新時代のF1に新ヒーロー誕生か? ラッセルvs.ルクレール、一騎打ちの予感

柴田久仁夫

F1が生まれ変わった!

新時代のF1開幕戦をポール・トゥ・フィニッシュで制したジョージ・ラッセル 【(C)MercedesF1】

 F1が、こんなにも迫力満点のスポーツだったとは!

 F1の今季開幕戦オーストラリアGPを観戦して、そんな感想を抱いた人も少なくなかったと思う。今季初レースは、それほどに見応えのあるものだった。去年までは、前の車より明らかにペースが速くても、抜きあぐねて数珠つなぎになったまま推移する、そんな光景が普通だった。ところが今年は、いたるところで抜きつ抜かれつのバトルが繰り広げられ、一瞬も目が離せなかった。

 とりわけスタート直後は、4番手のシャルル・ルクレールが驚異的なダッシュで一気にトップに。その後はポールシッターのジョージ・ラッセルと、毎周のように首位が入れ替わる緊迫の戦いを見せてくれた。その後方でも、7番グリッドのルイス・ハミルトンが4台をごぼう抜きにして3番手に躍進するなど、見ていて実に楽しい展開だった。

 それを可能にしたのが、今季大きく変わったF1マシンである。まずパワーユニットだが、1500ccターボ+電気モーターのハイブリッドという基本構造は同じながら、エンジンと電気の出力比が、去年までの4対1から5対5へと、電動比率が大幅に上がった。それに伴い、先行車の1秒以内に迫ると、追加パワーが使える「オーバーテイクモード」が導入された。

 車体も乱流の影響を受けにくいデザインになり、先行車に近づきやすくなった。車体のサイズも全長で30cm、全幅で10cm短くなり、重量も30kg軽量化されたことで、より軽快かつ接近した戦いができるようになった。「迫力と見応えのあるレースにしたい」というF1側の狙いが、どんぴしゃり当たった形だ。

 そしてこの新しいF1は、もう一つの変化を予感させた。長く主役を務めてきたドライバーたちに代わり、新しいヒーローが誕生するかもしれない、ということだ。

大きく変わった勢力図

メルセデスのラッセルとフェラーリのルクレールは、抜きつ抜かれつの壮絶バトルを繰り広げた 【(C)MercedesF1】

 開幕戦は、メルセデスのラッセル、キミ・アントネッリのコンビが、1、2位を独占した。予選でも二人はフロントローを占め、ラッセルは3番手以下にコンマ8秒近い大差をつけた。事前の下馬評通り、今季はメルセデスが最強であることは間違いなさそうだ。特にラッセルの速さは際立っていた。

 しかしフェラーリも負けていない。予選一発の速さではメルセデスに大差をつけられ、レースでも彼らのペースにはついていけず3、4位に終わった。しかし戦略が機能していれば、ルクレールは2位表彰台に上がっていた可能性はある。総合力でやや劣るとはいえ、メルセデスにしっかり食いついているといえる。

 一方で、去年まで優勝争いの常連だったマクラーレンとレッドブルは、出遅れている印象だ。新チャンピオンのランド・ノリス、彼と去年最終戦までタイトルを争ったマックス・フェルスタッペンが、開幕戦は5位、6位が精一杯だった。それを見る限り、上位勢はメルセデス、フェラーリの2強。一歩遅れてマクラーレン、レッドブルという状態が、少なくともシーズン前半は続くのではないか。

1/2ページ

著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント