「貫けた、でもまだ獲れていない」 モーグル・堀島行真が追い続けるその先の景色
しかし、堀島の表情に悲壮感はない。むしろ、自身の現在地を冷静に見つめ、次なる高みを見据える求道者のような静けさを漂わせていた。なぜ彼は走り続けられるのか。世界最高峰のエアを持ちながら、「ターンへの回帰」を口にする。激闘を終えた直後の堀島に、その胸中を余すことなく聞いた。
悔しさは、いまも“沸々と”
やっぱり金メダルを目指していた分、悔しさは今現在においても沸々と湧いてきています。チャレンジをしつつも、最低限、銅メダルまで届かせるためには?というところも視野に入れていた部分はありました。メダル獲得というところを落とさず、自分のやりたいことも貫けたオリンピックになったんじゃないかなと感じています。
――続くデュアルモーグルでは銀メダルでした
オリンピック種目としては初となる競技だったので、今までのW杯とどのような違いがあるのだろうみたいなことも楽しみにしながら、スタートに立っていました。“オリンピック感”は少し軽減していた感じでした。その感じとは裏腹に、僕が出場する1回戦目で、激しく転倒してしまった。後ろ向きにゴールするような滑りになりました。心の乱れだったり、滑りの乱れを感じていたので、自分をキープしながら一戦一戦、勝ち上がるのが難しい状況となっていました。 なんとか決勝まで上がれたことはひとつ良かったかなと。でも優勝までのランをイメージできたかというと、あまりイメージできていなかった。そこが勝因を分けたんじゃないかなと思います。あとはその予想力とか準備力の点でも、最後の決勝の勝利が見えてなかったのかなとは感じています。
――心の乱れというのは具体的にどんなものでしたか?
緊張感だったり、コースの不安感だったり、そういうネガティブな感情があるなかで、自分のパフォーマンスをしていく自信がなかったんだと思います。ただ、やるべきことを頭で分かっていても、体が動かないところがあった。自信があれば、頭で考えてることが、体でたやすく表現できる状況を作れるのですが。
――デュアルモーグルはスピードへの恐怖心があるのでしょうか?
スピードへの恐怖心はそんなにはなかったです。しかし約60コブある斜面を頭で考えて、すべて対応できるわけではないけど、ある程度トラブルが起こる場所を把握しておくべきなかで、今回は急に足を取られる感覚はあった。どの場所を注意すべきか、読みきれなかった印象はあります。
後ろ向きで滑ったのは初めて
コースアウトは分かっていたんですけど、その時点で失格か失格じゃないか(旗を外側から巻いたかどうか)は見えていなかった。僕はとにかくコース内にとどまろうとしたので、その動きがあの“後ろ向き”の滑りにつながりました。普段からアクシデントを想定した練習はしていません。「モーグルのコースで後ろ向きで滑った」のは初めてだったので、ちょっと怖かったです。相手選手がコースアウトしたこともあるし、なにより無事に滑り切れてラッキーでした。
――後ろ向きになったとき、焦りましたか?
とにかく「早くゴールしなきゃ」という思いでいっぱいでした。後ろ向きから前向きに戻すのも時間がかかるし、「後ろ向きでいけるなら、もう後ろ向きでゴールまで行ってしまえ!」と思いました。
――もし相手選手がコースアウトしていなくて、堀島選手が後ろ向きのままで早くゴールしていたらどうなっていたと思いますか?
僕の負けだったと思います(笑)。僕はジャンプのズレだったり3個のミスがあったので、スピード以外の点で負けていたと思います。