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試合終盤の失点を繰り返すリバプールの憂鬱 クローズアップされるクローザー遠藤の存在価値

森昌利

1-0の後半45分に被弾……。リバプールはまたしても終了間際に失点を喫し、ホームでのトットナム戦で勝利を逃した 【Photo by Robbie Jay Barratt - AMA/Getty Images】

 3月15日(現地時間、以下同)のトットナム戦でリバプールが逃げ切りに失敗した。1-0の後半45分に同点に追いつかれ、つかみかけていたホームでの勝利を逃してしまった。試合終盤にゴールを許し、勝ち点を失うのは今季9度目……。遠藤航の度重なる故障離脱が少なからず響いているのは確かだろう。一方、前節に負傷した三笘薫が欠場となったブライトンは、サンダーランドに1-0で辛くも勝利。BBCが「奇妙」と形容したゴールによる1点を守り切った。

悪夢のような場面が現実に…

 3月14日の土曜日は、かつて初めて訪れた2002年9月14日に、稲本潤一がフラムのトップ下として1ゴール・2アシストの大仕事をやってのけたサンダーランドの本拠地スタジアム・オブ・ライトに行き、翌15日の日曜日はアンフィールドへ出かけた。

 サンダーランド戦の前日会見で、ブライトンのファビアン・ヒュルツェラー監督が「スキャンの結果、異常は見当たらなかった」と語って出場を示唆した三笘薫だが、残念なことにベンチ外。さらにリバプール対トットナム戦には、当然ながら長期離脱中の遠藤航の姿はなく、先週は日本人選手をプレミアリーグのピッチで見ることが叶わなかった。

 リバプールの試合から一夜明けた3月16日月曜日の朝、首位アーセナルの「31」、7位ブレントフォードの「29」以外は、どのチームも消化した試合の数が「30」となっている順位表をじっと眺めてみた。

 もちろん初めに凝視してしまったのは、5位リバプールの14勝7分9敗、49得点・40失点の得失点差9という数字である。前日のトットナム戦でまたもや試合終了間際に同点弾を食らい、貴重極まりない勝ち点2を失ったところを目撃したからだ。

 つかみかけていた勝利を後半45分の失点で逃したアンフィールドでの失望を、どう伝えればいいだろうか。

 それもゴールを決められたのが元エバートンFWの憎きリシャルリソン。頼むからこいつにだけはアンフィールドでセレブレーションをさせるようなことは起こらないでくれ! リバプール・サポーターはそんな本音を抱えながら、同都市の宿敵ブルーズからロンドンの洗練されたトットナムに移籍しても、アンフィールドで敵意を剥き出しにして泥臭く戦う28歳ブラジル代表FWのプレーを見つめていたに違いない。

 ところがよりによって、そんな悪夢のような場面が現実となった。

「2点目を奪うチャンスは山ほどあった」

 試合後の会見で顔面蒼白だったアルネ・スロット監督がそう語ったように、ポゼッション63.3%とボールを支配し、そのなかでフロリアン・ヴィルツが相手の最終ラインと中盤の間のスペースでふわふわと漂いながら、素晴らしい縦パスやループパスを放ってチャンスを作り出した。本当にこのドイツ人は異質に見えた。緩急をつけたプレーが素晴らしく、幻想的にさえ見えた。

 そして17歳FWリオ・ングモハが、サポーターが待ちに待った先発出場を果たして左サイドに入った。立ち上がりこそ硬さも見えたが、徐々に本領を発揮して、かつてのモー・サラーが反対の右サイドで見せたように、エキサイティングでトリッキーな仕掛けを繰り返してチャンスを作った。

 リバプールの輝かしい将来の中核にこの2人がいるはずだと思った。

 ところがヴィルツとングモハの興奮は勝利を決定づける2点目につながらず、ゴールキックを起点にしたパワープレーで同点にされた。今季のリーグ戦で終盤に失点を喫して勝ち点を失ったのは、これで9試合目だ。

遠藤がいたら違う結末になっていたかもしれない

2月11日のサンダーランド戦で左足を痛め、手術を受けた遠藤は長期離脱中。このクローザー不在の状態で、試合終盤の失点癖を解消できるのか 【Photo by Shaun Brooks - CameraSport via Getty Images】

 悪夢の始まりは9月27日のクリスタルパレス戦。後半アディショナルタイム7分に、元アーセナルFWエディ・エンケティアにゴールを奪われて1-2負け。続く10月4日のチェルシー戦も、後半アディショナルタイム5分のエステバンのゴールで1-2負け。2度あることは3度ある。翌節のマンチェスター・ユナイテッド戦でも後半39分にハリー・マグワイアの一発を浴び、まるで呪いがかかっているかのようにリーグ戦3試合連続で悔しい敗北を喫した。

 4試合目は12月6日のリーズ戦。後半アディショナルタイム6分、田中碧の劇的な同点弾で3-3ドローに終わった。そして1月4日のフラム戦では、後半アディショナルタイム7分にハリソン・リードにゴールを決められて2-2のドロー。さらに1月24日のボーンマス戦では、後半アディショナルタイム5分にアミン・アドリにゴールをこじ開けられて2-3で敗戦。2月8日のマンチェスター・シティ戦は、後半アディショナルタイム3分のアーリング・ハーランドのPKで1-2の逆転負け。3月3日のウルバーハンプトン戦での1-2の負けも、後半アディショナルタイム4分のアンドレのゴールが明暗を分けた。

 そして今回のトットナム戦の1-1である。

 もちろん勝負事に“たら・れば”は禁物で、試合終了間際の失点で失った勝ち点を数えることにたいした意味はない。けれどもあえてここで、これらの9試合でしっかり逃げ切っていればと仮定すると、リバプールの戦績は17勝10分3敗の勝ち点61。2位マンチェスター・Cと勝ち点で並び、アーセナルがリードする優勝争いにぎりぎり踏みとどまっていることになる。

 と記しておいて、かなりの虚しさを感じてしまったが、来季の欧州チャンピオンズリーグ出場権を得られる4位以内を確保するためには、この先こうした悲劇的な勝ち点喪失を繰り返すのは御法度だ。

 しかしここまで追い詰められると、昨季は逃げ切りの展開でキーマンとなっていた遠藤の不在が本当に痛い。

 今回のトットナム戦を見てあらためて、リバプールの中盤の守備は物足りないと感じた。ヴィルツ、ライアン・フラーフェンベルフ、アレクシス・マック・アリスターの3枚はいまひとつ相手にプレッシャーをかけられていなかったし、いずれもボールを奪い取る技術は遠藤に遠く及ばない。

 中盤の底を横移動して最終ラインをしっかりプロテクトする、守備に特化した日本代表主将がいたら、リシャルリソンの同点ゴールにつながったロングボールの競り合いで、フィジカルが弱くなったアンディ・ロバートソンをしっかりサポートして、違う結末になっていたかもしれない。 

 頼りになるクローザーの遠藤抜きで、残留争いに巻き込まれているトットナムの反撃を食らったように、目標のある相手が一段と勝ち点にしがみつくシーズン終盤、失点癖が魔法のように治るのだろうか。

 もしも精神的なダメージも大きい試合終盤に失点するパターンを止められず、昨季王者が欧州チャンピオンズリーグ出場権を逸するようなふがいない結果となれば、スロット解任のシナリオが加速してしまうのは自明の理となる。

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2025-26で25シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル30年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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