「五輪の魔物」が阻んだ本来の実力 日本代表・フォルティウスの予選敗退を石崎琴美が語る

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苦しい空気のチームに差す「一筋の光」

イタリア戦で抜擢された小林未奈(左)と吉村(右)。五輪初舞台ながら、バイススキップとしても大健闘した 【写真は共同】

 課題もありますが、明るい材料ももちろんあります。1つ目は、イタリア戦で「リザーブの小林未奈選手を起用したこと」ですね。小谷選手を下げて小林選手に変えた詳しい意図はコーチに聞かないと分かりませんが、「流れを変えたい」という思いや「若い選手に経験を積ませる」という狙いもあったはずです。でも、昨年12月の五輪最終予選でも出場していますし、ある程度想定された采配だったとは思います。リザーブに回った小谷選手は普段バイススキップとしてハウスを見ている選手でもありますから、一度外から試合を見てもらう機会にもなったと思います。

 また、作戦の組み立て方の話をしましたが、いい判断をしたシーンもありました。日本のビッグエンドとなったイタリア戦の第5エンド。吉村選手のラストショットの場面で、ドローで確実に2点を取りにいくのかと思われたのですが、3点を狙うもう一つの作戦にチームメイトが気づいたんです。簡単ではないショットでしたが、あの場面で広い視野を持ち、成功させたことが素晴らしいですよね。積極性と柔軟さはきっと次につながっていくはずです。

残りの試合は五輪の舞台をかみしめて

日本のビッグエンドに喜ぶリードの近江谷(右)。残りの試合の彼女たちらしいプレーに期待だ 【写真は共同】

 予選トップですでに決勝トーナメント進出を決めたスウェーデンは、初戦の日本戦からしっかりピークを合わせてきたと感じました。今日はカナダに敗れて全勝が止まりましたが、途中で苦しい展開になっても、最後は自分たちの形に持っていく強さがありますね。世界ランク1位のカナダは予選の序盤こそ星をなかなか伸ばせずにいましたが、17日の試合ではスウェーデンに土を付けましたし、調子は上向きです。予選リーグで現在2位につけているアメリカは雰囲気がとてもよく、チームとしてまとまっています。
 
 どの国も全勝で通過したい気持ちを持って戦っているはずですが、不思議なことに「予選で全勝していないほうが、決勝トーナメントで勝ち上がりやすい」という“あるある”は存在するんです。予選から決勝まで勝ち続けるというのは難しいし、トーナメントでは1度負けたら終わり。そういう意味では、スウェーデンにとってもこの段階でカナダに負けたことは、そうマイナスには捉えてないと思いますよ。

 日本は決勝トーナメントの道が絶たれましたが、残り2試合に向けてやれることは「ドローショットの感覚をしっかりつかむこと」です。イタリア戦の前にストーンが研磨されたことでよりアイスを読むことが難しくなり、ドローショットが短くなったりしましたが、「このウエイトならTラインまで届く」という目安を、チームとして共有することが大事ですね。

 あとはもう、とにかく思い切ってプレーしてほしい。スキップに迷いがないときは強いし、迷いが出るとリズムも停滞する。だから、作戦を「これだ」と決めたら、みんなで「よし、それでいこう」と信じてやってほしいですね。五輪の舞台に立っていること自体がすごいことなので、その喜びをかみしめて、のびのび楽しんでプレーしてほしいと思います。

【解説者】石崎琴美(いしざき・ことみ)

【提供・スポーツビズ】

18歳で東光舗道に入社してカーリングをはじめ、同社のグループ会社である河西建設女子チームで活動。2000年に日本カーリング選手権で優勝。2002年ソルトレイクシティーオリンピックにリザーブとして出場し8位。2007年「チーム青森」に加入。2010年のバンクーバーオリンピックではリードとして本橋麻里と共に出場し8位。2015年ロコ・ソラーレが出場したパシフィックアジア選手権(PACC)にて産休中の本橋麻里の代わりにリザーブとして参加。また、2018年の平昌で行われたPACCでもリザーブとして参加している。2013年のソチオリンピック世界最終予選から日本選手権や世界選手権、オリンピックなどの大会で解説も務める。2020年9月、ロコ・ソラーレのフィフスとしてメンバー登録をすると発表。2022年2月に行われた北京オリンピックでは日本代表としてチームを支え、銀メダル獲得に貢献。2024年にロコ・ソラーレを退団し、現在では解説者としても活躍の場を広げている。

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