“無印”から豪代表入りなるか? 町田のJ最長身FWイェンギが持つ意外な強み

大島和人

イェンギはACLE成都蓉城戦で大活躍を見せた 【(C)J.LEAGUE】

 AFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)2025/26は、2月18日にリーグステージを終えた。ACLEのリーグステージはアジアの東西に分かれて12チームが参加し、同じ国のチームを除く8チームと対戦する変則スタイルだ。EAST(東地区)から勝ち上がったクラブを見ると、上位3チームを日本勢が独占している。その中で第8節・成都蓉城戦を3−2で制し、5勝2分け1敗の「1位抜け」を決めたのがFC町田ゼルビアだった。

 ただし町田の勝ち上がりが順調だったわけではない。25年9月30日の第2節・ジョホールDT戦はエース相馬勇紀のPK失敗もあり0-0と引き分けた。11月14日の第4節・メルボルンFC戦は相手を圧倒しつつアディショナルタイムに失点し、1-2と落とした。しかし第5節以降は4連勝と浮上に成功し、最終節で首位・ヴィッセル神戸を上回った。

今季の町田に不足していた「前への推進力」

 ACLEの第7節、第8節は年が明けて2月の開催だった。秋春制が導入される来季以降は別だが、今大会はまだオフ明けの難しさがあった。そもそもチームが未完成だし、コンディション的にもこの時期の連戦は厳しい。どのクラブも負傷者が相次いでいるが、町田は2月14日の水戸ホーリーホック戦でキャプテンの昌子源、17日の成都蓉城戦では望月ヘンリー海輝が、おそらく筋肉系のトラブルで途中交代している。

 しかも町田はオ・セフン、ミッチェル・デュークと主力のセンターFW二人がクラブを去り、攻撃陣を再編中だ。

 並行して進むJ1百年構想リーグを見ると、町田は開幕の横浜F・マリノス戦を3-2で制し、第2節の水戸戦は2-2と打ち合った末にPK戦(4-2)で勝ち点2を得た。結果は悪くないのだが、どちらも「相手に押し込まれる」「チャンスの数で上回られる」苦戦だった。

 ヴィッセル神戸から復帰したエリキは抜群の決定力を持ち、ここまで3得点を挙げている。エリキ、相馬らスピードと切れで勝負する小柄なアタッカーが並ぶことで、その強みは確かにある。しかし「前線でハイボールを競る」「それに呼応して全体が押し上げてセカンドボールを前向きに奪う」場面が減っていた。

 また、水戸のようなハイプレスをかけてくる相手に対して、長いボールでひっくり返す対抗策を打てなかった。前方への推進力不足が、攻守に悪影響を与えていた。

 これも町田に限った話ではないが、新戦力の活用は必要な取り組みだった。2026年のJ1百年構想リーグに向けた町田の編成は現状維持がベースで、レンタルからの復帰を除く新戦力は二人しかいない。それがテテ・イェンギと徳村楓大だ。

イェンギが初先発で見せたインパクト

徳村(左)とイェンギ(右)は揃って好プレーを見せた 【(C)J.LEAGUE】

 その二人が、2月17日のACLE第8節・成都蓉城戦で先発している。町田は第7節でラウンド16進出が確定し、ラウンド16の第2戦をホームで開催できる4位以内もほぼ確実な状況だった。

 黒田剛監督は中2日の水戸戦から先発8名を入れ替えたが、そこには今後に向けた「種撒き」の意図もあったはずだ。先に結論を言うと二人のプレーは期待以上で、収穫は上々だった。

 特に強烈だったのは197センチのFWイェンギだ。彼は南スーダン出身の父と、英国出身の母を持ち、オーストラリアで生まれ育った25歳。Jリーグの選手登録を見ると彼より背の高いGK、DFが何人かいる。しかしFW登録ではイェンギが最長身だ。

 14日の水戸戦で途中出場は経験していたが、先発は公式戦初だった。彼はまず開始早々の7分、林幸多郎のクロスに頭で合わせてチームの先制点を叩き込む。2-1で迎えた55分にも桑山侃士のクロスに合わせてこの試合2点目を決めた。勝利に大きく貢献し、マン・オブ・ザ・マッチにも選出された。

 その身長ゆえに当然ながら空中戦は期待されていた。一方で体重が83キロと細身で、コンタクトプレーについては懸念もあった。また彼がこの1月まで所属していたリヴィングストンFCは、スコットランド・プレミアリーグで現在最下位。昨季は出場31試合で5得点と、並の成績だ。入れ替わりで町田を離れたデュークのように、代表の実績を持つ選手でもない。したがって即戦力として計算できる人材ではなかった。

 しかしACLEの成都蓉城戦は間違いなく強烈な印象を残した。まず、イェンギは自らの2得点をこう振り返る。

「いいタイミングで、いい場所に入れたと思います。チームメイトからのクロスも良かったですし、僕は背が高いので」

 イェンギは明らかに町田のスタイルにハマっていた。まず“普通のFWレベル”には機動力があり、前線でパスを引き出し、追うことができる。膝や足首が柔軟で、相手DFを背負った状態からボールを収めて運ぶ、味方につなぐスキルも期待以上だった。当たりが強いと言うよりも「寄せられて粘る」「相手に上半身を預けつつ、下半身を自由に動かす」能力が高い。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、バレーボール、五輪種目と幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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