新時代のF1に新ヒーロー誕生か? ラッセルvs.ルクレール、一騎打ちの予感

柴田久仁夫

苦節7年のラッセル、苦節8年のルクレール

3位表彰台に上がったルクレールの表情は、決して晴々としたものではなかった 【(C)ScuderiaFerrari】

 ということで今季はタイトル争いの顔ぶれが、大きく変わるだろう。チャンピオン最右翼には、期待も込めてラッセルとルクレールの二人を挙げたい。いずれも次代を担う逸材と高い評価を受けながら、勝てるマシンに恵まれず、長く下積みの時期を過ごして来た。

 ラッセルは下位カテゴリーから頭角を現し、2018年にはノリスとの戦いを制してF2チャンピオンに輝いた。しかし、ノリスが翌年マクラーレンからすんなりF1デビューできたのに対し、ラッセルはシート獲得に難航。1年浪人の危機に瀕すると、自らチーム代表へのプレゼンを申し入れ、ウィリアムズとの契約にこぎつけたのは有名なエピソードである。

 だが、かつての名門ウィリアムズも、当時は予選Q1敗退が続くどん底状態。ラッセル自身も初ポイント獲得はデビュー3年目だった。それでも腐らず完走を続け、チームメイトを凌ぐ速さを見せたことが評価され、2022年にチャンピオンチームのメルセデスへの移籍を果たした。ただ、この年から導入された「グランドエフェクトカー」への技術対応にチームは完全に失敗し、ラッセルも何度か勝利はあげたものの、不遇の数年間を過ごすことになった。

 ルクレールもF1でのここまでのキャリアは、決して平坦なものではない。ラッセル同様、F2チャンピオンの称号を引っ提げ、2018年にザウバーからF1デビュー。故セルジオ・マルキオンネCEOの強い引きもあって、2年目には早くもフェラーリに昇格した。

 移籍初年度から最多ポールポジションを獲得。レースでも2勝を含む10回の表彰台に上がり、チームメイトの元世界チャンピオン、セバスチャン・ベッテルをはるかに凌ぐ活躍を見せた。しかし2年目以降はフェラーリマシンの戦闘力不足、お粗末なレース戦略やトラブル、そして自身のミスも重なり、結果の出せないシーズンが続いた。2022年からは毎年ドライバーズ選手権上位に名を連ねるものの、タイトル争いにはずっと無縁だった。

 キャリアの歩みは違うが、この二人には共通点がある。若くして天才と呼ばれながら、「主役になれない時間」を長く過ごしてきたことだ。

最後に笑うのはラッセルか

復調の兆しが見えるハミルトン(写真右)もルクレールの手強いライバルになりそうだ 【(C)ScuderiaFerrari】

 その意味では、去年の選手権1、2位を占めたノリス、フェルスタッペンがやや精彩を欠く今季は、ラッセル、ルクレールにとって大きなチャンスの1年となりそうだ。もちろんまだ初戦を終えたばかりであり、勢力図は今後どんどん変化していくことだろう。何より二人がすんなりチャンピオンになるには、あまりにライバルが多い。

 マクラーレン、レッドブルがアップデートを繰り出して戦闘力を上げることに成功すれば、ノリス、フェルスタッペンだけでなく、オスカー・ピアストリ、イザック・アジャも優勝争いに加わってくるだろう。ラッセルとルクレールにとっては、同じマシンを駆るチームメイトも、かなり手強い身内の敵である。デビュー2年目のアントネッリは成長著しいし、ハミルトンもフェラーリ1年目の去年とは打って変わって、レースすることの喜びを隠さない。

 それでもラッセルとルクレールが頭ひとつ抜け出して、一騎打ちを繰り広げるのではないか。最後は総合力に優れるメルセデスのラッセルがルクレールを抑えて、初タイトルを獲得するのでは、というのが現時点での僕の見立てだ。

 果たして新たなヒーローが誕生するのか。2026年シーズンは、その瞬間を目撃する一年になるかもしれない。

(了)

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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