女子団体パシュートを支えた4人の絆 「総力戦」でつかんだ銅メダルの重み
「金メダルをつかみに行く」宿敵オランダとの決戦
「準決勝は何が何でもオランダを倒しに行って、金メダルをつかみにいくという強い思いで臨んでいて……。1本目は堀川(桃香)、2本目は野明(花菜)と決めていました」
その言葉通り、日本は持てる力のすべてを準決勝に注ぎ込んだ。準々決勝で力んでしまった反省から、レースの入り方を微調整。序盤から落ち着いてレースに入り、勝負どころと定めた4周目でもペースを落とさず、最後まで滑っていくプランだった。
こうした戦略は、レースで見事に体現された。高木美帆、佐藤綾乃、堀川の3人は、ウイリアムソンコーチが「今シーズンで一番いいレース」と評するほどの滑りを見せる。しかし、それでもオランダの壁は厚かった。わずか0.11秒。ほんのわずかな差で決勝への道を阻まれた。佐藤は「後ろの私と堀川のプッシュが足りなかったのかなと思わせられるような結果」と唇をかみ、高木も「ここまで上り詰めることはできたんですけど、私の先頭としての経験値が足りなかった。私自身の力不足」と、その敗因を自らに求めた。
宿敵相手に100%の力で挑み、そして敗れた。その事実は重くのしかかる。だが、感傷に浸る時間はなかった。すぐに気持ちを切り替え、銅メダルを懸けた3位決定戦へと向かう。それは、チーム全員で戦う「総力戦」だった。
デビュー戦の重圧と、それを支えたチームの絆
「メダルがあるかないか、懸かっていたレースなので、本当にすごく緊張していました」
野明自身がそう振り返るように、そのプレッシャーは想像を絶するものだった。スタート直後、彼女は個人レースでも経験したことのないミスを犯してしまう。インエッジで蹴り出すべきところをアウトエッジで踏み出してしまい、体勢を崩したのだ。
しかし、この予期せぬアクシデントに、残る2人は冷静だった。すぐ後ろを滑っていた佐藤が、先頭の高木に「落ち着いてスタートできるように」と声をかける。ここで無理に追いかければ余計な体力を使ってしまう。佐藤は「最初の半周で絶対にひとまとまりになっていないとそのあとがきつくなってくるので、いたって自分は冷静でした」と語る。その的確な判断とフォローで、チームはすぐに隊列を立て直した。
レース終盤、野明は「自分が自分じゃないみたいでした」という極限状態に陥りながらも、必死に先輩たちに食らいついた。ゴール後の気持ちを、彼女はこう語っている。
「先輩たちがつないでくださった自分のメダルなので。『偉大な先輩たちだな』と本当に思います」
五輪の魔物が牙を剥いたデビュー戦で、野明を支えたのは、揺るぎないチームの絆だった。