狩野亮が語る「雪上の旋律」 人馬一体で挑むパラアルペンスキーの真髄

久下真以子

3連覇に挑むエースと、悲願の金を追うレジェンド。日本が誇る最強布陣

前回北京大会でメダルを手に笑顔を見せる村岡桃佳(中央左)と森井大輝(中央右) 【Photo by Yifan Ding/Getty Images for International Paralympic Committee】

 今大会の日本の注目は、なんといってもチェアスキーの3選手。まずは女子の村岡桃佳選手ですね。普段から男子選手と一緒に練習しているからかもしれませんが、男子に負けないようなターンのキレやパワフルさを持っているのが彼女のスゴさです。僕もキャリア終盤では、練習でのタイムが彼女に負けそうなことがあったくらいです。

 彼女は昨年の11月に鎖骨を骨折して、パラリンピックが復帰戦という「ぶっつけ本番」の舞台になります。でも見聞きしている様子では、しっかりトレーニングは再開できています(編注:3月7日の滑降は欠場が発表された)。全種目で勝つというよりも、この種目ではしっかり勝つんだという照準を合わせていっているのじゃないかなと勝手に僕は思っています。特に大回転は3連覇がかかっているので、期待したいですね。

 男子では、パラリンピック7度目の出場となる森井大輝選手(トヨタ自動車)が悲願の金メダルを目指しています。02年ソルトレークシティで初出場し、06年トリノから5大会連続で表彰台に立っているレジェンドです。マシンの仕上がりや一体感も過去最高と聞いているので、非常に楽しみです。コンマ何秒の争いになると思いますが、ベテランならではの経験値と技術で、勝負の運を引き寄せてほしいと願っています。

 また、同じく長く活躍している鈴木猛史選手(カヤバ)も忘れてはならない選手です。14年ソチ大会の金メダル以来は表彰台から遠ざかっていて、苦しい時間を過ごしたと思いますが、今シーズンはワールドカップで9年ぶりに優勝するなど、復活の兆しを見せています。ミラノでは是非、彼の強い滑りを表現してほしいと思います。

 海外で注目は、女子座位カテゴリーのオードリー・パスカル・セコ選手(スペイン)が挙げられます。パラリンピック初出場なんですが、2024ー25シーズンのワールドカップでは11回表彰台に上って、世界選手権では2度の銀メダルを獲得しています。村岡選手とも技術的にいい勝負をするでしょう。21歳という若さならではの勢いにも注目してみてください。

ミラノの難コースで見せる選手たちの迫力に注目

パラアルペンスキーの初日は3月7日、滑降から始まる。メダルラッシュに期待だ 【Photo by Christian Petersen/Getty Images】

 森井選手たちの話によると、ミラノのコースは今までで一番難しいそうです。というのも、コースの前半の起伏が激しく、高速系ではたくさん飛んでしまう箇所があったり、先のポールが見えない「ブラインドポール」がたくさんあるということです。技術系は高速系よりもスタート位置が下がってコースが短くなり、コースの後半を使用します。後半部分は起伏はあるものの斜度もさほどキツくないため、技術系のスピード領域では難易度が下がることになります。逆に言えば、タイム差が縮まる可能性が高い。選手たちがいかにフルアタックをかけるかが、勝負の分かれ目になりそうです。

 先に行われたミラノ・コルティナ五輪では、日本のメダルラッシュがありました。パラリンピックもその勢いをもらって、最高の結果を日本選手団として収めてほしいですね。僕自身が現役の時は、五輪の映像を見てコースを観察したり、メダルを取ったときのイメージを重ね合わせていました。今大会も選手たちはそれぞれの思いで五輪を見て、刺激をもらっていたのではないでしょうか。

 これから観戦するみなさんは、是非スピード感や迫力に注目してみてください。「障がいがあるのにこんなに速く滑れるんだ」「片足でこんなことができるんだ」「見えてないのにすごいな」といった、想像を超える姿が見られると思いますよ。

 僕自身も小学生の時にパラアルペンスキーを始め、長野パラリンピックをテレビで見て衝撃を受けたことが、パラリンピックを目指すきっかけになりました。そういう意味では、ミラノ・コルティナ大会をきっかけにパラアルペンスキーのファンが増えたり、競技を始める子どもたちが増えたらうれしいですね。そのためにも、日本選手がミラノ・コルティナの地で活躍することを応援しています。

狩野亮

【(C)hiroaki yoda】

1986年生まれ。小学校3年生の時、登校中に車にはねられ脊髄損傷となる。その後、様々なスポーツに挑戦する中で、チェアスキーと出会いパラリンピックへの挑戦が始まる。06年トリノ大会を皮切りに、計5回のパラリンピックに出場。10年バンクーバー大会で滑降:銅、スーパー大回転:金、14年ソチ大会では両種目:金の合計4つのメダルを獲得。14年、パラリンピアンとしては初となる紫綬褒章を受賞。22年北京大会まで日本代表として活動し、同年7月日本代表を引退、一線を退く。

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著者プロフィール

大阪府出身。フリーアナウンサー、スポーツライター。四国放送アナウンサー、NHK高知・札幌キャスターを経て、フリーへ。2011年に番組でパラスポーツを取材したことがきっかけで、パラの道を志すように。キャッチコピーは「日本一パラを語れるアナウンサー」。現在はパラスポーツのほか、野球やサッカーなどスポーツを中心に活動中。

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