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体調不十分ながら眩い輝きを放った三笘 あと必要なのは“最後の調味料”のようなもの

森昌利

勝ち越し点を生んだ三笘の適切なプレー選択と華麗なムーブ

三笘が即座の判断でダイレクトクロス。同点にされてわずか2分後、状況を見極めた適切なプレー選択がウェルベックの勝ち越し弾につながった 【Photo by Pedro Porru/MB Media/Getty Images】

 三笘がブライトンの2点目、結果的にこの試合の決勝点となったゴールの起点となったのは、この同点弾のわずか2分後の前半15分だった。

 三笘にしては珍しいプレー選択だった。左サイドでグロスの縦パスを引き出した日本代表MFは、いつもならここからさらに縦抜けするか、ボールを止めて内を向き、敵選手と対峙してゴール方向へ仕掛ける――そんなシーンを予想した。

 ところが三笘はグロスの縦パスに左足を合わせ、ダイレクトでゴール前に送り込んだ。

「中を見た瞬間、2対1のようだったので。ちょっとボールが高かったですけど、いいクオリティを見せてくれたので助かりました」

 珍しいプレーだと思ったので、試合後そのまま質問すると、三笘がそう答えた。

 確かに三笘がクロスを放った瞬間、ゴール前には味方のダニー・ウェルベックとジャック・ヒンシェルウッドが走り込んでおり、対するフォレストのDF陣はムリロ1人しか戻っていなかった。数的優位が生まれていた。

「ちょっとボールが高かった」と三笘が言ったクロスをファーサイドのヒンシェルウッドが“いいクオリティを見せて”しっかりウェルベックの足元に落とすと、今季絶好調でイングランド代表復帰も噂される35歳ベテランFWが、ヒンシェルウッドのヘッドでのつなぎ以上のクオリティを見せた。寄せてきた相手DF2人からボールを隠すように背を向けてパスを受けると、即座に反転して右足を鋭く振りゴールを陥れた。

 マッチフィット(試合勘)を取り戻した三笘が相手の隙を見逃さず、適切な判断で放ったダイレクトクロスが生み出した勝ち越し弾だった。

 そしてこのわずか2分後、まさに踊るように三笘が躍動した。

 前半17分、右サイドからゴメスが放った強い横パスを三笘が素晴らしいファーストタッチで収めると、そこからラストサードのほとんどスペースがないエリアでウェルベックと見事なワンツーを決めた。

 このときの三笘の動きが本当に素晴らしかった。鍛えられた舞踏家のようにステップを踏んでゴール前に飛び出した。美しいとさえ言えるムーブメントだった。

 しかしゴール前に飛び出してGKとの1対1に持ち込みながら、左足のシュートは残念なことにベルギー人守護神にブロックされた。

「まあ、ああいうシーンがたくさんあるんで、もうちょっと冷静にならないといけないですけど。あれを決めてればもっと楽になっていましたし、こういう決定機を逃していつも引き分けとかになってたんで、今日も怖かったですけど。最後はチームでしっかりと締められたんでよかったです」

「キレとスピードが戻ってきている」という記者の投げ掛けに本人は…

前半17分にはウェルベックと見事なワンツーを決めて、GKと1対1の状況を作り出した。1月7日以来のゴールはもうすぐ見られるのではないか 【Photo by Steve Bardens/Getty Images】

 前節のブレントフォード戦でも前半に2本のシュートを打ち、この試合でも後半のシュートを合わせたら3本のフィニッシュ。三笘にゴールの兆候があるのは間違いない。

「冷静にならないといけない」というコメントは、フィニッシュする瞬間の最後の、なんと言えばいいか、最後の調味料とでもいうか、そういう微妙かつ不可欠な要素なのだと思う。

 こんな話を知っている人は筆者も含めてもう老人だが、昔、読売ジャイアンツを9連覇に導いた川上哲治監督が、現役時代の絶好調時に「ボールが止まって見える」と言った。三笘の言うゴール前の刹那に必要な調味料はそんな感覚かもしれない。

 しかし運動量も含めて、この試合の三笘は好調時にひたすら近づいているように見えた。だから、記者の1人が「攻守ともにキレとスピードも戻ってきていると思うが」と尋ねたのも無理はない。しかし三笘は、「いや、全然ですね。もうちょい上げないと厳しいかなって。試合中も、今日もきつかったですし、ちょっと体調も良くなかったんで、ギリギリでした」と答えたではないか。

 絶好調になったら、いったいどうなるのか? 冒頭に記した「プレミアリーグ一のウインガー」という英国人サポーターの評価も、まんざら贔屓(ひいき)目だけではないかもしれない。

 三笘には本当に驚かされることばかりだが、囲み取材を終えて記者室に引き上げる途中で、先制点を決めたゴメスとすれ違った。そのときに「グレートゴール!」と声をかけると、ゴメスははにかんだ少年のような表情を浮かべ、消え入るようなか細い声で「サンキュー」と言った。

 あんな火の玉のような恐ろしいボールを蹴った選手とは思えないほど、優しげで可愛らしかったのが面白かった。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2025-26で25シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル30年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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