血栓を克服した小さな司令塔・河村勇輝の語り継がれる軌跡 NBAでサバイブを続けるために必要なこととは?

杉浦大介

出番は限定的ながら、NBAの舞台でも随所に存在感を示す。現地2月5日のラプターズ戦ではNBAキャリア最多タイ7アシストと躍動 【Photo by Cole Burston/Getty Images】

 右足に血栓があることが判明し、2025-26シーズンの開幕直前に2ウェイ契約を結んだばかりのシカゴ・ブルズから契約解除を言い渡された河村勇輝だが、その経験も決して無駄ではなかった。コンディションを取り戻し、今年1月に再びブルズと2ウェイ契約を結び直した小さな司令塔が、NBA定着に向けて奮闘を続けている。NY在住のライター、杉浦大介氏が、スカウトやHCの評価を交えながら、河村の現在地をレポートする。

血栓による離脱でバスケへの愛情を再確認

「バスケがしたいです……」

 ついにコートへのカムバックを果たした彼の姿を見て、名作バスケ漫画の有名なフレーズを思い出さずにはいられなかった。

 1月23日、復帰2戦目となったGリーグ(NBAのマイナーリーグ)のゲームを終えた河村勇輝の表情は、また思う存分にバスケットボールができる喜びに満ちあふれていた。

「当たり前にできていたバスケットが、急になくなった。悔しさはもちろんすごくあったんですが、本当にたくさんの方に支えられて、前向きな気持ちで、この3カ月間を過ごしてこられました。本当に、急にバスケットができなくなる可能性もあるんだっていうことを身に染みて感じられたことが、(この期間で)一番成長できた部分なんじゃないかなって思っています」

 NBA最大級の名門シカゴ・ブルズと2ウェイ契約(NBAチームとその傘下にあるGリーグチームの両方でプレー)を結びながら、突然その契約が解除されたのは昨年10月、今季の開幕直前だった。それから約3カ月が過ぎ、離脱の理由が右足の血栓であることを明かした河村は、体調の回復とともにブルズと2ウェイ契約を結び直した。

 こうしてバスケットボールへの愛情を再確認し、身長172センチの小柄なポイントガード(PG)は、以降もひたむきに、楽しそうにボールを追いかけている。

オフェンスに関してはNBAスカウトも高評価

 Gリーグのウィンディシティ・ブルズでは9試合で平均32.7分プレーし、17.7得点(FG成功率36.5パーセント、3P成功率34.0パーセント)、11.3アシスト、5.3リバウンドという優れた数字を残してきた。

 一方、NBAのブルズのゲームには7試合に出場し、平均12.6分のプレーで2.9得点(FG成功率27.8パーセント、3P成功率28.6パーセント)、3.7アシスト、2.6リバウンド。あくまで欠員が出たときの穴埋め的な立場のNBAでは、やはりプレー機会は限られるものの、2月1〜5日(現地時間)に行われたマイアミ・ヒート、ミルウォーキー・バックス、トロント・ラプターズとの3試合では合計20アシストと気を吐いている。

 シュート精度が前年比でもやや下がっているのが気になるが、稀有なパスワークを武器に2つのリーグで随所にハイライトを生み出し、存在感をアピールしている。そのパフォーマンスについてNBAのあるベテランスカウトに尋ねると、「オフェンス面ではNBAでも貢献の術を見つけられる」という高評価が返ってきた。

「卓越したスピード、パス能力、コートビジョンを持ったPG。ボールを持ったときの動きは素早く、自ら得点するだけでなく、いつでもチームメイトを巻き込む手段を窺っている。卓越したボールハンドリングで相手ディフェンダーをアンクルブレイクすることもできる。状況判断能力に優れ、献身的であるがゆえ、どんな選手とも一緒にプレーできるのが長所だ」

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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