高木美帆がもがき続けた「ラスト1周」 女子1500mへの矜持を清水宏保が語る
高木は女子1500mの世界記録(1分49秒83)を2019年に記録しており、得意種目としてきた。しかし18年平昌、22年北京ではともに銀メダル。今大会では悲願の金メダルを目指していた。迎えた本番では好スタートを切り、終盤まで全体2番目のタイムで通過していたものの、ラスト1周で失速した。また、同種目に出場した佐藤綾乃(ANA)は1分58秒36で22位、堀川桃香(富士急)は1分59秒33で26位だった。
今大会は女子1000m、女子500m、女子団体パシュートと3種目ですでに銅メダルを獲得し、調子を上げてきているとされた高木が大本命の種目で失速したのはなぜか。また、日本スケート界における彼女の偉大さとは――。長野・ソルトレークシティと2大会連続でメダルを獲得し、現在はスポーツキャスターや解説者としても活躍する清水宏保さんに話を聞いた。
トップアスリートがぶつかる「パフォーマンスの壁」
現地で見ていると、レース前の彼女の様子はとても落ち着いていました。海外勢が前の組でどんどん好タイムを出す中で、電光掲示板も見ないし周りの声や音を聞いているような様子もなく、とにかく自分のレースに集中しているように見受けられました。
レースではいいスタートが切れましたが、本人も課題だと言っていた「終盤のタイム」を詰め切ることができませんでした。その原因は外から見ているだけでは何とも言えないのですが、やはりここまで3種目を滑ってきた疲労が多少なりともあったのでしょうし、年齢から来る体力や感覚的なズレもあるのかもしれません。
課題と分かっていても、技術的な面でカバーできるかと言われたら、なかなか簡単にはいかないものです。10代のころと違って、練習で追い込んでも、体の感覚的に追い込めた感があるかと言ったら、その実感に乏しかったりする。また、データや練習の感覚と、実際のレースでのパフォーマンスは全然違います。どんなに実績を残したアスリートでも、最後に悩む要因の一つだと思います。
タラレバですが、同走の選手をずっと追いかけるような展開だったら、結果はまた違ったかもしれないです。銀メダルを獲ったラグネ・ビクルン選手(ノルウェー)は、同走の選手を追いかける展開が功を奏したのではないでしょうか。ただ、高木選手は今できる範囲の中でのベストは尽くしました。
今回の五輪での彼女の活躍は、次の世代へとつながっていくはずです。フィギュアスケート女子で銅メダルを獲得した中井亜美選手(TOKIOインカラミ)が浅田真央さんを見て育ったのと同様に、高木選手を見てスピードスケートを始める子どもたちがきっと出てくるでしょう。長年スピードスケート界を牽引してきた彼女の功績は計り知れないと思います。