DH制導入で高校野球はどう変わる? 強豪校の監督が考える新制度活用法
※リンク先は外部サイトの場合があります
リリーフ登板に備えて守備中にピッチング練習ができる
そう語るのは、山梨学院の吉田洸二監督だ。5年連続出場となるこの春のセンバツでは、優勝候補の一角に挙がる。エースで4番を務めるのが、投打両面で注目を集めるドラフト1位候補の菰田陽生だ。
「たとえばですが、菰田がリリーフするときに、今までであればファーストの守備からマウンドに向かっていました。仮に、菰田をDHで起用すれば、味方の守備中に十分なピッチング練習をすることができます。しっかりと準備したほうがいいタイプなので、より力を発揮できる環境になったと言えます」
菰田が先発する場合は、いわゆる「大谷ルール」も視野に入れている。1人の選手がDHと投手の両方を担い、投手を退いたあとにもDHとして試合に出場できるルールだ。ただし、投手に戻ることはできず、再登板は認められない。このあたりの采配は難しいところだ。
「菰田はファーストの守備がうまいので、いろんな起用法を考えてはいます。疲労度を考慮すると、春と夏でもまたDHの考え方が変わってくるかもしれません」
DH制が導入されても、「何も変わらない」と言い切るのが、練習のスタイルだ。
「DH候補であっても、守備や走塁練習は今までと変わらずにやります。大学から先の野球を考えたときに、打つだけでは厳しいですから。走攻守すべての可能性を広げていくことは、これからも大事にしていきます」
「お前にはDHがあるんだぞ!」
村田浩明監督はDH制をどう見ているか。
「メリットしかないと思っています。ピッチャーが打席に入ったときや走者になったときの怪我のリスクを減らせるのが大きいですよね。バントで爪をつめたり、走塁で足を痛めたり、夏になれば熱中症のリスクもあります」
投手が走者として塁上に残ったあと、ピッチングのリズムが崩れることがあるが、DHを使えばその心配もなくなる。ただ、試合展開を見ながら、DHを解除することも考えているという。
「ピッチャーで使っていた織田(翔希)を外野に残して、再登板に備えることは考えています。それもあって、投手陣のバントやバッティング練習はそこまで減らしていません」
DH候補に挙がるのが、バッティングが売りの大山結永、下谷幸矢、古畑雄大の3人だ。古畑のポジションはファーストだが、ファーストには主将で中軸を打つ小野舜友がいるため、これまで出場する機会がなかなかなかった。
「去年の秋にDH制ができると知ったときは、自分にとって大きなチャンスだと思いました。でも、秋の県大会ではベンチに入れたんですけど、関東大会ではメンバー外。気持ちがかなり落ちて、正直どん底でした」
そんな古畑の姿を見て、熱い言葉をかけたのが村田監督だった。12月初旬の練習後、監督室でおよそ30分にわたって想いを伝えた。
「監督さんから『お前にはDHがあるんだぞ。バッティングを本気で極めてみろ』という言葉をいただいて、目が覚めました。性格的に控えめな自分のことも本気で叱ってくれて、本当にその日から変わろうと思えました」
自宅からの通学生だが、土日は朝6時半から、平日の朝も学校で打ち込むようになった。2月末、センバツに臨むメンバー発表では背番号「19」を勝ち取り、「すぐに家族に報告します」と笑顔を見せた。
父親は、PL学園、亜細亜大出身の古畑和彦氏。「松坂世代」の1人であり、高校3年時には春夏ともに横浜と激闘を繰り広げた。
「父が活躍した甲子園で、自分もチームの勝利につながるヒットを打ちたいです」
DH制によって、こうして光を浴びる選手が全国各地にいることだろう。