【月1連載】ブンデス日本人選手の密着記

4年前までJ3の安藤智哉、ブンデスリーガで定位置を確保 27歳のCBが“デンジャー”と呼ばれるようになった分岐点

林遼平

J3の今治からじわじわとステップアップし、27歳にしてブンデスリーガにたどり着いた安藤。下位カテゴリーで研鑽を積む日本人選手の大きな希望だ 【Photo by Selim Sudheimer/Getty Images】

 堂安律、伊藤洋輝、町田浩樹、町野修斗、佐野海舟など、多くの日本人プレーヤーが在籍するドイツ・ブンデスリーガ。彼らの奮闘ぶりを、現地在住のライター・林遼平氏が伝える月1回の連載が、この「ブンデス日本人選手の密着記」だ。2025-26シーズンの第7回は、今冬にザンクトパウリに加入した安藤智哉が主役だ。ほんの4年前までJ3で戦っていた男が、いまやブンデスリーガで堂々とスタメンを張って戦っている。初めての海外移籍で言葉の壁もあるなかで、27歳の大型センターバックはいかにして飛躍のきっかけをつかんだのか。

加入から約2カ月でデンジャーな存在に

 昨今の日本サッカー界において、選手が若くして海を渡る状況はもはや日常になってきた。Jリーグを経由せずに海外へと向かう者も、決して少なくない。

 こうして10代や20代前半での移籍が当たり前となる中で、今冬の移籍市場で安藤智哉が下した決断は際立っていた。4年前までJ3でプレーしていた選手が、27歳でブンデスリーガに足を踏み入れる。そう聞いて、すぐに信じられる人がどれだけいるだろうか。

 移籍先は藤田譲瑠チマらが在籍するザンクトパウリ。残留争いの真っ只中にいるチームは、J3のFC今治、J2の大分トリニータ、J1のアビスパ福岡とJリーグの各カテゴリーで揉まれ、酸いも甘いもかみ分けてきた安藤を、即戦力になり得る存在として今年1月に獲得した。交渉段階においては、オンラインミーティングでアレクサンダー・ブレシン監督自らが熱意を示すなど、クラブの本気度が窺える補強だった。

 加入から約2カ月。ザンクトパウリの最終ラインには、すでに主力として躍動する安藤の姿がある。ブンデスリーガの屈強なFWに対して厳しい球際の守備を見せれば、武器の1つであるビルドアップでも確かな力を披露するに至っている。

 チーム内の評価も上々で、チームメイトから「デンジャー」というニックネームを付けられるなど、存在感は日増しに高まっている。

 ちなみに『ハンブルガー・モーゲンポスト』は「デンジャー」の由来について、“常にボールを追いかけて大抵の状況を打開する”というプレースタイルに基づくものと考察しているが、その真意はチームの面々のみぞ知る。ただ、少なくとも安藤が対戦相手にとって危険(デンジャー)な存在であることは、もはや周知の事実だ。

愚直な姿勢が実を結んでブンデスデビュー

言葉の壁もあって入団当初はやや委縮気味だったが、想像以上に早くチームにフィット。今ではすっかりチームメイトの信頼を勝ち取った 【Photo by Marcus Brandt/picture alliance via Getty Images】

 しかし、並み居るライバルを蹴落とし、スタメンの座をつかみ取るまでの歩みは決して簡単ではなかった。初めての海外移籍で、多くの日本人選手がそうであったように、安藤も新たな環境に慣れるまでに時間を要した。

 異国の地での最初の壁は、やはり言語だった。最終ラインの選手にとってピッチ上の指示やセットプレーの確認、そして何よりチームメイトとの細かなニュアンスの共有は必須である。ドイツ語と英語が飛び交うザンクトパウリの練習場で、27歳の新参者が孤立しても不思議ではなかった。

 実際、ザンクトパウリのホペイロ兼チームマネージャーを務める日本人の神原健太氏によれば、「最初は言葉が話せないこともあって、少し引っ込み思案というか、若干チームメイトとの間に距離があった」という。

 試合後のミックスゾーンでドイツメディアの質問に答える姿も、少しばかり萎縮しているように感じた。もともと海外で何年もプレーしていた藤田は、昨夏の加入後、自身の英語力やコミュニケーション能力を駆使してすぐに溶け込んだが、安藤のコミュニケーション面での出遅れは、適応に時間がかかることを意味していた。

 それでも、この逆境を安藤は自らの足で切り拓く。神原氏や藤田らの支えもありながら、日々のトレーニングで100パーセントの自分をぶつけ続けると、その愚直な姿勢が実を結び、1月17日(現地時間、以下同)の第18節ドルトムント戦でついにブンデスリーガデビューを果たすのだ。

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著者プロフィール

1987年生まれ、埼玉県出身。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることに。帰国後、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして各社スポーツ媒体などに寄稿している。2023年5月からドイツ生活を開始

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