今井達也は“今のトレンドに乗った”投手 MLBで注目される数値VAAとは?
「現代野球を"見える化"する 最先端のデータ分析と戦略」から一部抜粋して公開します。
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本塁上の投球角度に着目する
フライボール革命の流行とともに、その攻略法としてMLBで広まったのが「高めのフォーシーム(ストレート)」だ。スイング軌道を考えたとき、高めにホップ成分の強いストレートを投げ込めば、バットとボールが当たる接点が狭くなる。長らく、野球界のセオリーとして「低めが基本」と言われていたが、決してそうではないという考えになっている(とはいえ、山本由伸投手のようにアウトローに確率よく投げ込める投手は打たれにくいのも事実)。
ここ数年、MLBで重視されている指標のひとつに「VAA」がある。Vertical approach angleの略で、本塁上での投球角度を表している。これも、ホークアイの出現によってわかるようになった指標だ。0度が地面と平行の関係で、マイナスになれば斜め下方向に落ちていく軌道となる。当然、マウンド上の高い位置から座っている捕手に投げ込むため、マイナスの角度になり、MLBの平均はマイナス4〜7度。この平均値よりもマイナスの角度が浅ければ、打者にとっては浮き上がって見えるボールになる。
今、VAAの数値で注目を集めているのが、アストロズのリリーフ左腕、ジョシュ・ヘイダー投手である。サイドスローに近いスリークォーターで、VAAはマイナス3・82度。MLBの平均値から外れている。この角度で、ホップ成分が多いストレート(握りはツーシームだが、回転はフォーシームになっている特殊性を持つ)を投げ込むスタイルで、投球イニングよりも多い三振を取る。2024年は71イニングで105三振、2025年は52回2/3で76三振を奪っている。
理想はライズボールの軌道
MLBで高めのストレートが流行っているのは、ストライクゾーンも関係している。MLBはNPBよりも高めに広い。「広い」というよりも、ルールブックに書かれた「肩の上部とユニホームのズボンの上部の中間点」を順守していると言ったほうが正確だろうか。この背景には、第1章で紹介したトラッキングシステムを活用した審判技術の向上がある。
NPBが高めのゾーンを取り始めたら、バッテリーの攻め方はガラッと変わるだろう。ただ、MLBよりもフライボール革命は浸透していないため、高めのストレートがどれだけの効果をもたらすかは未知数なところがある。
2026年からアストロズでプレーする今井達也投手は、今のトレンドに乗った投手と言える。低いリリース位置から、浮き上がるようなストレートが武器。詳しい数字は計れないが、映像で見る限りはシュート成分が強く、それもまた今井投手ならではの特徴となる。
私の若い頃を振り返れば、西武で活躍していた郭泰源投手が今井投手に似たようなタイプだった。あの時代にボールトラッキングの技術があれば、郭投手のすごさをもっと客観的に評価できたはずだ。
何となく、速球派=オーバースローのイメージがあるかもしれないが、速いボールを投げる投手の多くはスリークォーターである。腕の位置がオーバーよりもやや低い。かつてのランディ・ジョンソン投手もこのタイプだった。スリークォーターのほうが、腕の内旋を強く効かせることができるのがその理由だ。
腕の内旋を生かした投げ方は、シンカー系のボールを得意にする傾向がある。内野手のスナップスローのように、ヒジから先を“ビシュン!”と走らせるようなイメージだ。
一方で、フォークのように手首を立てて、かつロックしながら投げることは不得意で、MLBでフォークの使い手がほとんど出てこないのはこうした投げ方も関係している。フォークを「投げない」のではなく、「投げられない」と言ったほうがいいだろう。
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