チームに不可欠なピース――ユーティリティープレーヤーの価値

キーパーソンは鈴木淳之介、瀬古歩夢、佐野航大……森保ジャパンのユーティリティープレーヤー活用術

北條聡

3バックと4バックの併用を理想とする森保ジャパンで、キーマンとなりうるのが鈴木。彼をウイングバックに据えれば、スムーズな4バックへの移行が可能だ 【Photo by Kaz Photography/Getty Images】

 北中米ワールドカップの開幕が6月に迫り、森保ジャパンにおいて次第に関心が高まっているのが、前回大会と同様に「26人」になると見られている登録メンバーの顔ぶれだ。やはり複数ポジションに対応可能なユーティリティープレーヤーは重宝されるはずだが、肝心なのはその活用法だろう。怪我人が続出している非常事態とはいえ、現代表には戦術の幅を広げる人的リソースが十分。ここでは想定される戦術オプションを提示しながら、それぞれのケースのキーパーソンを挙げていく。

外ズレのパターンで鍵を握る万能の守備者

 数に限りがある中で、いかに手持ちの人的リソースを最大限に生かして戦うか。ワールドカップ(W杯)本大会に臨む出場国の宿命だ。

 いつ、どこで、何が起きるか分からないのが勝負の世界。だからこそ、多彩な人材をそろえ、変化に動じぬチームは強い。その“多様性”を担保する存在が、いわゆるユーティリティープレーヤーだ。

 当然ながら、今夏の北中米W杯に挑む森保ジャパンにも複数のポジションに適応し、さまざまな役割をこなす人材が少なくない。ベスト8の壁を突き破る上で、彼らをどう生かすべきか。戦術オプションの広がりに目を向けながら、その可能性を探ってみたい。

 まず、触れたいのが布陣である。森保一監督は強化の過程において、3バック(3-4-2-1)をベースにしてきた。もっとも、4バックの構想を持っていないわけではない。前回の2022年カタールW杯ではベースの4-2-3-1からメンバーを組み替え、3-4-2-1のオプションを試みたが、今回は人選を変えずに3バックと4バックを併用するのが理想だという。

 考えうるオプションは主に2つある。1つはウイングバックの一方を最終ラインに下げ、同サイドのシャドーがウイングへ移行する外ズレのパターン(A)。もう1つは2シャドーの一角をボランチに下げて、2ボランチの一角を最終ラインまで下げる縦ズレのパターン(B)だ。幸いにして、今の日本にはA、B両パターンに対応しうる人材がそろっている。

 まず、パターンAのキーパーソンとなるのが鈴木淳之介だ。日本代表では主に3バックの一角を担うが、ボランチを含め、守備的なポジションならどこでもプレーできる万能型。所属先のFCコペンハーゲンでは右サイドバックでも使われている。本人も足元の技術には自信を持っており、ボールを運ぶ力も秀逸。しかも、快足だ。おまけにサイド(左右)を問わない。したがって、ウイングバックの一方に据えれば、いつでも4バック(鈴木+3バック)に移行できるわけだ。

 厳密に言うと、鈴木と同サイドのシャドーがウイングに移行。3バックも鈴木と同サイドの選手が2センターバックの一角、逆サイドの選手がサイドバックに移行するが、その人材にも困らない。例えば、鈴木を右ウインバックで使うと仮定した場合、右シャドーが久保建英や堂安律、3バックの右が冨安健洋や渡辺剛、同左が伊藤洋輝ならば、難なく4バックへシフトできる。

 逆に鈴木を最初から4バックの右に据えれば、攻撃の局面でボランチ脇に上がり、ビルドアップに絡む《偽サイドバック》としても使えるかもしれない。それくらいの幅を持った選手と言っていい。

大型ボランチとして覚醒しつつある瀬古

センターバックが本職の瀬古だが、ル・アーブルでボランチとしての新境地を開拓。3月のイングランド遠征でテストしてみる価値は十分にある 【Photo by Koji Watanabe/Getty Images】

 次に、縦ズレによるパターンBのメインキャストが鎌田大地と瀬古歩夢だ。鎌田がシャドーとボランチをこなすのは周知の事実。興味深いのは今季、所属先のル・アーブルで新たにボランチとしての才能を見出された瀬古だろう。本職はセンターバックだが、大型ボランチとして覚醒しつつある。

 彼らを同時に3バックで使った場合、鎌田をシャドーからボランチ、瀬古をボランチからセンターバックに下げれば、4バックに移行しやすい。前述した鈴木や伊藤のように3バックの左右がサイドバックもこなす人材なら、瀬古をセンターバックで使える。

 もっとも、森保体制下で、このパターンBが試されたケースは一度もない。したがって、現時点では可能性の1つにすぎないが、瀬古のボランチ起用を含め、本大会までに一度はトライしてみる価値がありそうだ。

 3バックと4バックの併用には対戦相手との兼ね合いを含め、その狙いは多岐に渡る。その点、分かりやすいのが攻撃、あるいは守備を重視した術策だろう。

 例えば懸案の“ブロック崩し”を試みる際、単騎突破に秀でた面々をずらりと並べるのも一案。そこでキーパーソンになるのが三笘薫、中村敬斗、伊東純也、堂安だ。これまで3-4-2-1のワイド(=ウイングバック)で使ってきた彼らをシャドーの一角に据えて、ボックス内にガンガン切り込ませる。PKの獲得も狙いの1つだ。

 指揮官はこれまでのテストマッチにおいて、彼らをワイド一辺倒ではなく、インサイドでも試してきた。左サイドに三笘と中村、右サイドに堂安と伊東。彼らが中と外をめまぐるしく行き来しながら、機に乗じて単騎突破を狙うオプションも十分に考えられるはずだ。

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著者プロフィール

週刊サッカーマガジン元編集長。早大卒。J元年の93年に(株)ベースボール・マガジン社に入社。以来、サッカー畑一筋。現在はフリーランス。著書に『サカマガイズム』、名波浩氏との共著に『正しいバルサの目指し方』(以上、ベースボール・マガジン社)、二宮寿朗氏との共著に『勝つ準備』(実業之日本社)がある。

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