復活を目指すパラアイスホッケー 上原大祐の考える「役割」と「未来」

久下真以子

バンクーバー大会準決勝で大金星を収めた日本。復活への道しるべについて上原さんに話を聞いた 【Photo by Hannah Peters/Getty Images】

 ミラノ・コルティナパラリンピックが3月6日に開幕する。このうち「氷上の格闘技」とも呼ばれるのが、パラアイスホッケーだ。パラアイスホッケーは、夏冬のパラリンピック種目において、唯一体同士がぶつかりあうことが許されている競技。日本は、18年の平昌以来2大会ぶりの出場を決め、3月7日に初戦のチェコ戦を迎える。

 10年バンクーバー大会で銀メダルを獲得した日本。しかし世代交代がうまく進まず、14年ソチ大会と22年北京大会は、出場すらできない低迷期が続いていた。

 大舞台に舞い戻ってきた日本の選手たちに、ミラノの地でどんな戦いを期待するのか。また、パラアイスホッケーならではの魅力と戦術とは何なのか。バンクーバー大会のカナダとの準決勝で決勝ゴールを決め大金星に貢献した、元日本代表の上原大祐さんに話を伺った。

スレッジがもたらす「インクルーシブ」な真剣勝負

リンク、ゴールのサイズは一般のアイスホッケーと同じ。インクルーシブさが魅力の一つだ 【Photo by Martin Rose/Bongarts/Getty Images】

 パラアイスホッケーは、スレッジと呼ばれるそりに乗って行うアイスホッケーです。「下肢に障がいがある人のアイスホッケー」と言われがちですが、僕は「障がいの有無にかかわらずできるアイスホッケー」という表現の方が好きですね。健常者でもスレッジに乗れば同じように戦えますし、実際に国内の大会では健常者も一緒にプレーしているので、インクルーシブなスポーツなんです。

 僕がこの競技で面白いと思うのが、「車いすではなくスレッジに乗っている」というところです。車いすバスケットボールや車いすテニスの選手は、普段から車いすに乗っているので、チェアスキル(競技用車いすの操作能力)も高いと思うんですよ。でもスレッジは全く別の乗り物なので、障がい者だからといってすぐに慣れるとも限らない。だからこそ、健常者と同じスタートラインで始められる楽しさもあるんですよね。

 スレッジは2本のブレードの上に、バケットと呼ばれるシートが乗っかっているような形状をしています。選手は足を前に伸ばすようにバケットに座り、両手に2本のスティックを持ってプレーします。スティックは、片方の先端はパックを打つためのブレードになっていて、もう片方の先端は氷をかいて前に進むためにギザギザになっています。だから、選手たちは試合中、スティックを巧みに持ち替えているんです。

 ルールはほとんど一般のアイスホッケーと同じで、リンクやゴールのサイズも一緒です。試合時間は一般のアイスホッケーが20分×3ピリオドなのに対して、パラアイスホッケーは15分×3ピリオドになっています。また、パラアイスホッケーならではのルールは、「ティーイング」というペナルティがあること。相手のスレッジに対して直角にぶつかるのは、危険行為と見なされています。

バンクーバー準決勝での上原さん(中)。体格の大きいカナダの選手たちとパックを奪い合う 【Photo by Martin Rose/Bongarts/Getty Images】

 パラスポーツといえば障がいに応じて「クラス分け」や「持ち点」が与えられる競技が多いですが、パラアイスホッケーにはそれがありません。また、女子も同じチームで戦える男女混合の競技です。持ち点があるから平等に戦えるとよく言いますが、逆に持ち点がないからこそ平等に戦えるという視点もある。与えられるのはポジションだけで、それを全うする面白さが、この競技にはあると思っています。

 僕は小柄ですが、スピードとキープ力のある選手で、駆け引きが得意でした。パックそのものをめがけて奪いにいこうとすると相手に交わされてしまうんですが、相手の体にぶつかっていって体勢を崩すと奪いやすくなるんです。また、自分が当たられたときには、相手の力を生かしてスピードを上げられるようにするなど、体だけではなく頭を使ってプレーするように心がけていましたね。

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著者プロフィール

大阪府出身。フリーアナウンサー、スポーツライター。四国放送アナウンサー、NHK高知・札幌キャスターを経て、フリーへ。2011年に番組でパラスポーツを取材したことがきっかけで、パラの道を志すように。キャッチコピーは「日本一パラを語れるアナウンサー」。現在はパラスポーツのほか、野球やサッカーなどスポーツを中心に活動中。

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