だ。

 中盤のどの位置でも効果的なパフォーマンスができる。さらに今季はジェレミー・フリンポン、コナー・ブラッドリーが負傷して手薄になった右サイドバックもこなしている。

 ところが、3月4日のアーセナル戦で負傷した三笘薫がアウェーのサンダーランド戦を欠場しただけで復帰し、この試合の後半31分に途中出場して、その1分後、守備範囲の広いオールラウンドなジョーンズと左サイドで対峙すると、一瞬にして25歳イングランド代表MFを置き去りにした。

 まるで“君じゃ僕の相手にならない”という感じだった。

 三笘が左サイドを深くえぐろうとしていると考えたのだろう。ジョーンズはエンドラインの方向に重心を傾けていた。三笘はそれを察知してか、小さく、しかし鋭く内に切り返し、ジョーンズを引きちぎった。

 するとスタジアム全体が3点目のゴールの予感に沸いた。小躍りするようにゴールに近づく三笘。そしてゴール前に走り込んだジャック・ヒンシェルウッドの気配を第六感で察知したかのように、その足元へ折り返しのショートクロスを放った。

「そうですね。決めてくれればよかったですけど、勝ったことがよかったですし、いい状態で(代表にも)入るかなと思います」

 時折、意外性たっぷりの決定力を見せる20歳MFヒンシェルウッドが、残念ながらこの絶好のボールにタイミングを合わせることができず、三笘にアシストがつくことはなかったが、日本代表MFは試合後にそう語った。

 その言葉を聞いて、三笘が主戦場とする英国――つまり長い移動も時差もない――でのスコットランド代表、イングランド代表と続く親善試合で、「本領を発揮するぞ」という期待が大きく膨らんだ。

聖地ウェンブリーで聴く君が代と三笘の躍動を楽しみに

三笘にとっては昨年9月以来の代表戦。とりわけウェンブリーで行われるイングランド戦は彼にとって特別な試合になるだろう 【Photo by Koji Watanabe/Getty Images】

 三笘にとって、特に3月31日にウェンブリーで戦うイングランド戦は特別な試合になるだろう。ブライトンで2022-23シーズンからプレーして今季で4シーズン目。いまやイングランドで「Kaoru Mitoma」の名を知らないフットボールファンはいない。ゴールでも決めたら大変だ。翌日の英メディアは大騒ぎになるだろう。敵味方の垣根を越えて、ものすごい注目を一身に集めて試合をすることになる。

 そんな状況に加え、三笘本人はW杯前の親善試合で欧州の真の強豪チームと当たる今回の戦いについて、「もう最後の局面ですし、(代表内の)競争も含めていい相手とできる。いい形でワールドカップにつなげればいいと思いますし、いい状態を見せることが選出につながると思います」と語り、自身の北米行きを確定させるためにも“強いインパクトを与えるパフォーマンス”を誓った。

 また今回招集されたイングランド代表の面々については、「どの選手もやっぱプレミアリーグでやっている選手だったり、トップリーグでやっている選手は見ていますが、自分たちもそういうリーグでプレーしている。いい勝負ができるかなと思います。もちろん、どのポジションの選手もクオリティが高いので気をつけないといけないと思います」と発言。強豪国には超一流の選手が揃っているのは当たり前だが、そうした選手たちと日常的に戦ってきた3年半の経験が“互角にやれるはずだ”という信念を生んでいるようだ。

 この感覚が非常に大切だと思う。イングランドは常に優勝を狙う代表チームだ。そことも「いい勝負ができる」という自信を持てる選手が、W杯では肝要かつ不可欠になる。

 そうした自信はやはり、昨季にイングランドの1部リーグでアタッカーとして一流の目安となる二桁ゴールを達成したこと。そして、怪我明けのこの試合でもリバプールを相手にジョーンズを置き去りにするプレーを見せ、“こいつはすごい!”という瞬間をつくった三笘だからこそ持てるものなのだろう。

「もう結果を出さないといけないですし、チーム作りの最終局面だと思うので、どういう存在感を出せるかによってはワールドカップ1戦目にかかわってくると思うので、そういうところで存在感を出せればと思います」

 この言葉通り、三笘がイングランド戦で決定的な存在感を示し、W杯の初戦となるオランダ戦への大きな糧となればと思う。

 筆者個人としては、2004年6月1日以来のイングランドvs日本となる。あの時にマンチェスターで聴いた「君が代」の感動は、どう形容すればいいだろう。10代のころからビートルズやハリウッド映画に夢中で完全なる西洋かぶれだった自分が、「こんなところで母国に対する愛情をこれほど強烈に自覚するなんて」と驚いた。

 そしてこの試合で、妻の国であり、筆者にフットボールの興奮と面白さを教えてくれたイングランドが、マイケル・オーウェンのゴールで先制した時にはまさに英語で「heartbreak(傷心)」というしかない感情が湧き上がり、さらに小野伸二の同点弾で天にも昇る喜びを感じた。

 このコラムでも何度か記述したが、フットボールが呼び起こす愛国心は本当に不思議である。

 前回はウェンブリー・スタジアムが改装中で、マンチェスター・シティの本拠地エティハド・スタジアムで行われたが、今回はフットボール発祥国の聖地で日本との試合が行われる。歓声が絶妙に反響し、大きく場内にこだまするように設計されているウェンブリーで聴く君が代を楽しみにするとともに、三笘が躍動する試合を期待したい。

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2025-26で25シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル30年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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