狩野亮が語る「雪上の旋律」 人馬一体で挑むパラアルペンスキーの真髄
中でも「雪上のF1」と言われるのが、パラアルペンスキーだ。日本はこれまで、今大会の日本選手団団長を務める大日方邦子が金メダル2個を含む10個のメダルを獲得。現役の村岡桃佳(トヨタ自動車)はこれまで金メダル4個を含む9個のメダルを獲得し、4大会目のパラリンピックに臨むなど、「日本のお家芸」とも言えるほどの輝かしい実績を残している。
パラアルペンスキーは、道具とともにハイスピードで駆け抜ける「人馬一体」の競技とも言える。いったいどんな魅力があるのか。日本選手の強さはどこにあるのか。そしてミラノ大会の展望や楽しみ方はーートリノ大会から5大会に出場し、3個の金メダルを含む4個のメダルを獲得した男子のレジェンド・狩野亮さんに話を伺った。
猛スピードで奏でる「雪上の音楽」研ぎ澄まされるライン取り
また、障害の種類によって「座位」「立位」「視覚障がい」と3つのカテゴリーがあります。座位は下肢障がいのカテゴリーで、選手たちは1本のスキー板にチェアが固定された「チェアスキー」に乗ります。僕も普段車いすユーザーなので、チェアスキーで戦っていました。立位は上肢障がいや下肢障がいのカテゴリーで、選手によってストックなしで滑ったり、 1本のスキー板だけだったり、義足にスキー板を履かせたりもします。
視覚障がいの選手はガイドと一緒に滑るのですが、見え方の程度によってガイドの声や音、ぼんやりと見えている背中などを頼りにします。ガイドがマイクとスピーカーをつけて、後ろを滑る選手に声が聞こえやすくするというような工夫もしますね。ガイドがコースアウトすれば失格になるという意味では、本当に一心同体で戦うカテゴリーとも言えます。
チェアスキーは時速120キロ以上出ると言われていますが、公式ではないもののGPSなどでの計測ではレース中に130キロ以上は記録しています。「視線が低い分、よりスピード感を感じるのでは?」と皆さんに言われるのですが、逆に立ってアルペンコースを滑ったことがないので、これが当たり前の世界なんですよね(笑)。ただ、座っている分ヒザの衝撃を使えないのは、少し怖いときもありました。というのも、コースの起伏や掘れなどで飛ばされてしまう、というようなことがあるんです。もちろんチェアスキー自体にサスペンションはついているのですが、投げ出された後にどう立て直せるかを問われるのも、座位ならではです。
アルペンスキーで速く滑るには、正確なラインをシャープに降りること。そのためには、コースが荒れていてもリカバリーできるようなフィジカルや技術が必要です。僕は高速系が得意な選手でしたが、「水が流れるようなイメージ」で滑っていました。また、日本の往年のナショナルコーチである伴一彦さんは、「ポールは音符で、そこを通ることで音楽を奏でていくのが選手なんだ」というようなことも言っていましたね。どちらにせよ、金メダルを取ったレースは「自分の表現がしっかりできた」という感覚はありました。