嬉し涙と悔し涙が並んだ表彰台 深田茉莉が金、村瀬心椛が銅メダルに輝いた女子スロープスタイル決勝

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女子スロープスタイル決勝で深田(左)と村瀬がメダルを獲得 【写真は共同】

 現地時間2月18日に行われたミラノ五輪スノーボード競技の最終種目、女子スロープスタイル決勝で、日本勢がまた2つのメダルを手にした。金メダルは深田茉莉(19)、銅メダルは村瀬心椛(21)で、村瀬はビッグエア金メダルに続く今大会2つ目の表彰台となった。

 勝負は「3本目」で決まった。メダリスト3人とも最終滑走の得点が採用され、順位が入れ替わる展開に。風の抵抗を減らすためにジャケットを脱いで滑る選手がほとんどだった。

 もともと女子は男子より体格が小さい分、コース内でスピードを保ちながらセクションをつないでいくのが難しいが、この日は前日の大雪の影響もあり、板が走りにくいコンディション。スピードに乗せるだけでもひと苦労という状況だった。

 そんななか1本目は転倒が相次いだが、村瀬と、ビッグエア銀メダルでスロープスタイルの強豪として知られるゾイ・サドウフスキシノット(ニュージーランド)は安定した滑りを披露。誰もが苦しむ「板が走らない」雪面でもスピード感を失わず、全セクションを流れのままつないでいく2人の“滑りの強さ”が際立った。

 流れが大きく動いたのは2本目。深田が「85.70」を叩き出して一気にトップへ浮上し、2本目終了時点で80点台は深田だけだった。前半のジブからジャンプまでミスがなく、とくにジブセクションの安定感が光る。多くの選手がジブで点を伸ばし切れないなか、深田は高い完成度でまとめてきた。

 そして迎えた最終滑走でも深田は得点を伸ばす。1つ目のジャンプで「スイッチバック1260」を決めるとセクション点は10点満点。難しい雪と風のなかでも完成度を崩さず、金メダルを決定づけるランになった。

 追いかけたのが2位につけていた村瀬だ。3本目は1つ目のジャンプ「トリプルコーク1260」が10点満点となり、3つのジャンプはいずれも高得点。ただ、前半のジブセクションで思うように点が伸びず、結果は銅メダルとなった。なお、ゾイ・サドウフスキシノットは深田にわずか「0.35」点届かず銀メダルとなった。

 表彰式では、深田は嬉し涙、村瀬は悔し涙。対照的な涙が並ぶ光景が、この一戦の重みをそのまま映していた。

「戦い方を直前で変えた」

頂点に立った深田は「『やっと、やってきて良かった』と思える瞬間だった」と話した 【写真は共同】

 金メダルを手にした深田は、首にメダルをかけた瞬間をこう振り返った。

「信じられない気持ち。首にメダルをかけた時に、重みが伝わって、ここまで周りと一緒にやってきて良かったと思いました」

 深田は10点満点が出た「スイッチバック1260」だけでなく、トゥ抜け(つま先重心)の「フロント720」も評価された。板が走らないコンディションだからこそ、戦い方を変えた。

「今日は板が走らないからこそ、走らないなりにどうしたらいいか考えた。あまり大会でやったことがない、トゥ抜けの方が早くスピンに入れるかなと思って変えました」

 ルーティン自体も、練習で板が走らない感触があったため直前に決めたという。状況を読み、構成を調整し、実行まで落とし込む。その対応力も金メダルにつながった。

 滑り終えたあと、佐藤康弘コーチに「本当にスノーボードをやってきて良かった」と初めて漏らしたという深田。本人に聞くと、言葉の奥にはこれまでの積み重ねがあった。

「これまできついことの方が多くて。少しの成功でやっと次に進めるような道のりで…一番大きな目標だった舞台でこの結果を残せて『やっと、やってきて良かった』と思える瞬間だった」

 また、同じチームとして練習を重ねてきた岩渕麗楽(8位)の存在も大きかったという。

「麗楽ちゃんのような見習える先輩がいたからこそ、ここまで来れた」

 その岩渕も深田の金メダルを「本当に純粋にすごく嬉しい。あの4年間の練習を耐えて来れたのは茉莉ちゃんのおかげだった」と称えた。

 佐藤コーチも「深田の成長は岩渕の存在ありきだった」と話し、さらに「男子を含めても誰よりも練習してきている」と練習量を強調する。前日も最後まで粘るように練習していたという。加えて佐藤コーチは、「本当にうまくないと勝てない、難しいスロープで勝てたことに大きな意味がある」とも語った。想像を超える積み重ねが、最後の最後に結果として表れた。

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