体調不十分ながら眩い輝きを放った三笘 あと必要なのは“最後の調味料”のようなもの
三笘の発言を伝えると英国人サポーターは目を白黒させて
ブライトンの本拠地アメックス・スタジアムにたどり着くには、ブライトン駅から各駅停車に乗り、北東に3駅先のファルマー駅で降りる。
実はこの移動が非常に面倒くさい。ブライトン駅から6キロ以上あるので、徒歩だと早歩きでも確実に1時間以上はかかる。だから、約3万人を収容するスタジアムに行くためには鈍行列車を利用するしかない。
電車は15分ごと。乗車時間は10分ほどだが、試合開始1時間前ともなるとブライトン駅には大勢の人が押し寄せ、ファルマー方面行きのプラットフォームでは入場制限が始まる。そのためへたすると10分の行程が1時間以上となり、キックオフに間に合わないこともある。
当然、帰りも大変だ。後半の正規の45分が終了するあたりから、相当数の客が潮が引くようにスタジアムを後にするが、それも帰りの電車に素早く乗り込むためだ。われわれ取材陣は大抵の場合、三笘薫の囲み取材をしてから小さなファルマー駅に向かうが、それでも駅への入場規制が続いている場合が多く、人が鈴なりになっている。
そんな身動きができない状態で「日本人か?」と英国人男性に話しかけられて、「イエス」と答えると、冒頭のセリフを一方的に告げられた。
その後に筆者が記者であることを明かして、「でもカオルは“今日は体調が悪かった”と言っていたよ。風邪を引いているようだった」と言うと、そのブライトン・サポーターの男性は目を白黒させた。かくいう筆者も三笘の口からそう聞いたとき、確かに鼻声だなとは思ったが、サポーターの彼と同じような顔をしていたと思う。
ブライトンが1月3日以来のホーム戦勝利を飾ったノッティンガム・フォレスト戦での三笘のパフォーマンスは、それくらい素晴らしかった。
地を這うような強烈なボレーと敵主将のミドル弾
まずは前半6分に生まれたブライトンの先制点。本当にすごいゴールだった。
ディエゴ・ゴメスのボレーシュートだった。ドイツ人ベテランMFパスカル・グロスがふんわりとしたループパスをペナルティエリア内右側に送り込むと、そのボールがバウンドして浮いた瞬間、ゴメスが右足を上から被せるようにして強烈なボレーを放った。
この球足がいやはやなんとも、ものすごかった。なんと形容すればいいのか。まさに地を這う感じで、炎が一瞬にして一直線に燃え進むといった球筋だった。あまりにも強く蹴られて、ボールが暴れていた。シュートを阻もうと左足を伸ばしたブラジル代表DFムリロの股を抜いたボールは、まるで生き物のように、凶暴なほど猛々しく飛んだ。
フォレストのベルギー代表GKマッツ・セルスが横っ飛びでシュートに右手を当てたのは、一流キーパーの反射神経としか言いようがない。しかし強烈なシュートは、その強固であるはずの一流GKの右手を簡単に弾き飛ばし、対角線上の左サイドのネットに突き刺さった。
この日観戦に訪れたブライトン・サポーターは、このシュートを見ただけでも入場料を払った価値があったと思う。
ところが、目を見張るようなゴメスのゴールからわずか7分後の前半13分、またもやスーパーゴールが生まれた。あいにくこれは敵の同点弾であったが、それでも素晴らしいゴールだったことに変わりはない。キャプテンの腕章を左腕に巻いたトップ下のモーガン・ギブス=ホワイトのミドルシュートだった。
唐突だった。ゴール正面だったが、距離があった。ペナルティボックスから5メートルは離れていた。そこで横パスを受けたギブス=ホワイトが無造作に右足を振った。
ブライトンの守備陣は“そこからは打たないだろう”とスペースを詰めていなかった。その一瞬の隙を突いて、26歳イングランド代表MFが素晴らしいシュートを放った。右足でボールをすくうように、しかし強く当てて蹴ったボールはシュート回転して絶妙な弧を描いた。
ゴール中央に立っていたオランダ代表GKバルト・フェルブルッヘンから逃げるようにスライスして、この巨漢が横っ飛びして伸ばした長い左手の先をすり抜け、ゴール右隅のトップコーナーに突き刺さった。フランク・ランパードがこういうシュートを打ったなと思い出した。
このゴールを見ただけでも、アウェーのサポーターはノッティンガムからの長旅が報われたはずだ。
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