DH制導入で高校野球はどう変わる? 強豪校の監督が考える新制度活用法

大利実

今春センバツの優勝候補に挙がる山梨学院の吉田監督(左)や横浜の村田監督(右)は、DH制をどのように活用しようと考えているのか 【写真は共同】

 今春の公式戦から指名打者制(DH制)が採用される高校野球。3月19日に開幕するセンバツが、新ルール導入後の最初の全国大会となる。導入の背景には、「出場機会の創出」「ピッチャーの健康対策の推進」などがあり、加盟校は紅白戦や練習試合でDH制を最大限に活かす戦い方を試している。DH制により、高校野球はどのように変わるのか――。現場の指揮官、さらに選手の声を紹介したい。

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リリーフ登板に備えて守備中にピッチング練習ができる

投打とも注目される山梨学院の菰田。大谷のように先発登板し、降板後はDHとして打撃に専念することも想定できる 【写真は共同】

「メリットしかないと思います」

 そう語るのは、山梨学院の吉田洸二監督だ。5年連続出場となるこの春のセンバツでは、優勝候補の一角に挙がる。エースで4番を務めるのが、投打両面で注目を集めるドラフト1位候補の菰田陽生だ。

「たとえばですが、菰田がリリーフするときに、今までであればファーストの守備からマウンドに向かっていました。仮に、菰田をDHで起用すれば、味方の守備中に十分なピッチング練習をすることができます。しっかりと準備したほうがいいタイプなので、より力を発揮できる環境になったと言えます」

 菰田が先発する場合は、いわゆる「大谷ルール」も視野に入れている。1人の選手がDHと投手の両方を担い、投手を退いたあとにもDHとして試合に出場できるルールだ。ただし、投手に戻ることはできず、再登板は認められない。このあたりの采配は難しいところだ。

「菰田はファーストの守備がうまいので、いろんな起用法を考えてはいます。疲労度を考慮すると、春と夏でもまたDHの考え方が変わってくるかもしれません」

 DH制が導入されても、「何も変わらない」と言い切るのが、練習のスタイルだ。

「DH候補であっても、守備や走塁練習は今までと変わらずにやります。大学から先の野球を考えたときに、打つだけでは厳しいですから。走攻守すべての可能性を広げていくことは、これからも大事にしていきます」

「お前にはDHがあるんだぞ!」

横浜にはレギュラー陣以外にも好打者が多いが、古畑はDHの有力候補の1人。甲子園の大舞台で持ち前の打力を発揮したい 【大利実】

 史上4校目のセンバツ連覇を狙う横浜。昨年は投打に優れた奥村頼人(ロッテ)がいたが、今年はそこまで打てる投手がいないため、センバツではDHを使う予定だ。

 村田浩明監督はDH制をどう見ているか。

「メリットしかないと思っています。ピッチャーが打席に入ったときや走者になったときの怪我のリスクを減らせるのが大きいですよね。バントで爪をつめたり、走塁で足を痛めたり、夏になれば熱中症のリスクもあります」

 投手が走者として塁上に残ったあと、ピッチングのリズムが崩れることがあるが、DHを使えばその心配もなくなる。ただ、試合展開を見ながら、DHを解除することも考えているという。

「ピッチャーで使っていた織田(翔希)を外野に残して、再登板に備えることは考えています。それもあって、投手陣のバントやバッティング練習はそこまで減らしていません」

 DH候補に挙がるのが、バッティングが売りの大山結永、下谷幸矢、古畑雄大の3人だ。古畑のポジションはファーストだが、ファーストには主将で中軸を打つ小野舜友がいるため、これまで出場する機会がなかなかなかった。

「去年の秋にDH制ができると知ったときは、自分にとって大きなチャンスだと思いました。でも、秋の県大会ではベンチに入れたんですけど、関東大会ではメンバー外。気持ちがかなり落ちて、正直どん底でした」

 そんな古畑の姿を見て、熱い言葉をかけたのが村田監督だった。12月初旬の練習後、監督室でおよそ30分にわたって想いを伝えた。

「監督さんから『お前にはDHがあるんだぞ。バッティングを本気で極めてみろ』という言葉をいただいて、目が覚めました。性格的に控えめな自分のことも本気で叱ってくれて、本当にその日から変わろうと思えました」

 自宅からの通学生だが、土日は朝6時半から、平日の朝も学校で打ち込むようになった。2月末、センバツに臨むメンバー発表では背番号「19」を勝ち取り、「すぐに家族に報告します」と笑顔を見せた。

 父親は、PL学園、亜細亜大出身の古畑和彦氏。「松坂世代」の1人であり、高校3年時には春夏ともに横浜と激闘を繰り広げた。

「父が活躍した甲子園で、自分もチームの勝利につながるヒットを打ちたいです」

 DH制によって、こうして光を浴びる選手が全国各地にいることだろう。

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著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

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