高校野球 令和の継投論

左右エース揃えた25年横浜高、貫いた先発・織田の根拠は? 唯一迷った夏の一戦は「本当に勉強に」

大利実

【写真は共同】

 カウント途中での継投、「雨が降る前に傘を差す」早めの継投、マシンガン継投、選手の身体を守る継投、もしくはエースと心中……果たして正解は?令和の高校球界で戦う監督8人が答える。

『高校野球 令和の継投論』から横浜高校・村田浩明監督の章を一部抜粋して公開します。

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先発・織田翔希、リリーフ・奥村頼人の「勝ちパターン」

 2025年の投手起用を振り返ると、先発・織田、リリーフ・奥村が必勝パターンであり、片山、山脇、前田一葵らが中継ぎの役割を担っていた。相手との力量を比較しながら、本職はショートの池田を先発に使うこともあった。センバツでは織田が5試合すべてに先発し、夏の甲子園でも4試合中3試合でスターターを務めた。

「使いすぎたら、『投げさせすぎだ』と言われて、使わなければ、『なんで投げさせないんだ』と言われる。それが投手起用ですよね。いろんな意味で難しいです。試合前に『織田が5イニング、奥村が4イニング』と考えていても、思い通りの展開になることもまずないですから。何が正しいかなんてわからないですよ。答えがない。継投にはいろんな要素が絡んできます」「周りの目が気になって、考えすぎていた時期もあった」と明かす。投手陣の層が厚いがゆえに、選択肢は増える。

「杉山(遥希/西武)がエースだったときは、二番手の鈴木楓汰(日本製鐵石巻)がケガ明けだったこともあって、大事な試合はすべて杉山でした。一番わかりやすい起用です。でも、杉山にかかる負担が大きくなりすぎて、大変でしたけどね」

 杉山が3年生の夏は神奈川大会の決勝で、慶應義塾に9回逆転負け。138球をひとりで投げ抜いたが、最後の最後に得意のチェンジアップが浮いて、逆転3ランを打たれた。今の投手陣の層であれば、継投に入っていた可能性は十分にある。

「昨年(2025年)、投手起用に関して一番考えていたのは『しっかりとした形を作る』ということです。織田から奥村への継投がひとつの形で、前と後ろは決めておく。織田が早めに打たれたときは間にほかの投手を挟む。周りのことは気にせずに、自分の信念というか、『横浜の野球はこれだ』というものを決めて、選手がそれに応えてくれたことが、甲子園での結果につながったと思っています」

 奥村、織田ではなく、織田、奥村の順番にした理由はどこにあったのか。

「織田はどんな状況でも試合を作ることができます。ポテンシャルの高さはもちろんですけど、インコースにしっかりと投げ切れるのが大きくて、センバツの健大高崎戦は見事なピッチングでした。100球近く投げたうち8割近くはインコースだったと思います」

「健大の打者陣は腕が伸びるところがもっとも強い」という分析から、徹底してインコースを攻めた。

「うちは『5-0野球』を掲げています。5対0で勝つ。攻撃はもちろんですけど、守備からリズムを作っていきたい。そのためには試合の入りが大事で、先発でそのときに一番いいピッチャーを使いたい。それが春はうまくいきました」

 織田でいけるところまでいって、あとは奥村につなぐ。奥村の存在があったからこそ、織田も最初から力を出すことができたはずだ。

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著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

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