女子団体パシュートを支えた4人の絆 「総力戦」でつかんだ銅メダルの重み

スポーツナビ

日本は準決勝、3位決定戦とメンバーを入れ替えて戦った 【写真は共同】

 ミラノ・コルティナ五輪の銅メダルで、日本は3大会連続となるメダルの獲得を果たした。しかし、レースを終えた彼女たちの表情には、安堵とともに、拭いきれない悔しさの色が浮かんでいた。目指していた頂点には届かなかった現実と、総力戦でつかみ取ったメダルの重み――。その狭間で、スピードスケート女子パシュート(団体追い抜き)の日本代表チームは現地時間2月17日、五輪という特別な舞台で得た確かなものをかみ締めていた。

「金メダルをつかみに行く」宿敵オランダとの決戦

 準々決勝を終えた時点で、日本のターゲットは明確だった。準決勝の相手は、過去に大舞台で何度も覇権を競った宿敵オランダ。決勝進出のためには、この強敵を倒さなければならない。ウイリアムソン師円コーチは、この大一番に向けた戦略を早くから固めていたと明かす。

「準決勝は何が何でもオランダを倒しに行って、金メダルをつかみにいくという強い思いで臨んでいて……。1本目は堀川(桃香)、2本目は野明(花菜)と決めていました」

 その言葉通り、日本は持てる力のすべてを準決勝に注ぎ込んだ。準々決勝で力んでしまった反省から、レースの入り方を微調整。序盤から落ち着いてレースに入り、勝負どころと定めた4周目でもペースを落とさず、最後まで滑っていくプランだった。

 こうした戦略は、レースで見事に体現された。高木美帆、佐藤綾乃、堀川の3人は、ウイリアムソンコーチが「今シーズンで一番いいレース」と評するほどの滑りを見せる。しかし、それでもオランダの壁は厚かった。わずか0.11秒。ほんのわずかな差で決勝への道を阻まれた。佐藤は「後ろの私と堀川のプッシュが足りなかったのかなと思わせられるような結果」と唇をかみ、高木も「ここまで上り詰めることはできたんですけど、私の先頭としての経験値が足りなかった。私自身の力不足」と、その敗因を自らに求めた。

 宿敵相手に100%の力で挑み、そして敗れた。その事実は重くのしかかる。だが、感傷に浸る時間はなかった。すぐに気持ちを切り替え、銅メダルを懸けた3位決定戦へと向かう。それは、チーム全員で戦う「総力戦」だった。

デビュー戦の重圧と、それを支えたチームの絆

野明は3位決定戦が「五輪デビュー」だった 【写真は共同】

 3位決定戦のメンバーには、この大一番が五輪デビューとなる21歳の野明が起用された。準決勝までのレースを外から見守り、ようやく迎えた初舞台。コーチ陣は、堀川に代えてフレッシュな野明を投入することで、確実にメダルを獲りにいく戦略を描いていた。

「メダルがあるかないか、懸かっていたレースなので、本当にすごく緊張していました」

 野明自身がそう振り返るように、そのプレッシャーは想像を絶するものだった。スタート直後、彼女は個人レースでも経験したことのないミスを犯してしまう。インエッジで蹴り出すべきところをアウトエッジで踏み出してしまい、体勢を崩したのだ。

 しかし、この予期せぬアクシデントに、残る2人は冷静だった。すぐ後ろを滑っていた佐藤が、先頭の高木に「落ち着いてスタートできるように」と声をかける。ここで無理に追いかければ余計な体力を使ってしまう。佐藤は「最初の半周で絶対にひとまとまりになっていないとそのあとがきつくなってくるので、いたって自分は冷静でした」と語る。その的確な判断とフォローで、チームはすぐに隊列を立て直した。

 レース終盤、野明は「自分が自分じゃないみたいでした」という極限状態に陥りながらも、必死に先輩たちに食らいついた。ゴール後の気持ちを、彼女はこう語っている。

「先輩たちがつないでくださった自分のメダルなので。『偉大な先輩たちだな』と本当に思います」

 五輪の魔物が牙を剥いたデビュー戦で、野明を支えたのは、揺るぎないチームの絆だった。

1/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

コラムランキング