佐藤輝明ブレークの裏にあった「バットドロップ」 大谷のスイングは究極の「ハイブリッド型」に
「現代野球を“見える化”する 最先端のデータ分析と戦略」から一部抜粋して公開します。
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重要な技術「バットドロップ」
これは、「バットドロップ」とも表現される重要な技術であり、スイングの初動でバットのヘッドが体から離れていくと、いわゆる「ドアスイング」になりやすい。
振り出しのポイントは、バットの重心をどこに置くかにある。バットを振り出す際に、重心をできる限り、体の近くに置いておきたい。その状態で体が回旋していけば、バットの重さをいい意味で感じることなく、ボールを捉えたい場所までスムーズにバットを運ぶことができる。「インサイドアウト」と呼ばれる技術であり、打ちたいところに素早くバットを出せるかは、試合での結果に大きく関わっていく。
コツとしては、バットの重さに身を任せて、トップの形からバットを落下させることにある。ここで自分の力で何とか振ろうとすると、余計な力みが加わることになる。
ここ1〜2年で、振り出しがコンパクトになったのが、侍ジャパンにも選出された佐藤輝明選手(阪神)である。以前までは「遠くに飛ばしたい」という気持ちが全面に出ていて、どうしても後ろが大きなスイングになっていた。それが、100%の力を入れなくても、芯で捉えれば遠くに飛ばせることがわかったのか、コンパクトな振り出しに改善されている。その結果として、低めのボールになる変化球の見極めがよくなり、打つべきボールを絞れるようになった。2025年は40本塁打、102打点で二冠を獲得。さらに、リーグトップのOPS.924をマークした。
レッドソックスでプレーする吉田正尚選手も、豪快なスイングが目につくが、注目してほしいのはトップからの振り出しにある。バットの重力を生かして、コンパクトに振り下ろしている。振り出しが小さいからこそ、大きなフォロースルーを取ることができる。日本では投手指導においても、「後ろ小さく、前大きく」という言葉が以前から存在するが、その意味はここにある。
補足として、ボールを捉えている局面だけ取り出すと、アッパー軌道に見えるが、各打者に振り上げている意識はさほどないのではないか。投球の高低にアジャストするために、お尻から背中にかけた上体の角度を変えているだけであって、その角度が深くなれば、自然に振り上げるようなスイング軌道になる。決して、腕だけでスイング軌道を作っているわけではないことを付け加えておきたい。
縦振りに存在する「二峰性」
何をもって、縦振りか横振りかは意見が分かれるところだが、科学の世界では「縦振りは二峰性」「横振りは一峰性」と分類される。次ページの『横振りと縦振りのバットの回転速度と軌道』を見てもらうとわかりやすい(横軸の左から右にかけて、スイングが行われている)。
横振りはインパクトに向けて、徐々にバットの回転速度が上がっていくが、縦振りは回転速度が上がる山が2度ある【図18参照】。
なぜ、この違いが生まれるのか。横振りは背骨を中心にした軸回転で、平面上にバットを振るため、体幹の回転とともにバットが加速していく。元ヤクルトの青木宣親選手のスイングを思い出すと、イメージがつきやすいのではないか。一方の縦振りは、トップからバットを落下させる勢いを使いながら、バットを振り上げていくため、2つの山を描く「二峰性」になる。
それぞれの特徴をまとめると、次のようになる。
●横振り
回転速度が一峰性/バットを早めに寝かせる/胸郭の横回転を大きくミートポイントが前後に広い/バット(手首)を返す動きが入る
↓ライナー性の打球、逆方向の安打に期待
●縦振り
回転速度が二峰性/バットを立てた状態からスイング/胸郭の縦回転を大きくミートポイントは狭い/手首は返さない
↓フライを打ちやすい、逆方向の長打に期待