世代が野球を変える──黄金世代クロニクル

20年の時を経て現れた「08年世代」の期待値 彼らは坂本勇人、田中将大ら「88年世代」を超えるか?

沢井史

2006年の夏の甲子園を沸かせた駒大苫小牧の田中将大と早実の斎藤佑樹。20年の時を経て、新・黄金世代が台頭するか 【写真は共同】

 かつて球界を席巻した「88年組」から20年。今、それをも凌ぐ“08年世代”が産声を上げている。横浜の織田翔希、沖縄尚学の末吉良丞ら、投打に桁外れのスケールを誇る逸材がひしめく新・高校3年生世代。聖地・甲子園、そして今秋のドラフト戦線を揺るがす新・黄金世代の全貌に迫る。

今年の高校3年生世代は黄金世代になり得るか?

センバツでの活躍が期待される横浜のエース織田翔希は08年世代の代表格だ 【写真は共同】

 近年の日本野球界をけん引してきた“88年組”。坂本勇人、田中将大(巨人)をはじめ、前田健太(楽天)、柳田悠岐(ソフトバンク)、秋山翔吾(広島)、昨年限りで現役を引退した澤村拓一(元ロッテなど)をはじめ、第一線で躍動した選手たちが揃う。そんな球界をリードしてきた黄金世代も30代後半にさしかかってきた。

 そんな中、最近注目を集めてきたのがミレニアム世代とされた00年生まれ世代だ。今春のWBC日本代表に選出された小園海斗(広島)、プロ7年間で通算63勝を挙げている戸郷翔征(巨人)、大阪桐蔭の春夏連覇メンバーの藤原恭大(ロッテ)らがおり、88年世代に負けない顔ぶれが揃う。

 さらにその1年下ではロッテ時代に完全試合を達成し、世代をけん引する佐々木朗希(ドジャース)、プロ6年間で49勝をマークしている宮城大弥(オリックス)、今では最多安打、ゴールデングラブ賞などタイトルの常連となった岡林勇希(中日)、高校時代から世代を代表する右腕・奥川恭伸(ヤクルト)らがいる2001年生まれ世代もその世代に匹敵すると言われている。

 実は今年の高校3年生世代も投打にポテンシャルの高い選手が多く、“88年組”をしのぐ黄金世代とされている。88年組からちょうど20年後に生まれた“08年世代”には投打で将来性豊かな選手が多く、昨春センバツ優勝に貢献した織田翔希(横浜)、昨夏の甲子園優勝左腕の末吉良丞(沖縄尚学)、194センチの最速152キロ右腕・菰田陽生(山梨学院)の3人の投手の名前がまず挙がる。

 織田は185センチの長身から最速154キロの速球を投げ込む豪腕で、昨春センバツ優勝にも大きく貢献した。鋭く切れるスライダー、縦に割れるカーブ、さらにチェンジアップなど変化球も多彩で、先日の練習ではメジャーのスカウトが直々に訪れるほど周囲の熱もヒートアップしている。下級生だった昨年は体重が70キロ前後で、やや細身に見えた身体も日に日に分厚さが増し、現在は80キロ台に。ストレートにもさらに力強さが増してきている。

夏春連覇を狙う沖縄尚学のエース・末吉良丞 【写真は共同】

 昨夏の甲子園優勝投手の末吉も、重たい速球とスライダー、チェンジアップで三振も奪える今年の高校生筆頭格の本格派左腕。何より冷静なマウンドさばきが売りで、昨夏の甲子園では全6試合に登板し、34イニングを投げ39奪三振、与四死球は10個と安定感も目を引く。昨秋行われたU18の世界大会では日本代表に2年生で唯一選出され、一次ラウンドではメジャー予備軍が並ぶアメリカを相手に5回途中まで無安打に封じるなど、舞台が大きくなってもメンタリティーの強さも見せつけた。チームは昨秋の九州大会準々決勝で敗れたためセンバツ出場が危ぶまれたが、明治神宮枠で選出され、夏春連覇の期待がかかるマウンドではどんなピッチングを披露するのか見ものだ。

 194センチ右腕の菰田は、2年生だった昨春にストレートがすでに150キロをマークした。あの角度から力強い球を投じられると高校生レベルではなかなか捉えられない。さらに豪快なスイングから高校通算33本塁打を積み重ねてきた右の打者としての評価も高い。昨秋の明治神宮大会では、これまでの一塁、左翼だけでなく遊撃の守備にもトライした。吉田洸二監督が「(守備位置は)ここだけと決めずにどんなポジションでも機会があれば守らせます」と言うように、様々な可能性に挑戦させる意向を表明している。型にはめず、“放牧”させながら育てていく吉田監督の意向が菰田の成長にどう影響を及ぼすか。打って投げて高校生離れした“二刀流”は、とにかくスケールが大きい。

 さらに最速147キロの速球とカットボール、チェンジアップのコンビネーションで勝負し、昨夏の甲子園でも快投した本格派左腕の高部陸(聖隷クリストファー)、昨夏の県大会で151キロをマークし夏の甲子園にも出場した堅田徠可(くうが・高知中央)、昨春センバツ初戦で横浜を相手に6回2/3を投げ8奪三振、無失点と好投した最速151キロ右腕・丹羽涼介(市和歌山)もポテンシャルの高さは負けていない。

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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