バスケ日本代表が韓国戦で見せた「いい兆候」 選手が語る、勝利を引き寄せたビッグプレー

大島和人

日本は1日のW杯予選・韓国戦を78‐72で制した 【(C)FIBA】

 バスケットボール男子日本代表は3月1日、沖縄サントリーアリーナで「FIBAバスケットボールワールドカップ2027 アジア地区予選」の韓国戦を戦った。結果は78-72の勝利で、2月3日に就任した桶谷大ヘッドコーチ(HC)にとっての初勝利となった。

 アジア地区予選は合計16チームが4グループに分かれて戦っている。日本は中国、韓国、チャイニーズタイペイと同じグループBに属していて、この勝利で通算3勝1敗の首位に浮上した。

 日本は2月26日に同じくW杯予選で中国戦(80●87)に敗れているが、韓国戦もリードチェンジ18回の痺れる「つば競り合い」だった。しかし日本は残り5分の勝負どころで攻守のビッグプレーを連発し、勝ち切った。

辛うじて韓国への「適応」に成功

 安心とは程遠い、ストレスに満ちた展開だった。攻撃は中国戦に比べて縦に切っていくアタック、ペイントタッチ(ゴール下への侵入)が増えていた一方、外からのシュートが決まらなかった。前半を終えた時点の3ポイント(3P)シュート成功率は20%(10分の2)にとどまっている。

 守備は韓国の「もっとも警戒するべき選手」だったイ・ヒョンジュンを止められず、一人に28得点を決められた。タフショットを決められることは仕方ないし、彼には動き出しや味方のスクリーンを活かす「巧みさ」がある。Bリーグ・長崎ヴェルカでは3Pシュートを48.9%の確率で決めている名手を、38.5%(13分の5)にとどめているのだから、一定の成果は出したのかもしれない。とはいえ日本のカバーが遅れて、危険な選手をオープンにしてしまう状況が散見されていた。

 富樫勇樹は試合をこう振り返る。

「DFの細かいところ、このシチュエーションはどうするかというところで、ミスコミュニケーションがちょっとありました。まだ数回の練習で、色々なシチュエーションをイメージしながらはできていません。それは試合を重ねないといけないと思います」

 一方で後半に突き放された中国戦と逆に、試合の中で適応し、自力で流れを作った。そこは大きな収穫だ。

 例えば韓国が各年代で活用する変則ゾーンDFをどう打開するかは、攻撃におけるポイントだった。日本は選手とベンチの双方がアイディアを出し、ベクトルを揃えて、試合の中で解決していた。

 西田優大は相手のゾーンDF攻略について、こう説明する。

「めちゃくちゃ準備したわけではなく、試合の中でアジャストしながらやっていました。ジョシュ(・ホーキンソン)もアイディアを出しながら、コーチ陣とコミュニケーションも取って、そこが上手くいきました」

 桶谷HCもこう語っていた。

「試合までウォークスルー(DFをつけない動きの確認)を含めて8回くらいの練習です。もう少し長い合宿、練習ゲームをやっていけば、より良いものにできるなと思いました。7月のアウェイゲームが本当に楽しみになってきました」

 短期間の修正について、指揮官はこう口にする。

「まずダイス(吉本泰輔AC)がDFのところをしっかり見てくれました。(ライアン・)リッチマン(AC)はオフェンスですが『ペースとスペース』を使いながら、ペイントタッチをどうやっていくかのコンセプトが今回のメインでした。そこは前の代表とかなり変わったものを見せられたのかなと思います」

守備の「変化」が終盤に奏効

日本の守備はイ・ヒョンジュン(右)に手を焼いた 【Photo by Mami Yasui/FIBA via Getty Images】

 日本は「負け展開」を第4クォーターにひっくり返した。試合の流れを引き戻した一つ目のビッグプレーが、第4クォーター残り6分51秒に齋藤拓実の決めたスティールだ。

 齋藤はこう説明する。

「(韓国の)スイッチコミュニケーションが遅れていたのが見えて、6番の選手(イ・ジョンヒョン)がターンしたので、多分パスするだろうと思いました。少しギャンブル気味ではあったのですが、スティールになりました」

 齋藤自身のシュートは決まらなかったが、馬場雄大がリバウンドを確保し、その流れから渡邊雄太の3Pシュートが決まった。日本は61-62と1点差に追い上げた。

 中国戦でメンバーから外れたジョシュ・ホーキンソンは、この試合のキーマンだった。特に第4クォーターの最終盤、守備で渋いプレーを見せていた。

 まず第4クォーター残り3分8秒、ホーキンソンは韓国のシューター、イ・ジョンヒョンの3Pシュートに対してスイッチDF(受け渡し)で対応し、長身を活かしてブロックを決めている。

 残り1分26秒の72-69とリードした時間帯にも、スクリーンを使ってズレを作ろうとするイ・ヒョンジュンに対して、ホーキンソンはやはりスイッチで対応。シュートコースを切られたイ・ヒョンジュンはゴール下にパスを飛ばしたが、これが乱れて日本ボールとなった。

 ホーキンソンはこう説明する。

「韓国の1番イ・ヒョンジュンと6番イ・ジョンヒョンは素晴らしいシューターです。彼らに簡単にシュートを打たせないトップロック(3Pラインの頂点からのパス、そこへの動きを封じる対応)だったり、DFのカバレッジ(カバーリングの戦術/連携)を用意していました。試合中もそれをやっていったのですが、簡単に打たれてしまうシーンが発生していたので、4クォーターはスイッチを使ったりトップロックに戻したり、そういったアジャストメントをして、ああいったDFになりました」

 日本は勝負どころで守備の変化を効かせて、相手を惑わせつつ、ミスを誘った。そんな駆け引きの成功は、大きな勝因だろう。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、バレーボール、五輪種目と幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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