チームに不可欠なピース――ユーティリティープレーヤーの価値

2026年のプロ野球で注目すべきユーティリティープレーヤーは? DH制の有無によりセ・パで特性に違いも

新井裕貴(Full-Count)

昨季セ・リーグを制した阪神で熊谷は重要なピースだった。連覇がかかる今季もチーム戦略上、大きな役割を果たしそうだ 【写真は共同】

 2026年のプロ野球セ・パ各リーグで注目すべきユーティリティープレーヤーは誰か――。近年、特に昨季の実績を判断材料に、所属チームの現在の状況なども考慮して、識者がリーグ別に代表的な選手を挙げてもらった。いずれも今季、チームのなかで重要な戦力になるのは間違いない。

事実上「代走枠」「内野控え」「外野控え」を同時に確保できる

 セ・リーグにおけるユーティリティーの価値は、DH制が存在しないという戦術的制約のなかでこそ際立つ。限られた野手枠のなかで、試合終盤に攻撃の手を緩めず、なおかつ守備網を再構築できる存在。そうした役割を最も端的に体現しているのが、阪神の熊谷敬宥内野手だ。

 昨季の熊谷は85試合に出場。途中出場が多かったが、守備では一塁、二塁、三塁、遊撃、そして外野を守った。重要なのは、これが緊急事態の穴埋めではなく、試合の流れや相手打線の左右に応じた「戦略的な配置転換」として織り込まれている点だ。ベンチに熊谷を置くことは、事実上「代走枠」「内野控え」「外野控え」を同時に確保することを意味し、セ・リーグ特有の選手構成上の制約を劇的に緩和させる。

 一方で、主力級でありながらユーティリティー的価値を発揮するのが巨人の門脇誠内野手である。

 プロ1年目の2023年は一度も2軍落ちすることなくシーズンを完走。侍ジャパンにも選ばれた。2024年は前年を上回る129試合に出場するも、昨季は打撃不振や泉口友汰内野手の成長により正遊撃手の座を奪われた。それでも、自慢の好守を三塁や二塁でも見せてチームに貢献。ポジションを移動しても守備指標が落ちにくく、配置を動かしてもチーム全体の失点阻止能力が揺るがない点は、阿部慎之助監督の采配に大きな自由度を与えている。

単なる控えではない、ユーティリティー像を象徴する選手

昨季は怪我のため満足にプレーできなかったが、福永はセ・リーグを代表するユーティリティープレーヤーの1人だ 【写真は共同】

 広島の矢野雅哉内野手も同様の系譜に属する。2024年に自己最多となる137試合に出場して遊撃でゴールデングラブ賞を受賞した名手は、遊撃を軸に三塁、二塁もハイレベルでプレーできる。守備位置を固定して使っても成立する主力でありながら、複数ポジションで計算できる矢野の存在は、広島の堅守を支える調整弁として不可欠なものだ。

 門脇、矢野のような“実績組”の陰で、若手による「出場機会確保のためのマルチ化」が加速していることも付記しておく。

 DeNAの京田陽太は昨季94試合に出場。遊撃と三塁での起用が中心で、若手内野手を併用するなかで配置転換の受け皿となった。複数ポジションに対応するベテランは、高い経験値を武器にチームの可変性を支える調整役と言える。またヤクルトの武岡龍世内野手も、二塁、三塁、遊撃とさまざまなポジションを務めた。

 中日では福永裕基内野手の存在が光る。2024年は111試合に出場し、打率.306と打撃が開花。しかし昨季は開幕前に右膝を負傷し、長期離脱となった。本来は二塁、三塁、外野と幅広い起用ができる選手。単なる控えではない「戦略的配置」としてのユーティリティー像を象徴している。

 守備範囲の広さ、終盤起用への適性、そしてベンチワークへの寄与度。これらを総合的に見たとき、2026年シーズンにおいても熊谷こそがセ・リーグ最強のユーティリティープレーヤーであり、今季の阪神で試合の行方を左右するキーマンと言えるだろう。

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