仙台育英はなぜオープナー左腕を先発に? 監督が“旬”の大切さを痛感した苦い敗戦
『高校野球 令和の継投論』から仙台育英高校・須江航監督の章を一部抜粋して公開します。
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爆発力に期待のタイプは先発で起用
2023年センバツ、初戦となる2回戦の慶應義塾戦で先発に抜擢するも、2回途中1安打3四球0失点で降板。髙橋(6回2/3)、湯田(2回)でつなぎ、延長10回2対1で接戦を制した。3回戦の龍谷大平安戦は、初戦の投球内容が良く、安定感のある湯田を先発で起用し、湯田(7回)、田中(1回)、佐々木広太郎(1回/中央大)とつなぎ、6対1で勝利。接戦で力を発揮する伝統校に対して、自滅しないことに重きを置いた継投だった。そして、準々決勝の報徳学園戦で再び仁田を先発に使い、2回途中3失点で髙橋にスイッチした。仁田(1回0/3)、髙橋(4回)、湯田(2回)、田中(2回2/3)とつないだが、延長10回4対5でサヨナラ負けを喫した。
イニング数だけ見ると、メジャーでたまに使われる「オープナー」(中継ぎが試合の入りを抑えて、2回や3回からローテーション投手が長いイニングを投げる)のようにも思えるが、さすがの仙台育英であってもそこまでの余裕はないはずだ。
「あのときは、髙橋、湯田、田中が中心で、もっとも状態が良かったのが髙橋でした。その髙橋を先発で使わなかったのは、長いイニングが持たないからです。雪が多い東北地方の学校が3月のセンバツで戦うのは、みなさんが思っている以上に大変なことで、仕上がりがどうしても遅くなります。ピッチャーで言えば、まだ完投できるだけの肩ができあがっていない。髙橋は技術的にもまだそこまでに達していませんでした」
あえて、仁田を使った絶対的な理由がひとつある。
「ハマッたときの仁田は、髙橋や湯田以上のピッチングをします。圧倒的な爆発力を持っている。仁田のようなタイプを使うとしたら、先発が一番いいという考えです。逆に、リリーフでは正直使いづらい。仮に調子が悪ければ、次に髙橋がいるので早めに代えることができます」
突き詰めて考えていくと、ピッチャーひとりひとりに与えられた役割が違う、ということになる。
「毎大会5~6人のピッチャーを入れていますが、それぞれに求めている能力が違います。5分の2は柱として期待していて、2022年であれば斎藤、古川、2023年であれば湯田、髙橋です。5分の1は、強烈な爆発力を持ったピッチャーを入れていて、ポテンシャルを発揮できたときは必ず力になる。昨年の夏であれば井須、一昨年であれば山口廉王(オリックス)がこのタイプになります」
最近の言葉を使えば、「ロマン枠」とも言えそうだ。爆発力に期待するのは、相手校の高い攻撃力を警戒しているときが多い。
「試合前の分析でオーソドックスな起用で戦えるのがわかれば、試合を作れるタイプを使うことのほうが多いと思います」
綿密に分析するのが、打力はもちろんのこと、得点のバリエーションがどの程度あるのか。
そこから自チームの投手陣の力量と照らし合わせて、「何失点するか」をシミュレーションする。失点が予想できれば、それ以上の得点を取るためのオーダーを決める。ロースコアの戦いが想定される場合は、「当たったら飛ぶけど守備がちょっと怖い」という選手は使いにくくなる。
なお、仙台育英の投手層であっても、「5分の2が5分の5になることはない」とはっきり言い切る。「地位が人を作る」ではないが、重責を担うポジションにいるほど、ふさわしい人間になろうと努力をする。
「エース級が5人と、エースが5人では意味合いが違います。エースは晴れの日も雨の日もどんな相手でも、試合を作れる投手です。背番号で考えると、10 番は1番になりえても、17番や18番が1番の役割を果たせるかとなるとそれは難しい。でも、高校野球なので、全員が1番になる必要はないとも思います。17番や18番には、そこにふさわしい役割があります」