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体調不十分ながら眩い輝きを放った三笘 あと必要なのは“最後の調味料”のようなもの

森昌利

三笘はゴールこそなかったが、フォレストを相手に何度も見せ場を作り、ブライトンの勝利に貢献した 【Photo by Steve Bardens/Getty Images】

 ブライトンが3月1日(現地時間、以下同)のノッティンガム・フォレスト戦で約2カ月ぶりとなるホームでの勝利を飾った。定位置の左サイドで先発した三笘薫は、本人によると体調がすぐれなかったそうだが、そんなことを感じさせない躍動感溢れるプレーを披露。チームに勝ち点3をもたらす立役者の1人となった。惜しむらくは、久しく決めていないゴールがこの試合でもなかったことだが、その予兆のようなものがうかがえるのは確かだ。

三笘の発言を伝えると英国人サポーターは目を白黒させて

「カオルは本当にすごい選手だ。今シーズンは怪我をしたけど、体調さえ戻ればプレミアリーグのなかでも一番のウインガーだよ。それは今日の試合を見れば明らかさ!」

 ブライトンの本拠地アメックス・スタジアムにたどり着くには、ブライトン駅から各駅停車に乗り、北東に3駅先のファルマー駅で降りる。

 実はこの移動が非常に面倒くさい。ブライトン駅から6キロ以上あるので、徒歩だと早歩きでも確実に1時間以上はかかる。だから、約3万人を収容するスタジアムに行くためには鈍行列車を利用するしかない。

 電車は15分ごと。乗車時間は10分ほどだが、試合開始1時間前ともなるとブライトン駅には大勢の人が押し寄せ、ファルマー方面行きのプラットフォームでは入場制限が始まる。そのためへたすると10分の行程が1時間以上となり、キックオフに間に合わないこともある。

 当然、帰りも大変だ。後半の正規の45分が終了するあたりから、相当数の客が潮が引くようにスタジアムを後にするが、それも帰りの電車に素早く乗り込むためだ。われわれ取材陣は大抵の場合、三笘薫の囲み取材をしてから小さなファルマー駅に向かうが、それでも駅への入場規制が続いている場合が多く、人が鈴なりになっている。

 そんな身動きができない状態で「日本人か?」と英国人男性に話しかけられて、「イエス」と答えると、冒頭のセリフを一方的に告げられた。

 その後に筆者が記者であることを明かして、「でもカオルは“今日は体調が悪かった”と言っていたよ。風邪を引いているようだった」と言うと、そのブライトン・サポーターの男性は目を白黒させた。かくいう筆者も三笘の口からそう聞いたとき、確かに鼻声だなとは思ったが、サポーターの彼と同じような顔をしていたと思う。

 ブライトンが1月3日以来のホーム戦勝利を飾ったノッティンガム・フォレスト戦での三笘のパフォーマンスは、それくらい素晴らしかった。

地を這うような強烈なボレーと敵主将のミドル弾

前半6分にゴメスが強烈な先制パンチ。浮き球を右足でしっかりミートし、弾丸のようなシュートを突き刺した 【写真:ロイター/アフロ】

 試合はプレミアリーグのレベルでも“特上”というしかない2つのゴールで始まった。

 まずは前半6分に生まれたブライトンの先制点。本当にすごいゴールだった。

 ディエゴ・ゴメスのボレーシュートだった。ドイツ人ベテランMFパスカル・グロスがふんわりとしたループパスをペナルティエリア内右側に送り込むと、そのボールがバウンドして浮いた瞬間、ゴメスが右足を上から被せるようにして強烈なボレーを放った。

 この球足がいやはやなんとも、ものすごかった。なんと形容すればいいのか。まさに地を這う感じで、炎が一瞬にして一直線に燃え進むといった球筋だった。あまりにも強く蹴られて、ボールが暴れていた。シュートを阻もうと左足を伸ばしたブラジル代表DFムリロの股を抜いたボールは、まるで生き物のように、凶暴なほど猛々しく飛んだ。

 フォレストのベルギー代表GKマッツ・セルスが横っ飛びでシュートに右手を当てたのは、一流キーパーの反射神経としか言いようがない。しかし強烈なシュートは、その強固であるはずの一流GKの右手を簡単に弾き飛ばし、対角線上の左サイドのネットに突き刺さった。

 この日観戦に訪れたブライトン・サポーターは、このシュートを見ただけでも入場料を払った価値があったと思う。

 ところが、目を見張るようなゴメスのゴールからわずか7分後の前半13分、またもやスーパーゴールが生まれた。あいにくこれは敵の同点弾であったが、それでも素晴らしいゴールだったことに変わりはない。キャプテンの腕章を左腕に巻いたトップ下のモーガン・ギブス=ホワイトのミドルシュートだった。

 唐突だった。ゴール正面だったが、距離があった。ペナルティボックスから5メートルは離れていた。そこで横パスを受けたギブス=ホワイトが無造作に右足を振った。

 ブライトンの守備陣は“そこからは打たないだろう”とスペースを詰めていなかった。その一瞬の隙を突いて、26歳イングランド代表MFが素晴らしいシュートを放った。右足でボールをすくうように、しかし強く当てて蹴ったボールはシュート回転して絶妙な弧を描いた。

 ゴール中央に立っていたオランダ代表GKバルト・フェルブルッヘンから逃げるようにスライスして、この巨漢が横っ飛びして伸ばした長い左手の先をすり抜け、ゴール右隅のトップコーナーに突き刺さった。フランク・ランパードがこういうシュートを打ったなと思い出した。

 このゴールを見ただけでも、アウェーのサポーターはノッティンガムからの長旅が報われたはずだ。

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2025-26で25シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル30年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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