“ファンタジスタの産地”ラス・パルマスに適応した宮代大聖 かつて中村俊輔氏と同僚だった指揮官も大絶賛
人種差別は決して許される行為ではないが
宮代大聖が所属するラ・リーガ2部のラス・パルマスは、1月4日(現地時間、以下同)のサラゴサ戦以来、長く勝利を味わっていなかったが、3月最初のリーグ戦(3月1日の第28節)、アウェーのクルトゥラル・レオネサ戦に3-0で快勝。6位に浮上し、首位ラシン・サンタンデールに勝ち点8差まで迫った。
1月末にヴィッセル神戸からレンタル移籍してきた宮代は、この試合で加入後初のスタメンフル出場を果たした。記録には残らないが、先制点は宮代の巧みなポジショニングによって呼び込まれている。ラ・リーガの試合中継において初の女性記者として起用され、その鋭いコメントが人気を博すアルバ・オリベロス記者は、「ボールに触らずともアシスト同然」と、日本人FWのパフォーマンスを褒めちぎった。
ラス・パルマスのあるスペイン領のカナリア諸島は、イベリア半島から1200キロほど離れた大西洋上に浮かぶ、7つの島からなる群島だ。首都マドリードからは飛行機で約2時間半。150キロほどの位置にあるアフリカ大陸のモロッコのほうが距離的に近い。亜熱帯気候のため冬も気候が穏やかで、スペイン人のみならず、ヨーロッパの人々には観光地として人気が高い場所だ。
かつてはマグロ漁業が栄えたことから、日本の遠洋マグロ漁業団の海外基地にもなっており、それが理由で、今でもカナリア諸島の主要都市であるラス・パルマス県(グラン・カナリア島)には日本領事事務所が設置されている。カナリア諸島の人口は約225万人、日本領事によれば、現在250人の日本人がここで暮らしているそうだ。
さて、そんな島にやって来た宮代が、人種差別に遭ったという報道を目にした。
その件に関して、長い間、日本人を含む外国人選手がラ・リーガでプレーする姿を見てきた身から言えるのは、少し厳しい言い方になるが、「他国のリーグに挑戦するうえでは、そういったアウェーの環境にも打ち勝たなければならない」ということだけだ。
一口にスペインと言ってもさまざまで、排他的な地域、リベラルな地域というのは確かに存在する。ただ個人的な経験から、ラス・パルマスを含むカナリア諸島は排他的な地域には当てはまらないように思う。地理的にモロッコに近いことからアフリカ系移民も多く、観光地であるため、他国からやって来る人々との共存にも住民は抵抗がない。明るく陽気なスペイン人を地で行くようなフレンドリーな人々が多い印象で、サッカー観戦もスペインにしてはよく歌うスタンドを眺めているだけで楽しい。
残念ながら、スペインのどのサッカースタジアムでも人種差別的な言葉が投げつけられることはある。それでもラ・リーガは人種差別撲滅を掲げているし、スタンドから差別的な言葉を浴びた選手が主審に訴え、試合が止められることもしばしばだ。もちろん、選手間でも差別用語が飛び交ったりするから、一概にスタンドに足を運ぶファンだけの問題ではないだろう。
言うまでもなく、人種差別は決して許される行為ではない。とはいえ、いちいちそれに目くじらを立てているようでは、ラ・リーガで成功するのは難しいという現実も、この国の1つの側面としてあるのだ。
宮代がいることで攻撃にリズムが生まれる
試合中も主審に言いたいことがあれば、しっかりと目を合わせ、ジェスチャーを交えながら英語で訴えかけているし、チームメイトが絶好のシュートチャンスを逃せば、「ドンマイ」と背中に手を置いて勇気づける。
常に落ち着いていて、まだ25歳ながら頼りになるベテランの雰囲気を漂わせ、言いたいこともはっきりと言う。そういったキャラクターが、スペインへの適応に役立っているようだ。
もちろん、戦力としても高く買われている。
前述したレオネサ戦では、ミカ・マルモルの先制点だけでなく、マヌ・フステルが決めたチームの2点目も、敵のゴールの前に陣取り、GKやディフェンダーの注意を引き付けた宮代の動きが呼び水になっていた。
前半終了間際の44分には、わずかにオフサイドになったものの、自らも惜しいシュートを放ち、さらに攻撃の主軸であるヘセと阿吽の呼吸でスピーディーな攻撃を展開するなど、チームへのフィット具合は上々だ。
サイドを起点に果敢に仕掛けながら、守備にも奔走するそのプレースタイルを見て、前出のオリベロス記者は、「宮代には何か特別なものがある。ポジショニングも良いし、彼がいることでラス・パルマスの攻撃にリズムが生まれる」と、感心しきりのコメントを寄せていた。