苦しみながらつかんだアジア8強 町田は「試行錯誤」から抜け出せるのか?

大島和人

町田はGK谷晃生(右)の奮闘もありACLEベスト8進出を決めた 【(C)J.LEAGUE】

 日本から参加した3クラブの明暗が分かれた。そんなAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)2025/26のラウンド16第2戦だった。

 3月10日(火)に戦ったFC町田ゼルビアは江原FCを1-0で下し、2戦合計1-0でベスト8入りを果たした。11日(水)に試合をしたヴィッセル神戸もFCソウルを退けて勝ち上がりを決めた。サンフレッチェ広島はジョホールを1-0で下したものの、第1戦との合計スコアが2-3で及ばず敗退している。

 ACLEのリーグステージとラウンド16は、アジアを東西に分けて開催されている。西地区のラウンド16は中東情勢の悪化に伴い全試合が延期された。今後の状況を注視する必要はあるが、準々決勝以降の「ファイナルズ」はサウジアラビア・ジッダで4月17日から開催される予定だ。

見えにくくなっている町田の特徴

 町田は2024年の昇格初年度にJ1で3位に入り、今大会の出場資格を得ていた。新興クラブがリーグステージを首位で突破し、アジアの8強に勝ち上がったのだから、それは偉業に違いない。

 一方でチームを見るとずっと「もがき続けている」印象もある。町田はどういうチームか、町田のサッカーとは何か、定まっているようで定まっていない。

 町田に関する分析として「勝負にこだわっている」「徹底されている」といった表現をよく目にする。しかし今の町田はそれがピンとこない。試合を見ると75分以降の失点が多く、また2026年のJ1百年構想リーグでは4試合のうち3試合で複数失点を喫している。黒田剛監督は無失点へのこだわりを常々口にしていて、2024年のJ1は実際にリーグ最少失点を記録していた。今はそれが崩れかけている。

 昨季と今季は試合中の走行距離、スプリントの本数といったハードワークの指標も相手を下回ることが多い。初年度の強みだったクロス対応も、今季は課題になっている。

 1試合、1プレーを切り取って「町田は荒い」「激しい」と言いたがるファンは今も多い。ただ今季のデータを見るとファウル総数、カードの枚数はJ1の平均より少ない。アクチュアルプレーイングタイムは逆にJ1の平均より長い。

 2025年の天皇杯制覇も含めて、一定レベル以上の結果は出ている。確かに補強に成功して個のクオリティは上がった。ボールを持てるようにはなったし、チームの引き出しも増えた。ただ、いい意味でも悪い意味でも、町田の特徴が見えにくくなっている。

 10日の江原FC戦は1-0と勝利したが評価の難しい、苦戦と言い得る内容だった。町田は25分に中村帆高のヘディングシュートで先制している。しかしその後は厳しい流れが続き、49分にはキムテウォンの連続シュートをGK谷晃生が辛うじてブロックする大ピンチを迎えた。後半アディショナルタイムにはペナルティエリア内のハンドを巡ってVARが入り、サポーターは肝を冷やした。

重い展開も無失点で守り切る

町田は中村帆高(左)のゴールで勝ち切った 【(C)J.LEAGUE】

 町田が「半歩」でも前進した試合だったことは間違いない。今季のJ1百年構想リーグは第3節まですべて2失点を喫したチームが、江原FCとのホーム&アウェイは無失点で切り抜けた。守護神の奮闘や、若干の運があったとはいえ、堅守は取り戻されつつある。

 ボランチ白崎凌兵は守備の修正をこう説明する。

「自分の見ていたイメージで言うと、相手の出入りと『パス&ラン』についていけないときは、かなりピンチになっていました。奪いに行くところは行かなければいけないけれど、ランニングを捕まえるところは意識してやれました」

 前から圧をかけて高い位置でボールを奪えれば、守備として理想だ。一方で江原戦の町田は特に後半、後ろに重心のかかった戦い方をした。ディフェンスラインの背後を突くロングボールにも、集中力を保ち、崩されず耐えた。シュートブロックなど球際で身体を張る、いい意味での「町田らしさ」も出せていた。

 「割り切って守った」「守勢を選択した」とまでは言えないだろう。それでも混乱は起こしていなかった。

 キャプテンの昌子源は振り返る。

「先制点を取ったら取った方が防戦になることは、何となくですけどイメージできるじゃないですか。割と早い段階で2点目を取りに行くのでなく、もう『信じろ、守れ』という雰囲気になっていました」

 白崎はこう口にする。

「点を取ったとき、もちろんリスクは冒せません。感覚的に一人ひとりが(パスを受けるための)ポジションを取るより、ロングボールを入れることを想定した体勢で前に出て、そうなるとボールが回らなくなります。トレーニングではもっとボールが動いて、いい形の連係も出ていました。そういったところを出せれば、もっと自分たちの良さを出せる場面を作れたのかなとは思います」

 セカンドボールに備えた位置取りをするか、パスを受けに行くのか、そこは繊細な判断だ。第三者がどちらかを「正解」とは決められない。ただ谷も後半にあった最終ラインからのパスミス、キックミスについてこう分析していた。

「ホルダーに対してのサポート、ボールを持ったときの手助けになれる選手が少ないことは感じます。守勢になる中で『失いたくない』『ミスしたくない』というのは誰しもが思うものですが、パスコースが一つしか無いと相手も狙いやすい。2つ3つ作ってあげる、そういうサポートは必要なのかなと思います。必ずしもキックミスした選手だけの責任ではありません」

 町田にとって、リードした状況の試合運びは悩ましいジレンマだった。「ボールを動かしながら試合をコントロールする」ことができれば理想だし、チームとしてはそこを目指している。一方で足元を見ると複数失点の試合が続いていて、選手のマインドは慎重になる。その中で10日の江原FC戦はある種の妥協、落としどころとして受動的に受け入れた試合運びだった。

1/2ページ

著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、バレーボール、五輪種目と幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント