侍ジャパン流"振り切った"WBCの戦い方 守備リスクも誠也&吉田正尚の7打点が証明

丹羽政善

二回に2ランホームランを放った鈴木誠也を出迎える大谷翔平 【Photo by Toru Hanai/Getty Images】

圧巻の三者連続三振、種市篤暉の「成長の証明」

 話は2019年11月まで遡る。あの日、シアトル郊外にあるドライブライン・ベースボール(以下ドライブライン)で会った種市篤暉は、人見知りなのか、他の選手に比べて口数が少なく、ドライブラインのトレーナーらも「彼はシャイだね」と話していたが、トレバー・バウアーを目の前にしても浮かれることなく、ブレない芯の強さを感じた。

2019年当時ドライブラインでトレーニングする種市篤暉 【筆者撮影】

 その種市が昨日の試合では、同点の七回からマウンドに上がると、グイグイと真っ直ぐで相手を圧倒し、韓国打線から三者連続三振を奪った。

 その裏、侍ジャパンは、2死三塁で大谷翔平が敬遠されると、初戦から出塁さえなかった近藤健介が四球を選んで満塁。そこでこの日2本塁打の鈴木誠也が冷静に押し出しのフォアボールを選ぶと、吉田正尚が中前適時打を放って、接戦にケリをつけた。

「千葉ロッテのときもリリーフをやっていて、負けている展開でも同点の展開でも、いいピッチングをしたら、裏の攻撃がいい流れになるっていうのは感じていた」と種市。

「そこは自分的にはいい仕事ができた」

 対応にも成長を感じた。

 押し出しについて、「しっかりと自分のゾーンを保ちながら、いい打席だった」と大谷に評価された鈴木は、「もちろん興奮もしていましたし、決めたいという気持ちもありましたけど、あのまま行くと打ち取られそうなイメージがあったので、冷静に」と振り返りつつ、続けている。

「ピッチャーも(近藤との打席から)ボール、ボールが続いて、いっぱいいっぱいだったんで、しっかり変な球に手を出さないように、狙い球を絞って」

 種市の快投からの勝ち越しはまさに強いチームの試合運びだったが、初回に3点をリードされて劣勢に立たされた侍ジャパンは、それぞれが様々な形で、勝利に貢献した。

大谷翔平が語る勝機「一番大きかったのは誠也の2ラン」

二回、反撃ののろしとなる2ランホームランを放った鈴木誠也 【Photo by Kyodo News via Getty Images】

 一回裏、鈴木が2ランを放って1点差に。三回には大谷翔平が同点弾を放ち、鈴木、吉田正尚のメジャー組がホームランで続いて、一挙に逆転。

 菊池も三回に再びピンチを招いたが、後続を絶った。走者を置いて本来先発投手である伊藤大海にマウンドを譲ることだけは避けたかったはずだが、最後は力で押し切っている。翌四回から登板した伊藤は、その回に同点2ランを許したが、その後は六回までゼロを並べた。

 八回は、松本裕樹が2死満塁のピンチを背負うも切り抜けている。九回は1死から、センターへの大飛球を周東佑京が背走して好捕。

 どこを切り取っても、勝負の綾となりそうなシーンばかりだったが、大谷に試合後、「ここで空気が変わった、流れが変わったかな」という場面は? と聞くと、少し思いを巡らせてから、「一番大きかったのは、誠也の2ラン」と答えた。

「最初の1本が、試合の中では落ち着きという意味でも、流れを引き寄せるという意味でも、早い段階で1点差にできたのが大きかった。あれで自分自身もそうですし、他のメンバーも自分の打席に集中できる環境が整った」

 その2ランを打った鈴木は、「最初、ああいう展開になったので、ちょっとマズイと思った」と苦笑。大谷も「みんながこう、先制されて、『ヤバい、ヤバい』っていう、急ぎがちなリズムでもあった」と認めている。焦るあまり、ボール球に手を出したり、「自分が、自分が」と強引になりがちな空気になりかけたが、そういう事態に陥る前に、鈴木がその芽を摘み取ってくれた。

 三回、その大谷が同点本塁打。一塁を回るとき、盛り上がるダグアウトに向かって「落ち着け」と言わんばかりに冷静さを促したのは「まだ同点だ」という思いからだだったそうだが、1死後、鈴木と吉田が続くと、東京ドームはもう、蜂の巣を突いたような騒ぎになった。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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