「前回大会と比べれば、投手力は明らかに落ちていた」WBCを取材した3人の外国人記者が侍ジャパンの敗因を分析
では、今大会の日本代表を海外メディアはどう見たのか。史上初めて準決勝進出を逃したチームの敗因はどこにあったのか。WBCを現地取材した3人の外国人ジャーナリストに、ディベート形式で総括をしてもらった。パネリストはMLBのオフィシャルサイト『MLB.com』のマイケル・クレア記者(アメリカ)、アメリカの全国紙『USA TODAY』のボブ・ナイチンゲール記者(アメリカ)、そしてベネズエラのベースボール専門サイト『El Extrabase』のダニエル・アルバレス・モンテス記者(ベネズエラ)だ。
スカウトたちが予想した通りの展開に
クレア記者 点の取り合いになったという意味でも、すごく面白い試合だった。2024年と25年のナ・リーグMVP大谷翔平と、同じく23年のMVPアクーニャJr.による先頭打者ホームランが2本も出た。そんなことはベースボール史上でも起きたことがない。
素晴らしいゲームの入りで、日本代表が3回に怪我の鈴木誠也に代わって途中出場の森下翔太が劇的な勝ち越しホームランを放てば、ベネズエラも6回にウィリヤー・アブレイユが再逆転の3ランをお返しするなど、とにかく見せ場が多くて盛り上がった。純粋なファン目線で見ても、何度もリードが入れ替わり、大物選手が一発を放ち、しかも最後のアウトが大谷と、ドラマ性に溢れた本当にいい試合だったと思う。
ナイチンゲール記者 私もいいゲームだったと思うよ。実は、試合前にスカウトたちと話をしていたんだけど、彼らが予想した通りの展開になった。彼らは「日本のブルペンは十分じゃないからベネズエラが勝つ」と言っていたんだ。ベネズエラのブルペンがあそこまで良かったのは少し驚きだったけどね。でも、多くの人が「ベネズエラが勝つ」と思っていたのは確かで、実際にその通りになった。
モンテス記者 ベネズエラは勝ち方が良かったよね。鮮やかな逆転劇だったし、ベネズエラの国民性でもある“粘り強さ”を見せた試合だった。なにより投手起用がハマったし、オマー・ロペス監督が日本の強力打線を封じるために描いたゲームプランも見事だったと思う。あれはまさに“マスタークラス”と言える采配だった。もちろん打線の活躍も素晴らしかったけれど、日本打線を抑え込みながら、あそこまで投手陣をうまくマネジメントできたことが一番の勝因だったと思う。
菊池雄星をもっと早くに出す手もあった
クレア記者 山本由伸が想像以上に苦しんだのは日本にとって誤算だった。失点は2つだけだったとはいえ、彼が長いイニングを投げられなかったことで、ブルペンに負担がかかった。
それと伊藤大海が、残念ながらこの試合に限らず大会を通して良くなかった。私は彼をとても高く評価しているし、ピッチングスタイルも好きなんだけど、今回はうまくいかなかった。3点ビハインドの9回に菊池雄星が出てきたけれど、もっと早くに彼を出す考えはなかったのか、とも思った。
試合後、ベネズエラの選手に話を聞いたら、流れを変えたのは5回に飛び出したマイケル・ガルシアの2ランだったと言っていた。逆転弾ではなく、1点差に詰め寄った一発だ。あれで“まだいける”と思ったらしい。ガルシア、そして3安打のエセキエル・トーバーと、スターの中のスターというわけではない選手たちがいい働きをした。結局この試合は、日本の投手陣がベネズエラ打線を抑えきれなかったことに尽きると思う。
ナイチンゲール記者 やはり明暗を分けたのはブルペンだ。ベネズエラはブルペンが6回1/3を無失点で抑えたのに対して、日本は救援陣が打ち込まれてしまった。そこが一番の大きな違いだった。鈴木の負傷は日本にとって確かに痛かっただろうけど、代わりに登場した森下がホームランを打っているからね。だから結局は、ブルペンの差だと思う。
モンテス記者 そうだね。先発のランヘル・スアレスは良くなかったけれど、森下に逆転3ランを許した後の3回途中に出てきたエドワルド・バサルドが、ツーベースを許しながらも追加点を与えなかったことが大きかった。そして、その後に出てきたエマニュエル・デヘススがリリーフで素晴らしい投球をした。彼の働きも非常に重要だった。さらに7回には、左腕のアンヘル・セルパが大谷を見逃し三振に打ち取っている。
もちろん打線も、プールラウンド(1次ラウンド)最終戦のドミニカ共和国戦で見せたような粘り強さ(敗れはしたが9回裏に2点差まで詰め寄る)をこの試合でも発揮したけれど、リリーフ陣が日本打線を封じ込めたことが一番のポイントだったということに、異論を挟む余地はないと思うよ。