現地記者の日本人選手ラ・リーガ奮戦記(月2回更新)

久保建英が不在の間に上昇気流に乗ったソシエダ これでチームが機能するならとW杯後の放出も選択肢に?

山本美智子

バルサ戦で負傷してからちょうど1カ月。復帰まであと数週間はかかりそうだが、皮肉にも久保不在の間、チームは好調を維持する 【Photo by Jose Breton/Pics Action/NurPhoto via Getty Images】

 スペイン在住がすでに25年以上に及ぶ日本人ライターによる、月2回の連載コラム。レアル・ソシエダの久保建英と、マジョルカで2年目を迎えた浅野拓磨の動向を中心に、文化的・歴史的な背景も踏まえながら“ラ・リーガの今”をお届けする。2025-26シーズン第13回のテーマは、ペレグリーノ・マタラッツォ新監督が就任後、好調を維持するソシエダと、その間、怪我で戦列を離れている久保との関係性だ。久保不在でもこうしてチームが機能するのなら、あるいは今夏の放出も――。

R・マドリー戦の敗北は通り雨のようなもの

 2026年になってから、ラ・リーガ1部で日本人選手不在という状況が多くなっている。

 1月18日(現地時間、以下同)に行われたラ・リーガ第20節のバルセロナ戦で負傷してから1カ月が経過した久保建英は、2月中旬の現時点でまだ正確な復帰時期が見えていない。その一方で久保の所属するレアル・ソシエダは、第24節のレアル・マドリー戦に敵地で敗れ、昨年末にペレグリーノ・マタラッツォ監督が就任して以来、初めてとなる黒星を喫したが、さほど痛手には感じていないようだ。

 なにしろ、1カ月前にホームでバルサを撃破すると、その後も(久保不在で)勝ち続け、2月11日のスペイン国王杯準決勝の第1レグに至っては、誰もが圧倒されるあのカテドラル(サン・マメス・スタジアム)で、宿敵アスレティック・ビルバオを倒してみせたのだ。

 その3日後に行われたR・マドリー戦の敗北は、年明けから公式戦で無敗を続けてきたチームにとっては、通り雨に降られたようなものだ。試合後の「1日うまくいかない日があっても、それが僕らのやってきたすべてのいいことを台無しにするわけではない」というキャプテン、ミケル・オヤルサバルの言葉からもチーム内のポジティブな雰囲気が垣間見えた。

ウェズレイはまだフィットしていないが

久保の代役候補として、この冬に獲得したウェズレイは、ラ・リーガへの適応に苦しんでいる。ただ、こうした動き自体が風向きの変化を印象付ける 【Photo by Juan Manuel Serrano Arce/Getty Images】

 そんなソシエダについて『マルカ』紙は、久保が不在となってからマタラッツォがスタメン起用する機会が増えた3人、ドゥイエ・チャレタ=ツァル、ベニャ・トゥリエンテス、カルロス・ソレールの特集を組んだ。

 逆に、これまで久保と前線でコンビを組んで中心的な役割を果たしていたブライス・メンデスのパフォーマンスに不安定さが見られ、スタメンから外れるケースが増えるなど、この1カ月でチーム状況はめまぐるしく変化している。まさに「たかが1カ月、されど1カ月」である。

 また、1月に久保が負傷するや、マタラッツォはすぐさま代役となるサイドアタッカーを補強するようクラブに要求し、実際に冬の移籍市場でアル・ナスルから20歳のブラジル人選手、ウェズレイを獲得している。

 もっとも、加入から48時間後のバスクダービー(2月1日のラ・リーガ第22節、アスレティック戦)でさっそくデビューを飾ったウェズレイだが、マタラッツォ監督はそれから約2週間後のR・マドリー戦まで、一度も彼を公式戦のピッチに立たせなかった。その理由について指揮官はこう説明している。

「(ウェズレイがプレーしていた)サウジアラビアのリズムは、ヨーロッパのそれとは大きく異なる。まだ彼は練習方法の違いにも戸惑っているようだからね。ただ、素晴らしい才能の持ち主であるのは確かだし、将来的に多くをチームに与えてくれるだろう」

 つまり、現時点では即戦力として使えるレベルにない、という意味だと解釈できる。R・マドリー戦ではスタメン起用されたウェズレイだが、前半だけで交代を命じられており、まだチームとラ・リーガにフィットしているとは言い難い。

 ウェズレイの適応の遅れは、復帰に向けてリハビリ中の久保にとっては幸いかもしれない。とはいえ皮肉なのは、監督交代以降、久保がいなくなってもチームが機能しているという事実だ。結局のところ、サッカーはチームスポーツだという原点にたどり着く。

 ソシエダの現状は、まったくもって悪くない。国王杯ではベスト4に勝ち残り、一時は降格圏に沈んでいたラ・リーガでも8位にまで浮上した。さらに後半戦に向けて、スケジュールも味方に付いている。すでにバルサ、R・マドリーの2強との対戦を終え、山場の4月にはリーグ戦4試合中3試合(レバンテ戦、アラベス戦、ヘタフェ戦)をホームで戦うことができるうえに、唯一のアウェーゲームもそれほど遠くないマドリードへの遠征だ(第32節のラージョ・バジェカーノ戦)。

 ソシエダがここからさらに順位を上げ、来季の欧州カップ戦の出場権を勝ち取るために、こうしたスケジュール面のメリットは小さくないはずだ。

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著者プロフィール

スペイン在住は四半世紀超え。1998年から通信員として情報発信を始め、スペインサッカーに関する取材、執筆、翻訳の仕事に従事してきた。2002年と06年のW杯、04年と08年のEUROなど国際大会も現地で取材。12年からFCバルセロナの公式サイト、ソーシャルメディアを担当する

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