チームに不可欠なピース――ユーティリティープレーヤーの価値

「二刀流選手」の未来 大谷翔平に続く成功者は現れるのか?

西尾典文

大谷に続いてプロの世界で二刀流として成功した選手はまだいない。第2、第3の大谷は今後現れるのか? 【Eric Thayer / Los Angeles Times via Getty Images】

 大谷翔平に続けとばかり、近年プロ野球で二刀流に挑戦する選手が出てきている。だがそのなかから、投手と野手の両立を実現し、二刀流としてキャリアを軌道に乗せた選手は1人もいない。二刀流選手という特異な存在は、今後どうなっていくのか。特に注目されるのが、投げないときは外野など他のポジションを守る選手の出現。究極のユーティリティープレーヤーとも言える新たな二刀流選手は現れるのだろうか。

大谷の活躍に触発されてか、二刀流に挑戦する選手が増加も…

 現在の野球界において世界最高の選手といえば、やはり大谷翔平(ドジャース)になるだろう。MLBでシーズンMVPを4度受賞し、2024年には史上初となる50本塁打・50盗塁を達成するなどその業績を挙げればきりがないが、現役最高の選手として揺るぎない評価を得ている最大の要因は代名詞とも言える“二刀流”としての活躍ぶりだ。

 前回のWBCでも打者として4割を超える打率を残し、投手としても先発で2勝、決勝ではリリーフでセーブを挙げる大車輪の活躍で日本を世界一に導き、MVPも受賞した。その年の9月に2度目のトミー・ジョン手術を受けて2024年は投手としては全休となったものの、昨年は実戦復帰して14試合に登板。今シーズンは二刀流の完全復活が期待されている。

 そんな大谷の活躍に触発されてか、二刀流に挑戦しようという選手は増加傾向にある。しかし現時点では、大きな成果を挙げている選手はいないのが実状だ。

日本ハムの矢澤もDeNAの武田も二刀流を断念

二刀流としてプロ生活をスタートした矢澤だが、3年目の昨季から基本的に外野手専任となった 【Photo by Gene Wang/Getty Images】

 大谷の古巣である日本ハムでは、上原健太が2022年から二刀流に挑戦。投手として出場したセ・パ交流戦でヒットを放ち、またこの年のオフのフェニックスリーグでは野手として出場したが、結局これまで野手として一軍の公式戦でプレーしたことはない。

 そして、二刀流としての期待が最も高かったのも同じ日本ハムの矢澤宏太だ。

 日本体育大時代は2年秋に外野手、3年秋に投手、4年春に指名打者と異なるポジションで3度のベストナインを獲得するなど、大学球界で投打にわたって活躍。2022年のドラフト1位でプロ入りを果たした。しかしプロ入り後は故障もあって低迷。投手としては2年目に中継ぎで17試合に登板して1勝、3ホールドをマークしたものの、昨シーズンからは基本的に外野手専任となり、今シーズンもその方針は継続される見込みだという。

 矢澤よりも年齢的に早い段階で二刀流挑戦にピリオドを打ったのが、DeNAの武田陸玖だ。

 山形中央高時代は甲子園出場こそなかったものの、早くから注目を集めて3年時にはU-18侍ジャパンにも選出。この年に行われたU-18W杯でも投打にわたる活躍を見せてチームの初優勝に大きく貢献し、ドラフト3位でDeNAに入団した。

 プロ入り後は外野手登録ながら投手としても出場していたが、2年目の昨年9月に投手に専念することを発表。10月1日のヤクルト戦でリリーフ登板して一軍デビューし、1回を投げて1失点ながら、味方打線の援護があり初登板初勝利をマークした。

 高卒2年目で一軍初勝利は投手としては順調とも言えるが、高校時代には打者としてのほうがスケールは大きいという声もあっただけに、意外な決断と感じている関係者も多そうだ。

 他には、2024年のドラフト1位で日本ハムに入団した柴田獅子も二刀流に挑戦している。投手としては高卒1年目でいきなり一軍で4試合に登板して防御率2.92と順調なスタートを切ったが、野手としては二軍で51試合に出場して打率.186と苦しいスタートとなった。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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