侍ジャパンに求められる第2のヌートバー 米コーチが認めた"数値に出ない"アドバンテージとは?

丹羽政善

数字で表せない「アンサン・ヒーロー」の存在感

2月の侍ジャパンのキャンプに参加したダルビッシュ有。精神的支柱の役割を今回のメンバーで誰が引き継ぐのか 【写真は共同】

 全チームというわけではないが、メジャーにはシーズン最後にそのチームを取材している記者らの投票によって、チームのMVP、最優秀投手、アンサンヒーロー(影のヒーロー)を表彰する習慣がある。もちろん、チームによって名称は異なるかもしれないが、最後の賞は数字というより、必ずしもそこに反映されない貢献度が評価の対象となる。

 ドジャースでいえば、今回のWBCにも出場している大谷翔平、山本由伸などはもちろんMVPと最優秀投手の有力候補だが、キケ・ヘルナンデス、ミゲル・ロハスらの存在も欠かせなかった。まさにワールドシリーズでの貢献がそれに値し、彼らこそがアンサン・ヒーローだった。

 さて、その同じ視点で前回のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)を振り返るなら、投手ではダルビッシュ有、野手ではラーズ・ヌートバーがそんな役割を担ったのではないか。

 ダルビッシュは、3試合に登板(1先発)し、計6イニングを投げると、7安打、5失点(自責点4)、2三振。防御率は6.00で、およそ彼らしくない数字が並ぶ。しかし、準々決勝でも投げた彼が、決勝戦の終盤にブルペンへ向かったとき、鳥肌が立ったのは、ファンだけではなかった。フィールドにいた選手らも、奮い立たされたのではないか。8回からマウンドに上がると、カイル・シュワバーにソロ本塁打を被弾したが、宮崎からチームに合流し、若い投手らに惜しみなくアドバイスを送ったダルビッシュ。WBC全体を通じて、どれだけ彼の存在が、若い投手らの精神的支柱となったか。そこはもう、数字では測りきれない。

前回大会、攻守でチームを盛り上げたラーズ・ヌートバー 【写真は共同】

 一方、野手ではヌートバーの明るさが、欠かせなかった。彼の代名詞でもあった、ヒットを打ったときに塁上で行うペッパーミル(胡椒を挽く仕草=粘り強く戦うことを意味)を大谷らが率先して行ったことで、チームを一つにする原動力となった。

 実際のところ、彼が選ばれたとき、数字だけを見れば、それほど戦力になるとは思えなかった。しかも、栗山英樹監督は、彼をスタメンで起用する方針だと話し、それがブレなかった。大会後、その理由を聞いたことがあるが、栗山氏はヌートバーの出塁率の高さと、人柄の良さを、選手の理由に挙げた。

「会ってみればわかる。そう思っていました」

 実際、その通りだった。実は大会前の1月、あるつてを辿ってヌートバーにインタビューを申し込むと、あっさり応じてくれた。会うのも話をするのも初めてだったが、幼少期に祖父が経営するガソリンスタンドの近くで遊んだ思い出、いかに侍ジャパンに選ばれたことを誇りに思っているかを語ってくれた。彼がすぐに侍ジャパンのメンバー、また、日本のファンに受け入れられたのも、彼の謙虚で、明るいキャラクターゆえだろう。出塁率にしてもそう。なるほど、2022年、彼の打率は.228だったが、出塁率は.340。347打席で51個の四球を選んでいた。シーズン後半に限れば、打率は.240ながら、出塁率は.366だった。そしてWBCでも打率は.269だったが、出塁率は.424。派手さはないがリードオフマンとしては十分な働きで、また、守備でも中継プレーなどで基本に忠実な送球を行い、玄人を唸らせた。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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