高校野球 令和の継投論

ドラ1右腕・石垣元気はなぜ北海道→群馬の高校へ? 3年夏はリリーフ専念、きっかけは医師の助言

大利実

コンディション面を考えたリリーフ・石垣のプラン

 トミー・ジョン手術から復帰したばかりの佐藤には、球数の制限がかかっていた。古島先生から伝えられたのは「30~40球が目途」。夏の大会で、いかに投手陣をやりくりしていくか。センバツ後のプランでは、「先発・石垣を考えていた」と青栁監督は明かす。

 その言葉通りに、春の群馬大会準決勝では先発として7イニング98球を投げて、前橋育英を2失点に抑えた。続く関東大会では、1年生の石垣聡やセンバツで頭角を現した山田に先発の経験を積ませるために、石垣は全試合リリーフで試合を締めた。

 6月上旬に行われた聖光学院との練習試合で先発し、140球近く投げて完投勝利を挙げた。夏の大事な試合での先発を考えての起用だったが、試合後にヒジの筋肉が張り、しばらく登板を回避することになった。

「すぐに古島先生にも診てもらいました。そこで、『今の段階では出力が高すぎるから、先発で球数をたくさん投げるのはやめたほうがいい。投げるのなら、リリーフの短いイニングで』という話をされました。石垣本人もその話を聞いています。高校生の体で150キロのストレートをコンスタントに投げていて、それに石垣の場合は常に100パーセントで投げるので、力を抜くことができない。それもあって、ヒジへの負担が強くなっていました」

 古島先生から「リリーフで」と言われた時点で、夏に石垣を先発させるプランはなくなった。万が一、無理な起用で右ヒジを痛めてしまったら、石垣の将来にも影響を及ぼす。佐藤のことがあっただけに、青栁監督の判断はより慎重なものとなった。もちろん、リリーフであればヒジを痛めないという保証はどこにもないが、「球数」という点で負担を軽くできるのは間違いなかった。

 迎えた夏の群馬大会。青栁監督の構想では下重と山田が先発枠で、佐藤や島田が中継ぎに回り、石垣はリリーフで待機。決勝の前橋育英戦では、下重が3回に先制3ランを浴びる劣勢の展開となったが、下重(5回)、佐藤(2回)、石垣(4回)でタイブレークにもつれ込む熱戦を制した。このとき、佐藤の球数は29球で終わっている。

 甲子園の京都国際戦も、群馬大会決勝と同様のプランだったが、下重が3回4失点で降板。山田、佐藤が6回までつなぎ、7回から石垣につないだ。石垣は最速155キロのストレートを投げ込み、甲子園の観衆を沸かせた。

「基本的な考えとして、先発で使うのは変化球のキレが良くて、コントロールがいい投手。下重がまさにそのタイプで、もっとも安定感があったピッチャーでした。リリーフには、球が速くて三振を取れる石垣を置いておきたい。そう考えると、佐藤は中継ぎで使うことになり、球数制限もあるので最後に残しておくのは難しい。だから、佐藤と石垣の並びはセットで考えていました」

書籍紹介

【画像提供:竹書房】

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著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

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