勝負の2年目に挑む佐々木麟太郎の「覚悟」とは? ソフトバンク1位指名とMLBドラフトの交差点【前編】

丹羽政善

開幕戦のアリゾナ大戦でソロ本塁打を放つスタンフォード大の佐々木麟太郎 【写真は共同】

一番大事なのはタイムマネージメント

 2月13日、アリゾナ州サプライズ。この日からスタンフォード大の他、ミシガン大、オレゴン州立大、アリゾナ大の4チームが参加して、総当たりの「カレッジ・ベースボール・シリーズ」が始まった。

 前の試合――ミシガン大対オレゴン州立大の試合が長引き、すでにレンジャーズのキャンプ施設を使って行われていた練習を終えたスタンフォード大の選手らは、一塁側のコンコースで待機。その中に2年生になった佐々木麟太郎の姿もあった。

 西陽が差し込む中、久々に顔を合わせた彼と雑談をしながら、去年は英語、学校生活、野球環境そのもの、移動など、初めてのことばかりで、ストレスもあったと思う。いま日常でストレスに感じることは?と聞くと、しばらく考えたものの、明確な答えを口にすることはなかった。

「なんでしょう。勉強は相変わらず大変ですけど…」

 それは、仮に日本語で授業を受けていたとしても同じこと。ただ、こうなったら、こうなる。先の展開が読めることでストレスは軽減され、それはすなわち、より野球に集中できるような環境になった、ということが言えるのではないか。

 問うでもなくそう振ると、佐々木は「それは、そうかもしれませんね」と同意した。

 もちろん日々、目まぐるしく過ぎていく。

 1月のリモート取材で、佐々木はその日の流れをこう明かした。

「朝8時ぐらいから活動を始めて、9時からウエイトトレーニング。その後、2つくらい授業を受けて、午後3時からチームの全体練習。今日は少し長めで6時半まで。その後、8時ぐらいまで個人練習をしていました」

 痛感することがある。

「基本的に一番大事なのは自己管理、タイムマネージメントですね」

 朝起きてから、授業と練習を軸に予定を組む。しかも30分刻みで。

「朝から晩まで、休むという時間はほとんどなくて、お昼も30分だけ。それ以外は、授業とトレーニング、個人練習でびっしり。なので、本当にタイムマネージメントが大切」

 大変といえば大変だが、充実もしている。

「好きでやっているので(笑)。多少の苦労は、楽しみ方次第」

 9月に新学期が始まり、秋学期はシーズンが始まってからの負担を減らすため、できるだけ多くの授業を選択。それも1年目の経験があってこそだが、そうして佐々木は今年2月、今季の開幕戦をアリゾナ州で迎えたのだった。

「それでも欲しい」ソフトバンクが示した覚悟の重み

昨年11月、スタンフォード大の佐々木麟太郎への指名あいさつを終え、取材に応じるソフトバンクの城島健司CBO 【写真は共同】

 その背には、多くの視線が注がれる。

 昨年10月、佐々木はソフトバンクからドラフト1位指名を受けた。佐々木自身、「(今後)自分自身がどういうプロセスを歩むかわからない。しかし、最終的な野球人生のゴールはメジャーの舞台でプレーすること」と公言している。指名によってそれがブレるわけではないが、ソフトバンクの誠意も理解している。

 佐々木が今年のMLBドラフトで上位指名されれば、ソフトバンクは交渉権を失う。そのリスクを覚悟で彼らは指名に踏み切った。昨年11月、指名の挨拶をするために現地を訪れた城島健司CBOは、「それでも欲しい」と言葉に力を込めた。

「ドラフト1位で来てくれない可能性がある選手を指名したというのが、僕らのメッセージだと思っているし、彼の評価だと思っています。それ以上でもそれ以外でもない」

 ダメージを小さくするなら下位指名という選択肢もあったが、それでは誠意にならない。また、指名できない可能性もある。実際、DeNAも1位で指名した。

 その評価を佐々木も意気に感じている。

「本当にうれしい。自分自身、まさかと」

 事前にスカウトから連絡があり、「ドラフト中盤以降で指名があるかも」という話は耳に入っていたとのこと。しかし、蓋を開けてみれば1位指名。しかも、2球団。その意味するところが、わからない佐々木ではない。

「本当に誠意を持って指名していただいた」

 とはいえ、メジャーの世界が、手の届くところにある。彼のパワーにはメジャーのスカウトらも一目置く。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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