攻め切った銀メダル 恐怖を乗り越え、村岡桃佳が見せた執念の大回転
恐怖との戦い――指導者が見た王者の葛藤
石井氏は大会本番までの時間を振り返った。
「心が折れそうな場面はけっこうありました。怖いという気持ちが強くて、今までにない桃佳だった。けがをしないでトレーニングを積めていたら、(今日の大回転では)確実に勝てていたと思う。でも恐怖心がある中でよく頑張った」
指導者の言葉には、結果以上の価値が込められていた。
村岡自身も、この大回転にすべてを懸けていたという。
「今日はもう、転倒して(けがをして)、またヘリに乗ってもいいから、フルアタックしようと思っていました」
勝ち切ることへの覚悟。その覚悟が、銀メダルという結果に結びついた。
王者の挑戦はまだ終わらない
「得意種目なので一番いい色のメダルが良かった。でもメダルを取れたことは自信につながると思います」
今大会、日本にとって2個目のメダル。
そして村岡にとっては、パラリンピック通算メダル数で大日方団長を上回る11個目のメダルとなった。
「今大会で超えてくれることを望んでいたので良かった。さらに記録を伸ばしていってほしい」と大日方団長は笑顔で語る。
残る種目は回転。村岡にとって得意とは言えない種目だ。
「回転はあまり得意ではない種目だが、ここまでたどり着けたパラリンピックの集大成としてベストを尽くしたい」
三大会連続の大回転種目での金メダルという夢は叶わなかった。 それでも村岡の言葉は、どこまでも前向きだった。
「悔しいです! けど仕方がないので出直します!(笑)」
コルティナの山に村岡が残した爪痕、日本のアルペンの歴史に刻まれた銀メダルは、王者の意地と覚悟を物語っていた。
(取材・文:太田奈々海/スポーツナビ)