現代野球を“見える化”する 最先端のデータ分析と戦略

日米で起きた打撃の進化と変化 魚雷バットと新基準金属バット、その背景は?

川村卓

【写真は共同】

 データの進化とともに技術・教え方・戦い方が変わる球界の常識&トレンドを筑波大学教授で現役硬式野球部監督でもある川村卓氏がデータから“科学的”に検証。ラプソード・トラックマン・ホークアイとは? 初心者に優しい最新機器の活用事情、大谷翔平や山本由伸のすごさとは?

「現代野球を“見える化”する 最先端のデータ分析と戦略」から一部抜粋して公開します。

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すべてのコースをホームベースの前でさばく

【画像提供:株式会社カンゼン】

 図20は、ボールを捉えるミートポイントのイメージを示したものである。野球経験者であれば、「インコースは前、アウトコースは後ろ」という教えを一度は受けたことがあるかもしれない(A)。決して、間違っているわけではないが、昨今の流行りはBのようにすべてのコースを同じ場所で捉える打ち方である。ちなみに、Aの選手は右打者で首位打者を獲得しており、安打の奥行きがすごい。Bの選手は左打者で、150キロ以上のいわゆる長打が期待できる打球速は、ほとんど前でさばいている。

 日本人の場合はどちらかといえばインコースは前、アウトコースは後ろでさばくイメージだ。

 シアトルにあるドライブラインでは、「ホームベースの6インチ前で打つことで、長打の確率が上がる」という教えを徹底し、上から撮影した映像でミートポイントを視覚化している。

 なぜ、この考えが生まれたか。考え方はとてもシンプルで、前で捉えるほうがスイングが加速した状態でボールを捉えることができるからだ。結果として、長打の確率が高い打球につながる。

 この代表例とも言えるのが、WBCのアメリカ代表に選出されているカイル・シュワバー選手(フィリーズ)である。2025年に56本塁打を放ち、自身2度目のナ・リーグ本塁打王を獲得した。センターからライト方向へのホームランがじつに45本近くあり、とにかくミートポイントが前にある。逆方向に飛ぶときは決して狙っているわけではなく、タイミングが少し遅れたときや、ストレートに差し込まれたときに起きる現象となる。

 また、インコースを前でさばくために、2025年のMLBで突如として流行り出したのが「トルピードバット」(魚雷バット)である。先端部が細く、芯から根元にかけて太くなっている特殊な形のバットだ。重心の位置が従来のバットよりも手元側にあるのが特徴で、その分、インコースが振り抜きやすい。インコースに差し込まれる打者ほど、効果があったのではないか。弱点としては、重心の関係でヘッドが返りやすくなるため、外のスライダー系にヘッドが早く回ってしまうこと。中盤戦以降は、バッテリーもそのあたりを頭に入れながら攻めていた印象が強い。

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