1次ラウンド1位通過も…好不調の明暗分かれる選手たち 豪州戦で衝撃を受けた「井端采配」

丹羽政善

吉田正尚の2ランホームランなどでオーストラリアに競り勝ったが、課題が残る試合になった 【Photo by Daniel Shirey/WBCI/MLB Photos via Getty Images】

大谷翔平の打席で起きた「まさか」

「ミスしても前を向いて行こう。打てなくたって次打てばいい。それでもダメなら全員でカバーしよう」

 台湾戦の試合前、円陣で声出しを担当した牧秀悟は、声を張り上げた。

 しかし、あの走塁ミスの後、彼は前を向けたかどうか。

 両チーム無得点で迎えた四回裏、2死一・二塁で9番の若月健矢が四球を選ぶと、スタンドから地鳴りを伴う歓声が湧いた。そこで大谷翔平が、ゆっくりと打席に向かっている。

 このとき、エンゼルス時代に大谷を取材をしていたジ・アスレチックスのサム・ブラム記者らと一緒に見ていたのだが、「歩かせることが、実は一番、オーストラリアにとってダメージが少ないかもしれない」という話をしていた。

「際どいところをついて、押し出しになったとしても、それが最善策では?」

 最初の2戦の大谷の状態を考えれば、それを否定できなかった。

 ところが、2-1からの4球目に信じられないことが起こる。初戦の台湾戦で先制2ランを放ったロビー・パーキンスが、二塁走者の牧がわずかに飛び出していることを見逃さなかった。

 頭から戻る牧。しかし、タッチアウト。侍ジャパンのダグアウトではリプレイ検証を求めるかどうか映像の確認を急ぐ。井端弘和監督がしかし、手を挙げてそれを求めたときすでに15秒のリクエスト制限時間を過ぎていたよう。メジャーでは結構、この時間が曖昧だが、今大会ではたびたび目にする。

二塁ベース上で呆然とする牧秀悟 【Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images】

 二塁ベース上で正座するような形となった牧。直後からSNSでは、「大谷が打席にいるのに、なぜ?」という疑問が飛び交う。

 隣のブラム記者は、言葉を失っていた。

「押し出しよりも、いい結果があったとは…」

 牧は試合後、「自分的にはいつも通りやっていたんですけど、(ホームに)かえることを意識しすぎた」と振り返った。

「本当にああいう場面でもったいない。悪い流れになったとも思う。負けていたら頭が上がらなかった」

 六回1死一塁の場面では三塁ゴロ。全力疾走で併殺を免れた。八回無死一塁で打席に立ち、代走の周東佑京が盗塁を決めて無死二塁となった場面では、低めの球を右方向に転がして、走者を進塁させた。なんとかミスをカバーしようという姿勢に彼らしさを感じ、取材にも堂々と答えたが、一人になったとき、何度も牽制で刺された場面が、蘇ったのではないか。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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