高校野球 令和の継投論

サイド転向は本格派投手?花咲徳栄流投手の見極め方 甲子園V腕は一時転向させた過去も…

大利実

【写真は共同】

 カウント途中での継投、「雨が降る前に傘を差す」早めの継投、マシンガン継投、選手の身体を守る継投、もしくはエースと心中……果たして正解は?令和の高校球界で戦う監督8人が答える。

『高校野球 令和の継投論』から花咲徳栄高校・岩井隆監督の章を一部抜粋して公開します。

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サイドスローは技巧派ではなく本格派

 花咲徳栄の歴代の投手陣を見たとき、ひとつの特徴としてサイドスローの存在がある。特に珍しいのが、2025年世代のエース渡辺祐輝、2019年夏の甲子園に出場したときの中津原隼太、2017年夏はメンバー外も金沢学院大を経てプロ入りを果たした長谷川ら、スリークォーターに近い左のサイドスローがいることだ。

「オーバースローでコントロールが悪いピッチャーは、腕を下げたほうがまとまりやすい。サイドにすることで、高低のぶれは少なくなるので、左右だけ気をつければいい。あとは、投げ方を見て、腰の回転が横であればサイドのほうが体の使い方がスムーズになる。軸足の使い方も見ていて、軸足でプレートを蹴れずに、ただヒザを送っているだけのピッチャーは、サイドにしたほうがうまくいきやすいと思います」

「ピッチャーは上から速い球を投げることにプライドを持つ」という話を聞いたこともあるが、「オーバーで結果が出ず、今のままではメンバーに入れないと実感すれば、腕を下げることにそれほど抵抗は持たない」と言う。

 ただし、入学してすぐにオーバーからサイドに転向するのはさすがに早い。軸足の蹴りを教えていきながら、それでもなかなかうまく使えないピッチャーへの最終手段として、サイド転向を提案する。中津原は3年春が終わってから腕を下げて、夏の埼玉大会制覇に貢献した。長谷川は2年冬に、サイドに転向している。

 一般的には、「サイド=変則の技巧派」と思われがちだが、岩井監督の考えは違う。

「サイドに技巧派は求めていません。真ん中高めに強いボールをどれだけ投げられるか。高めでフライを取れないと、なかなか結果は残せないと思います。ツーシームとかでゴロを打たせることも必要ですけど、そればっかりではしんどいですね」

 高めに強い球を放るためには、重心移動がポイントになる。

「オーバースローとは重心の移動の仕方が変わります。一度沈んでから、伸び上がるように移動していく。わかりやすく言えば、下から上に使っていく。そのためにも、軸足の強化が必須。あとは、腕力です。伸び上がるということは、重力に反していくので、腕の力が必要。チューブトレーニングなどで徹底的に鍛えていきます」

 頭の位置にもポイントがあり、オーバースローと同じ感覚で投げると腕が振れなくなる。

「感覚的には、サイドスローは頭を残して、腕を振る。三遊間のゲッツーのように、頭を少し軸足側に引いたほうが、腕を振りやすい。頭が突っ込むほど、腕が出てこなくなります」

 一方で、この話とはまったく違った狙いで、サイドスローにチャレンジさせることもある。2017年の甲子園優勝メンバーの清水は、3年春の県大会後、数週間ほどサイドスローで投げていた。

「あれはちょっと、指にきたんですよね。ベンチで見ていて、やばいなって。フォームのバランスが崩れて、リリースの位置がバラバラ。高低に大きくずれるので、腕を下げることで高低を安定させる。清水のときは、気分転換の意味が大きかったです」

 過去にはイップスで苦しんだピッチャーがいたこともあり、このあたりのちょっとした変化には敏感に反応する。

「ピッチャーは繊細なもので、いきなり発症することがあります。危ないなと思ったら、すぐに交代して、『ネットスローに行ってこい。野球が下手なんだから、投げる練習をしてきなさい』と実戦から外します。個人的には『イップス』の何が悪いって、『イップス』という言葉を作った人だと思っているので。昔もそういう人がたくさんいたけど、『コントロールが悪いから練習しろ』で終わりでした。結局は、投げる練習をして、野球がうまくなるしかないんですよ」

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著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

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